<映画やドラマのヒットを受けて、その原作のウェブ漫画も注目され始めた> 韓国で映画の配給会社に勤めていた頃、ある韓国人プロデューサーに「日本人はなぜ漫画原作の実写映画が好きなのか? ストーリー展開も結末もわかっているのになぜ高いお金を払ってまで観に行くのか?」と質問されて驚いたことがある。 確かに、人々は内容を知りつつも、なぜ映画化された作品を観るのだろうか? 俳優やセットの再現シンクロ率を確かめるためなのだろうか。オリジナルストーリー作品が多い韓国人にはそんな状況が不思議に映っていたのだろう。ところが、そんな韓国でもここ最近、ウェブ漫画原作の作品が増え、映像化権の買い占めが続いている。 以前からドラマ『宮 -Love in Palace-』『フルハウス』などを代表するコミック本原作のドラマや映画は存在したが、2014年前後からはウェブ漫画のドラマ化が急増し始めた。その数は、昨年末までで約60作品を超えると言われている。そして今では、韓国内だけに留まらず、Netflixなどを通じて世界配信も行われるようになり、韓国ウェブ漫画は世界的に注目を集めている。 韓国ウェブ漫画人気の秘密 ウェブ漫画がここまでの人気を集めるようになったのには、いくつかの理由があるが、その大きな要因と言われているのが、ジャンルがバラエティに富んでいる点だろう。Web作家は個人の趣味で漫画制作を始めていたことが多く、バックグラウンドも多様だ。その為、専門的な知識や得意分野をテーマにした漫画が多い。 また、日本とは違い、外国ではコミックは子供が読むものというイメージが強いが、パソコンやスマートフォンを通じて閲覧できるウェブ漫画は会社員でも気軽に読め、子供向けという漫画の認識が薄い。その結果、大人向けのジャンルの漫画も充実しているようだ。 さらに、韓国のコミック漫画は原作者と作画者が分かれていることが多い為、映像化する際権利がややこしい。しかし、例外はあるにせよウェブ漫画の場合ほとんどが原作者と作画は同一人物が行っているので、契約が進めやすいのも大きな利点だ。 ===== 『太陽の末裔』『トッケビ』の監督の新作もウェブ漫画原作 これまでは、ドラマ化といえば日本のように、ドラマ制作会社が原作を買い取る方法がほとんどだったこの業界で、韓国独特の図式が誕生している。それは、ウェブ漫画配信の会社が、映像制作会社をもち、そこで映像化させているパターンだ。 ウェブ漫画の老舗「NEVER」では、スタジオNという自社のウェブ漫画の映像化専門の部署を設けている。現在制作会社スタジオドラゴンと共同制作契約を締結し、NEVER ウェブ漫画『スィートホーム』の同名ドラマを制作中だ。『太陽の末裔』『トッケビ』といった世界的大ヒットドラマを手掛けたイ・ウンボク監督の新作ということで前評判も高く、すでNetflixでの世界配信が決定している。 このように、人気のあった漫画を直接自社グループの中でドラマの企画、制作、流通までを行うことで、よりスムーズに映像化できるようになった。 また、メッセージアプリ「KakaoTalk」で有名なカカオは、ウェブ漫画で人気のあった作品を映像化するため「カカオM」という会社をもっている。最近ではここから生まれたドラマ『梨泰院クラス』がヒットを飛ばし、今後の作品にも期待が寄せられている。 ウェブ漫画配信会社が映像制作まで 韓国の特徴といえば、国内での成功を早速海外にアピールし、海外市場を広げるのが早くて上手いことで有名である。もちろん、ウェブ漫画原作の世界進出もしたたかに始まっている。 まずはアニメーションからアプローチが開始されるようで、日米韓合同アニメーション作品『神之塔 -Tower of God-』は韓国人作家SIUによって発表され、NEVER ウェブ漫画で人気を集めた。その後日本ではLINE漫画にて掲載されるなど、世界28カ国に翻訳され、通算閲覧数は48億を誇る大ヒット作品だ。今回、韓国のウェブ漫画を基盤にグローバルコンテンツ企業が製作・流通したことは初の試みであるという。 