<圧倒的な検査数でメガクラスターを抑えた韓国だが、入国者の感染増にまた危機感を強めている> 新規感染者数が落ち着きをみせはじめ、新型コロナウイルス感染拡大のピークから脱したように見える韓国だが、ここにきて2週間の自宅隔離者が無断で外出する隔離違反が目につき始めた。そこで、韓国新型コロナウイルス中央災難安全対策本部は今月11日、隔離違反をした者の手首に電子リストバンドを着けて管理することを決めたと発表した。 この電子リストバンドは「安心バンド」という名称で、スマートフォンにダウンロードされたアプリと、ブルートゥースを通じて連動している。自宅隔離者の安心バンドとスマートフォンが一定の距離を離れてしまったり、安心バンドを手首から外してしまったり、また登録地域から離れるなどすると、自動的に安全対策本部へ通報される仕組みだ。 当初、海外帰国者や感染者との濃厚接触が疑われるなど2週間の隔離を余儀なくされた対象者全員に装着をするという話だったが、プライバシーの問題や人権侵害などの反対意見が多く上がり、自宅隔離者全員ではなく一度違反をした者にのみ着用すると公式発表された。安全対策本部は、1日4千個の製造を進めており、今後2週間以内に着用を実施するという。 日本人の感覚からすると、かなり厳しいと感じてしまう今回の処置だが、ここまでせざるを得ない経緯があった。韓国では、4月1日から海外からの帰国者全員に2週間の自宅隔離が義務付けられていたが、現在までにそのうち106名が隔離違反を犯してしまっている。そのうち故意に外を歩き回り、旅行に出かけるなど悪質だと判断された12人は検察に起訴されている。 安全バンド導入のきっかけとなった「江南母娘」事件 特にこの問題が注目されだしたのは、通称「江南母娘」が自宅隔離違反をした"事件"がニュースで大きく取り上げられたからだ。 この母娘、本来は先月アメリカ留学から帰国した娘が2週間の自宅隔離となるのを無視し、韓国の観光地として有名な済州島へ二人で3月20日から4泊5日旅行した。 娘はニューヨークからの帰国者で、旅行初日に悪寒と体や喉の痛みなど新型コロナウイルス感染の症状があったにもかかわらず済州島行きの飛行機に搭乗。旅行が終わりソウルに戻った24日江南区にある保健所選別診療所で検査を受け、翌日に陽性が発覚した。その結果を受け母親も26日に検査を実施し陽性が確認された。 済州島では、この「江南母娘」が陽性判定となったことで、島内20余りの店舗が臨時閉店となり96人の島民が自宅隔離となる被害を受けた。このため済州道知事は母娘に1億3200万ウォンの損害賠償請求の訴えを起こしている。 その他にも、自宅隔離を守らない事例は数え切れない。TV局員がアメリカ帰りでの隔離を無視し出社する、フランス・パリ帰りの男性が友人の会社を訪ねる、入社間近の新入社員予定者が必要書類を取りに実家に帰る......など、多くの事例が報告されている。 ===== 安全バンドはどこまで有効? 折角感染拡大のピークが過ぎようとしているのにもかかわらず、違反者のせいで再び感染拡大が起きることを政府は懸念し、4月5日には早速「感染病予防法処罰条項」が強化されている。今まで「 300万ウォン以下罰金」だった処罰が、「1年以下の懲役または1千万ウォン以下の罰金」に変更され、韓国の素早い対応力を見せつけた。 一方で、安心バンド導入に対し疑問視する声も上がっている。冒頭に書いたように、人間の行動を監視することは人権の侵害である点はもちろん、大多数の人たちが2週間の隔離を守っている中で、一部の守れない人を基準に全員を犯罪者扱いするのはおかしな考え方だという反対意見も多い。 たしかに、5万6856名の自宅隔離者のなかで、2週間以内に外を歩き回ったと報告されたのは106人とされており、全体のわずか0.18%程度である。そのために資金と人力を投入するのに反対する人は多い。 