<文在寅率いるリベラル派の与党「共に民主党」が、単独で過半数議席を獲得。新型コロナ対応が国内外で評価されたが、史上初となる4連勝の理由はそれだけではない> 結果は空前の地滑り的圧勝だった。4月15日の韓国総選挙では、文在寅(ムン・ジェイン)大統領率いるリベラル派の与党「共に民主党」が、300議席中180議席を獲得した。1987年の民主化以降、総選挙で単独の政党が獲得した議席は150議席余りが最多だった。 与党が単独で180議席を獲得した意味は大きい。韓国の制度では、5分の3に当たる180議席を持っていれば、野党が反対する法案を単独で本会議に上程し、採決できる。 これまで「共に民主党」は過半数を確保していなかったので、法案を成立させるためには小政党の協力を取り付ける必要があった。今後は、司法改革や差別解消などの看板政策を実現しやすくなるだろう。 今回の選挙結果の意味は、こうした短期的な政権運営の面だけにとどまらない。 最近まで、韓国は保守派の強い国だった。選挙でリベラル派が勝つのは、穏健保守派と手を結ぶか、保守派が分裂するかした場合に限られた。 1997年に金大中(キム・デジュン)が大統領に当選できたのは、軍事独裁者の朴正煕(パク・チョンヒ)の右腕だった金鍾泌(キム・ジョンピル)と協力し、しかも保守政党が分裂選挙になったからだ。2002年に大統領に当選した盧武鉉(ノ ・ムヒョン)も、現代財閥の創業者一族で中道派の鄭夢準(チョン・モンジュン)と組むことで大統領の座を手にした。 その点、今回の総選挙で保守派は結束してリベラル派に対抗しようとした。それにもかかわらず、リベラル派が歴史的な圧勝を遂げたのである。 文率いる「共に民主党」は、2016年の総選挙、17年の大統領選、18年の統一地方選、そして今回の総選挙と、4つの選挙で大勝している。韓国の民主主義の歴史で、全国規模の選挙で4連勝を果たした政党は過去にない。 この背景には、韓国政治の地殻変動がある。文は選挙で勝つたびに、韓国を中道左派の国へと導いてきた。 韓国政治を丹念に見ていない外国人が抱く「韓国のリベラル派」のイメージは、いまだに1990年代のままだ。北朝鮮シンパの学生活動家が火炎瓶を置いて政界入りしたが、大げさな演説ばかりしていて、実務能力に欠ける......そんな固定観念がある。 確かに、韓国の中道左派政党は民主化運動に端を発しているし、有力政治家の多くは学生運動出身者だ。以前は、理想論に傾き過ぎる面があったことも否定できない。 しかし、こうしたイメージはもう古い。現在の「共に民主党」は中産階級の政党に変貌を遂げ、30~40代の都市部の有権者から圧倒的な支持を受けている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への手堅い対応も有権者に評価されているようだ。 ===== 一方、保守派は南東部の地盤以外での影響力が弱まり、頭の固い老人の党というイメージを持たれるようになった。しかも、新型コロナウイルス対応において文政権が国際的に評価されていることで、5年前のMERS(中東呼吸器症候群)問題における朴槿恵(パク・クネ)前政権の無能ぶりもいっそう際立ってしまった。 保守派がこの苦境を抜け出すには長い時間がかかりそうだ。保守政党の「未来統合党」は、多くの大物が落選し、リーダー不在の状態に陥っている。政敵を全て「共産主義シンパ」と決め付ける類いの陳腐なレトリックではなく、もっと魅力的なメッセージを打ち出すことも難しそうだ。 今回の総選挙の結果は、向こう数十年間の韓国政治の潮流を決定づけるものになるのかもしれない。 From Foreign Policy Magazine <2020年4月28日号掲載> 【参考記事】韓国「巨大与党」誕生の意味 【参考記事】新型コロナ危機は与党に味方した?韓国総選挙 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年4月28日号(4月21日発売)は「日本に迫る医療崩壊」特集。コロナ禍の欧州で起きた医療システムの崩壊を、感染者数の急増する日本が避ける方法は? ほか「ポスト・コロナの世界経済はこうなる」など新型コロナ関連記事も多数掲載。