<アフリカやアジア、中南米の村落に広がれば壊滅的結果に──世界は上限なき資金提供という「脱出戦略」をすぐまとめるときだ> 新型コロナウイルス感染症が、世界で猛威を振るっている。だが、各国の対応は猛烈な感染拡大のスピードに追い付いておらず、失われる必要のない多くの命が失われ、他の医療問題は忘れ去られ、社会と経済の両方が壊滅的な打撃を受けようとしている。 そこで筆者3人は4月6日、G20諸国・地域に対し、足並みのそろった対策を直ちに求める公開書簡を発表し、医療、経済、政治、市民社会など幅広い領域のリーダーの賛同を得た。今回の危機が、公衆衛生と経済の両面で史上最悪の惨事に発展するのを防ぐため、80億ドルの拠出を求めている。 2008年の世界金融危機では、G20首脳は連携した対応を見せた。また、過去に津波や内戦で非常事態が生じたときも、多くの国が手を組み、リソース提供に必要な拠出国会議を開いてきた。 今回の新型コロナ危機では、その両方、つまり国際支援を調整するG20の作業部会と、その支援を有効にする拠出国会議が必要とされている。 2008年には、世界的な信用危機に対処することで、目先の経済危機を乗り越えることができた。だが今回の経済危機は、公衆衛生上の非常事態が解決しなければ終わらない。そして公衆衛生上の非常事態は、各国が単独でウイルスと戦っていては終わらない。全ての国がこのパンデミックを克服する必要があるのだ。 確かに新型コロナは、富裕国か否かを問わず、あらゆる国の医療システムを圧迫している。だが、この感染症がアフリカやアジア、中南米の村落にまで広がることを許せば、壊滅的な結果となり、撲滅は難しくなり、別の疾病の流行を引き起こす恐れさえある。 コストを避ければ破滅 この危機に早期に終止符を打つ唯一の方法は、私たちが長年怠ってきたこと、つまり公衆衛生機関と科学機関、そして経済機関への思い切った投資をすることだ。 各国首脳はまず、WHO(世界保健機関)が今年いっぱい最も重要な活動を続けられるように、10億ドル拠出するべきだ。さらに70億ドルを使って、きちんとした診断と治療とワクチンの開発、製造、流通を確保するため、国際的な官民連携機構「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」をサポートするべきだ。パンデミックに終止符を打つためには、こうした進歩に全ての国がアクセスできるようにすることが、非常に重要だ。 人工呼吸器や防護服、マスクなど、医療物資のニーズを満たす資金も必要だ。既存の生産能力がもたらす医療物資を奪い合うのではなく(それは価格を高騰させるだけだ)、各国が連携して生産能力を拡大し、グローバルな生産と調達を図るべきだ。 実用可能なワクチンが登場した場合は、官民連携団体「Gaviワクチンアライアンス」などを通じて、最貧国にもワクチンが行き渡るようにする必要がある。 ===== 感染症の世界的権威が集まるインペリアル・カレッジ・ロンドンの予測では、最も楽観的なシナリオでも、新型コロナ感染症による死者はアジアで90万人、アフリカで30万人に上る見込みだ。 途上国は近代的な医療システムがないだけでなく、社会的なセーフティーネットも不十分だ。最重要物資を提供し、スタッフを採用し、国として立ち直る力を強化するためには、少なくとも350億ドルが必要だろう。 WHOによると、世界の国の約30%は、新型コロナ感染症に国として対応する準備や計画が全くなく、何らかの感染防止策がある国も50%足らずだ。医療施設にさえ清潔な水や下水設備、衛生基準が整っていない国も多い。富裕国でも、必要な数の7分の1しか救急病床がないとされるが、貧困国でははるかに少なく、全くない国もある。 各国政府は、景気悪化への対応も迫られている。ここでも、信用収縮が支払い能力の危機へと発展し、世界的な不況が大恐慌に発展するのを防ぐためには、財政と金融と貿易の各領域で、連携の取れた措置を講じる必要がある。 一部の国は既に景気刺激策を打ち出しているが、全ての国がこれに参加すれば、はるかに大きな効果を見込めるだろう。また、余剰人員の大量解雇を抑制するためには、金融機関が迅速に政府保証融資を実行して、企業と従業員が必要とする現金を積極的に供給することが極めて重要だ。 一方、最貧国には特別な経済支援が必要だ。国際社会はまず、これらの国の債務返済を今年は免除するべきだ。これにはアフリカ諸国が抱える440億ドルの債務が含まれるが、別途1500億ドル以上の支援も必要になるだろう。 世界銀行は融資上限を維持しながらでも、各国に対する支援を強化できる。しかしそれだけでは不十分だろう。世界金融危機が起きた2009年、世銀の融資額は160億ドルから460億ドルへと急増した。これと同レベルの資金供給を、今すぐ発表するべきだ。 IMFは、できる限りのリソースを動員すると表明している。具体的には5000億〜6000億ドル相当の特別引き出し権(SDR)を割り当てるべきだろう。 時間はあまりない。理想はこれらの計画を迅速にまとめて、4月16〜17日に予定されるIMFと世界銀行の合同開発委員会(テレビ会議での開催となる)で、正式に確認されることだ。それが世界にとって最も現実的な「脱出戦略」となるだろう。 確かにそのコストは高く感じられるかもしれない。だが、その負担から逃げれば、世界は壊滅的な結果を逃れられなくなるかもしれない。 ©Project Syndicate <本誌2020年4月21日号掲載> 【参考記事】新型コロナ:「医療崩壊」ヨーロッパの教訓からいま日本が学ぶべきこと 【参考記事】井戸水に頼る人々や売春婦──外出制限を守れない貧困層がアフリカで新型コロナを拡散する ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年4月21日号(4月14日発売)は「日本人が知らない 休み方・休ませ方」特集。働き方改革は失敗だった? コロナ禍の在宅勤務が突き付ける課題。なぜ日本は休めない病なのか――。ほか「欧州封鎖解除は時期尚早」など新型コロナ関連記事も多数掲載。