また、この安心バンド装着には強制力はなく、1度違反を犯した者から同意を得て、自発的協力によってつけてもらうことが発表されると、自分勝手に隔離を破るような者たちが一体どのくらい同意をして着けるだろうか、という意見もある。 「自宅隔離者安全保護」アプリは位置情報を通報 韓国コロナ19中央災難安全対策本部は、自宅隔離違法者の続出問題に歯止めをかけるため、この安心バンド以外にもさまざまな対策に知恵を絞っている。 隔離者がスマートフォンにダウンロードしなくてはならない「自宅隔離者安全保護」というアプリも機能がアップデートされた。今までとは異なり、このアプリが一定時間作動されなかった場合、直ちにAIコールセンターや自治体担当者に通報が行き、位置確認が行われる機能が備わった。 このアプリは、韓国への入国者全員が空港でダウンロードし、ログインが確認されなければ入国も許されないという強制力のあるものだ。韓国内の自宅隔離者全体の約87%が海外からの帰国者だと言われているため、このアプリシステムは隔離違法者制御に有効かもしれない。ただし、感染者の濃厚接触者など入国者以外での利用者数は、約60%のみにとどまっており、今後国内での利用度をいかに上げるかが今後の課題だ。 ===== 感染者検査数に偽りあり? 今回の新型コロナウイルス感染拡大では、韓国は様々なオリジナルの検査方法などを生み出し、それは「韓国モデル」と呼ばれるほど世界中から注目を浴びることとなった。今回の安心バンドでの隔離違反者管理システムも、すでにイタリアの日刊紙La Repubblicaが取り上げその効果に注目していると報道している。数週間後その効果が発揮できれば、また日本や各国で大きく報道されることとなるだろう。 また検査数の多さも世界を驚かせている。韓国疾病管理本部は13日基準で検査件数を51万4621名と発表していたが、実際はそれよりはるかに多い86万 1216名であったことが報告された。13日行われた中央防疫対策本部チョン・ウンギョン本部長のブリーフィングによると、統計は疾病情報統合システムから報告された、疑わしい患者や症状が出ている検査対象者の数であり、医療機関や保健所からの申告件数を収集しているため、すでに感染が確定された患者などに対する調査件数は除いた統計を発表していたという。韓国全体の検査件数は日本をはるかにしのぐ件数行っていたこと示しながら、さらに積極的に国民の検査を行うとブリーフィングを締めくくっている。 疑わしきは即検査 医療崩壊を懸念し、数日間は家で様子を見るなどをすぐに検査を行わない日本の正反対を行く韓国は、疑わしきは即検査をして対処する方針だ。どちらが吉と出るかは、このコロナパニックが収まった後、専門家が調査し決めてくれる事だろう。 何を実行するにも、疑問視する声や反対意見は必ず寄せられる。しかし、そこで屈せずに「ダメもとでもとりあえずやってみる」と推し進める力が、韓国独特のドライブスルー方式やボックス型検査場など、ユニークな封じ込め方法を生み、それが結果的に感染拡大の抑制に繋がっているように見える。 そして何より「何とかしたい」という姿勢を見せることによって、一部の不心得者は別として、国民全員が一丸となり協力する気持ちを生んでいるのではないだろうか。 【関連記事】 ・米、新型コロナウイルス1日あたり死者2200人超と過去最多に 感染60万人突破 ・夏には感染は終息する、と考えていいのか? ・新型コロナウイルス感染症で「目が痛む」人が増えている? ・気味が悪いくらいそっくり......新型コロナを予言したウイルス映画が語ること  ===== 自宅隔離違反者が着ける安心バンドとは 実効性について疑問の声もあるが、韓国政府は自宅隔離に違反した者に安心バンドを装着させようとしている。 MBCNEWS / YouTube