<イギリスの専門家は、新型コロナウイルスからのネガティブな影響が精神面に出始めていると警告し、アプリなどデジタル技術を活用した介入が必要だと訴えている......> 3000人対象の調査、「コロナ疲れ」浮き彫りに 新型コロナウイルス感染症の流行からくる不安や、外出自粛などによるストレスは、「コロナ疲れ」などと表現されている。しかし「疲れ」などという軽い言葉では表現しきれないような不安や恐怖を抱く人もいるのではないだろうか。 英国では3月23日に外出禁止令が出され、国全体が「ロックダウン」状態になった。この数日後に英国で行われた2つの調査から、同国内ではその時点ですでに、コロナウイルスによる影響が人々の精神面に出ていたことが明らかになった。 この調査結果をもとに、メンタルヘルスのさまざまな分野で活躍する専門家24人が共同で、英精神医学専門誌「ランセット・サイキアトリー」に意見論文を発表した。専門家らは、新型コロナウイルスからのネガティブな影響が精神面に出始めていると警告し、アプリなどデジタル技術を活用した介入が必要だと訴えている。 調査は3000人以上を対象に、「新型コロナウイルス流行により、精神面で心配なことはあるか」、「心の健康を保つために何かしているか」などについて尋ねた。 2つの調査のうち1つは、メンタルヘルスに関する英慈善団体MQ:トランスフォーミング・メンタル・ヘルスが実施。電子メールやソーシャル・メディア(SNS)を使い、2198人から回答を得た。2つ目の調査は、英調査会社イプソス・モリがオンラインで行ったもので、1099人が回答した。 「先行き見えない」、「景気の悪化」で不安 2つの調査結果をまとめた報告書によると、コロナウイルス感染拡大による精神面への影響で気になることとして多かった回答は、「不安」「孤立」「メンタル面が不調にならないか」「心の問題への支援や医療サービスを受けられなくならないか」「家族や人間関係」だった。 「不安」の主な原因は、「パンデミックの先行きが見えない」、「雇用や経済面」、「食料や医療の確保」、「自分や家族がコロナにかからないか・コロナで死なないか」、などだった。また、メディアやSNSでの解説を繰り返し、または強迫的に見てしまうことから、不安感がより刺激されるという人も多かったという。 「孤立」については、人と距離を置くことやロックダウンでの外出制限など、新型コロナウイルスの感染予防策として実施していることが、精神面に悪影響を及ぼすと心配している人が多いことが分かった。家族など大切な人と会えない、人と交流ができない、エクササイズができない、などを訴える声もあった。調査報告書は、ロックダウンが長期にわたる場合、心の健康を損なわないために、孤立や孤独に対処するための方策が必要だとしている。 ===== 一方で、こうした不安の中、心の健康を保つために多くの人が実行していると挙げたのは、友達や家族と定期的に(多くの場合は、オンラインで)連絡を取り合うことだった。また、ボランティア活動など他者を助ける活動をしながら、人とつながりを保つという回答もあった。 そのほか、趣味や運動に没頭して気を紛らわす、瞑想する、ペットに助けられている、という声もあった。また、先行きが不安な状況の中、何かしらの目的意識を保つために、仕事が大切だと言う人も少なくなかったようだ。 「デジタル時代のツールを活用した治療法が必要」 同論文の執筆者の1人である英グラスゴー大学のロリー・オコナー教授は発表文の中で、「もしこのまま何もしなければ、不安症やうつなどの心の病や、アルコール中毒や薬物中毒、ギャンブル、ネットいじめといった問題行動、さらには人間関係の破綻やホームレスといった社会問題が増える危険性がある」と警告した。 論文は、こうした不安やストレスから、自傷行為や自殺が増えるリスクもあると指摘。しかし新型コロナからの精神面への影響を軽減する取り組みがあれば、自殺は避けられないものではないとしている。そのため、不安、うつ、自傷行為、自殺、その他心の問題について、リアルタイムでの評価や、アプリやインターネットを使ったデジタル技術による介入の必要性を専門家らは訴えている。 専門家らは特に、医療従事者や高齢者、心の問題を抱えている人たちのメンタル面を優先的にサポートする必要があるとの考えを示した。 新型コロナウイルスに関してこれまで行われた研究の中で、精神面への影響について調べたものはあまりないという。論文の中で専門家らは、研究者などに資金を提供する機関に対し、こうした研究を行うための調整グループを立ち上げるために、研究者らに協力するよう訴えている。 ===== Coronavirus outbreak: The toll the COVID-19 pandemic is taking on our mental health