<ロシアからの輸入症例の増加に戦々恐々の中国と、国境封鎖で取り残された中国人をさっさと帰したいロシア> ロシアと国境を接する中国・黒竜江省の町、綏芬河は人口約7万人の小さな町。主要産業である木材加工の機械は停止し、残った作業員は手作業で木を切り、仕分けている。ついこの間まで、湖北省武漢を中心に広がった新型コロナウイルスは、はるか遠い場所の出来事でしかなかったと、木工所の監督を務めるスー・ウェイは言う。何しろ、ロシア沿海地方のウラジオストクからたった120キロのこの町は、武漢から2000キロも離れているのだ。 だがこの町は今、中国の最新の感染拡大中心地「ホットスポット」となった。近年、中国とロシアは欧米諸国との対立の中でいわゆる「戦略的パートナーシップ」を結んできた。だが両国の国境は封鎖され、ロシア側に取り残された中国人の帰国をめぐり両国関係を緊張させている。 中国での新型コロナウイルスの感染拡大は3月中旬以降、沈静化に向かっている。国家衛生健康委員会の広報官も「大まかに言えば国内での流行は山を越えた。新たな感染者の増加も下火になってきている」と述べている。だが一方で、中国は外国(多くがロシア)から流入した感染者、いわゆる「輸入症例」による感染の再拡大を防ごうと必死だ。 <参考記事>中国、コロナ感染第二波を警戒 コロナ禍でロシアから多数が帰国 一方、ロシアでは感染者が急増している。19日にロシアのメディアが伝えたところによれば、過去24時間に新たに確認された感染者の数は6060人に上り、累計で4万2853人に達した。これまでに361人が死亡したという。 母国の医療の方が信頼できると考えてロシアから綏芬河を経由して帰国した中国人は2000人を超える。だが中露国境は7日に閉鎖され、ロシア側に取り残された人も少なくない。帰国組の中にははるか西のモスクワから来た人もおり、おかげで綏芬河は新型コロナウイルス感染の新たな中心地になってしまった。 「国境封鎖からは、中国がロシアのような同盟国との関係で直面している厄介な状況が見えてくる」と、清華大学で教鞭を執ったこともある独立系研究者のウー・チアンは英ガーディアン紙に語っている。 綏芬河はいわばロシアとの玄関口。道路標識や店の看板もロシア語と中国語の両方で書かれている。ロイターが伝えたところでは、この町の木材加工場では従業員の3分の2が感染を恐れて出勤していないという。 「(従業員からは)怖いから行きたくないとはっきり言われた。無理強いすることもできない」と、スー・ウェイは言う。 <参考記事>次の戦争では中・ロに勝てないと、米連邦機関が警告 ===== ガーディアンは在ウラジオストクの中国領事館が16日に明らかにした話として、綏芬河から入境した中国人のうち累計で346人が新型コロナウイルスに感染していたと報じた。その3日前にロイターが伝えたところでは、黒竜江省における輸入症例326人のうち綏芬河で見つかったのは322人だった。ちなみに国家衛生健康委員会によれば、16日の時点で中国全土の輸入症例は1524人だった。 綏芬河では、住民は3日に1度しか外出が認められず、経済活動にも悪影響が出ている。武漢で感染拡大を防ぐために行われた道路封鎖などを思い出させる措置で、中国の国営メディアでは「綏芬河を防衛する戦い」と称されている。 中露のせめぎ合いは、在ウラジオストクの中国領事館と、中国と国境を接するロシアの沿海地方のやりとりからもうかがえる。 沿海地方には、国境封鎖により取り残された中国人330人がいる。当局が彼らの送還を発表したところ、中国の領事館はこの発表は「不正確」だと反論した。 沿海地方当局はその後、ウェブサイトから中国人の送還に関する文言を削除した。 (翻訳:村井裕美) ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年4月28日号(4月21日発売)は「日本に迫る医療崩壊」特集。コロナ禍の欧州で起きた医療システムの崩壊を、感染者数の急増する日本が避ける方法は? ほか「ポスト・コロナの世界経済はこうなる」など新型コロナ関連記事も多数掲載。