今月1日から世界同時放映が始まると、アメリカのコミュニティサイト 「Reddit」では、週間人気アニメ1位を獲得し、Twitterでも9位にトレンド入りを果たした。この成功を機に、韓国ウェブ漫画原作は一気に世界へ進出していくとみられる。 人気アイドルを擁する芸能事務所と提携も 一方で、さらに新たの試みを実施しようとしているウェブ漫画プラットフォームもある。通信会社KTがもつウェブ漫画サービス「ケイトゥーン」では、コンテンツ強化を目的に、芸能事務所WMエンターテインメントとの契約締結を発表した。 WMエンターテインメントといえば、男性アイドルグループB1A4や女性アイドルグループOH MY GIRL、IZ*ONEのメンバー、イ・チェヨンが所属していることで有名だ。この会社がウェブ漫画と手を組むことで、今後所属アイドルを使った宣伝や、メンバーをモデルにした漫画が制作されるという。まず、第1弾としてOH MY GIRLをモデルとしたウェブ漫画が、今月14日から連載開始されている。 ===== 映画の方も新作5本が進行中 今年2月、映画『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー賞4冠に輝くなど、世界中から韓国映画への関心が高まっているが、そんな映画業界もウェブ漫画の映像化に積極的だ。日本でも公開された『神と共に』は、大人気ウェブ漫画が原作だが、映画はシリーズ2作合わせて観客動員数2,700万人を突破しメガヒットしたことは記憶に新しい。 今年は新型コロナウイルスのパンデミックの影響で2月末から全世界的に映画館の興行が軒並み低迷中である。そんななか、韓国では既に5本のウェブ漫画原作の映画化制作/公開が発表されていた。昨年9月にクランクアップした『首脳会談』の原作ウェブ漫画は、2017年に掲載されこれまでに440万閲覧されている。 続いて、日本でも有名な『トンマッコルへようこそ』のベジョン監督(旧姓パク・クァンヒョン)がメガフォンを取るのはウェブ漫画『上中下』の映画化だ。ハードボイルドの原作を監督がどう撮るか。また、1人3役の設定もどう演出されるのか期待が高まっている。 ソン・ガンホ主演の『南極日記』や『ヘンゼルとグレーテル』などの脚本・監督を務めたイム・ピルソン監督が次に取り組む作品は、スリラーウェブ漫画『無礼な子供(フレジャシク)』だ。2016年発表当時、殺人を扱うセンセーショナルな内容にもかかわらず全年齢閲覧可になっていたため、保護者から非難が集中するなどひと騒動あった問題作である。 他にも、2000年度掲載の『復活男』、劇場版アニメーションとして公開予定の『ヨンウィピョンジ(연의 편지 Your Letter)』などの作品も制作中である。コロナの影響を受けてスケジュール延期も多いが、公開される日が待ち望まれている。 そして今月10日、アクションウェブ漫画を中心としたプラットフォーム「ムトゥーン」を経営するブレインコンテンツが、ウェブ漫画の月間売り上げ1億ウォンを突破したことを発表し話題となった。2000年前半に登場し一時は飽和状態と言われたウェブ漫画業界だが、原作提供という道を見つけて新たな可能性を広げ始めている。 これから韓国の映画、ドラマ作品のトレンドを先回って知りたければ、ウェブ漫画にもぜひ注目していただきたい。 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年4月28日号(4月21日発売)は「日本に迫る医療崩壊」特集。コロナ禍の欧州で起きた医療システムの崩壊を、感染者数の急増する日本が避ける方法は? ほか「ポスト・コロナの世界経済はこうなる」など新型コロナ関連記事も多数掲載。 ===== ウェブ漫画のヒット作『梨泰院クラス』 パク・ソジュンの主演最新作としてNetflixで大ヒットした『梨泰院クラス』 JTBC Drama / YouTube 注目の新作『スィートホーム』 韓国ではtvNで放送、国外へはNetflixで世界配信されることが決定したウェブ漫画『スィートホーム』 WEBTOON / YouTube