<人類が自然環境や生物多様性にもたらす影響によって、人獣共通感染症の伝播が促されていることが明らかに> 人獣共通感染症とは、動物からヒトへ、ヒトから動物へと伝播でき、同一の病原体によってヒトとヒト以外の脊椎動物の双方が罹患する感染症である。すべての感染症のうち約半数を占め、狂犬病や重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザなど、その多くが動物由来だ。 このほど、人類が自然環境や生物多様性にもたらす影響によって、人獣共通感染症の伝播が促されていることが明らかとなった。 ウイルス流出のリスクは必然的に高まる 米カリフォルニア大学デービス校と豪メルボルン大学の共同研究チームは、2020年4月8日、学術雑誌「英国王立協会紀要」において「狩猟や売買、生息環境の悪化など、人類による野生動物の搾取により、ウイルスに感染した野生動物とヒトとの密接な接触が促され、ウイルス流出のリスクが高まる」との研究論文を発表した。 人間社会が自然界に侵入することで、野生動物との接触が増えれば、ウイルス流出のリスクは必然的に高まるというわけだ。 研究チームは、動物由来感染症を引き起こす既知の142種類のウイルスとその宿主とみられる動物のデータを分析。国際自然保護連合(IUCN)絶滅危惧種レッドリストを用いて3つのパターンに整理した。 これによると、家畜は、野生の哺乳類に比べて、動物由来感染症を引き起こすウイルスを8倍多くヒトと共有していることがわかった。ヒトと共有するウイルスの数が多い上位10種の哺乳類には、家畜であるブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、犬、ヤギ、ネコ、ラクダが含まれている。 個体数が豊富に増え、人類が支配する環境によく適応した野生動物も、より多くのウイルスをヒトと共有している。住居や農地の周辺に生息するリスやハツカネズミなどの齧歯類やコウモリ、そして霊長類は、ヒトへウイルスを継続的に感染させるリスクが高い。 また、絶滅危惧種の中でも、狩猟や売買、生息環境の悪化によって個体数が減少している種は同様のリスクが高い。これらの要因以外で個体数が減少している種に比べて、動物由来感染症を引き起こすウイルスを2倍多く有しているとみられている。 ウイルス流出は野生動物に対する人類の行動の直接的な結果 研究論文の筆頭著者であるカリフォルニア大学デービス校のクリスティーン・ジョンソン教授は「動物からのウイルスの流出は、野生動物やその生息環境に対する人類の行動の直接的な結果だ。結局、動物たちが我々とウイルスの共有することになってしまった」と指摘。「我々は、野生動物との関わり方や人類と野生動物との共生について十分に注意する必要がある」と警鐘を鳴らしている。 =====