<医療品の注文が殺到した結果、世界中で中国製の欠陥マスクが発見された。メンツを潰された中国政府はマスク工場を政府の管理下に置き、必死のQC活動に励んでいるのだが> 中国政府が、医療用マスクの生産を国家の管理下に置いたと伝えられている。新型コロナウイルスの感染拡大のさなか、世界的に医療用マスクの需要が急上昇しているためだ。 新型コロナウイルスの危機が訪れる前から、中国は世界で使われる医療用マスクのおよそ半分に当たる1日あたり2000万枚を生産していた。パンデミック(世界的大流行)を受けて、中国のマスク業界はさらに急成長。現在は1日1億1600万枚以上を生産している。 世界で最も裕福な国々でさえ、第一線で働く医療従事者のために防護具(PPE)を十分に確保できずにいる。まして一般市民には手が届かない。国際社会は中国に助けを求めた。中国政府が新型コロナウイルス感染を隠ぺいしようとしたのではないかという疑念はあっても背に腹は変えられない。 中国がマスクの生産と輸出を管理している理由のひとつは、不良品だ。中国政府は、ウイルスが流行している他国の支援に乗り出しているが、ヨーロッパの一部の国から、中国から届いた医療物資が粗悪品だったという苦情が寄せられた。そこで中国政府自らが、品質管理を徹底せざるを得なくなった。 「3Mは国有化された」 しかし、中国共産党がマスクの生産と流通の監視を強化したことで、外国政府や企業の一部は、必要な医療物資を確保できなくなった。 トランプ大統領の通商担当補佐官ピーター・ナバロは2020年2月、フォックス・ビジネスに対し、米化学大手3M(スリーエム)の中国工場が、中国政府によって「事実上、国有化された」と述べた。 中国は当初、自国内の感染拡大を抑えるために、国内で生産されたマスクの輸出を控えるとともに、他国から膨大な数のマスクを買いつけていたようだ。しかし現在は、国内の流行がおおかた抑え込まれたこともあり、輸出規制は緩和されている模様だ。 たとえば、3Mは4月6日、中国にある自社工場で生産したマスク1億6650万枚を今後3カ月にわたって米国内の医療機関に供給することで米政府と合意した。また4月27日には、中国からのマスク150万枚がサウスカロライナ州に到着した。 しかし中国のマスクメーカーは、世界各地から寄せられた大量注文の処理に追いつけずにいる。PPEを取り扱うシカゴの企業iPromoの最高経営責任者(CEO)レオ・フリードマンによると、高機能N95マスク(米国労働安全衛生研究所規格の医療用マスク)を何百万枚も中国企業に発注していたが、キャンセルされたという。フリードマンは米フォーブスに対し、「(発注したN95マスクは)病院や州政府に納入するものだった」と語った。「入手できなくなったことを先週、病院などに伝えた」 <参考記事>マスク不足はなぜ起き、どうやって解消すべきなのか <参考記事>マスク姿のアジア人女性がニューヨークで暴行受ける ===== フロリダ州危機管理局もN95マスクを発注していたが、もう何週間も前から立ち消えになっていると明かしている。 遅れやキャンセルが生じているのは、政府管理のためだろう。イギリスやスペイン、チェコ、オランダなどの国々が、中国製の医療物資が粗悪だったとして、回収したり受け取りを拒否した屈辱を繰り返すまいとしているのだ。 米国務省は4月半ば、中国に対して、医療に不可欠な物資の輸出を妨げる要因を排除するよう求めた。「品質管理を徹底する取り組みには感謝したい」。国務省報道官はそう述べた。「しかし、そのせいで重要な医療物資が速やかに輸出されなくなる事態をわれわれは望んでいない」 そこまで努力しているにも関わらず、中国は品質問題を解消できずにいる。カナダ政府は4月24日、N95に相当する中国製マスクKN95の受け取りを拒否したと発表した。カナダ連邦が定める基準を満たしておらず、第一線でウイルスと闘う医療従事者の保護には適切でないという。 不良品は政府が押収 AFPの報道によると、中国商務省は4月25日、医療物資を対象にした新たな規則を導入。すべての輸出品は、中国規格と国際的な規格を満たしていなければならないと通告した。今後は物資を輸出する際に、輸出先の国が定める安全要件を満たしていることを示す宣誓書の提出が義務づけられるという。 中国当局はさらに、約1600万件の事業所を対象に調査を行い、8900万枚を超える不良品マスクを押収したと発表した。国家市場監督管理総局の甘霖(ガン・リン)副局長は記者に対し、マスク以外の防護用品41万8000点と、効果のない消毒用品100万ドル相当も押収したと述べている。 中国税関総署の高官、金海(ジン・ハイ)は4月、企業のなかには、基準に満たない医療物資を生産して「手っ取り早く儲けよう」としているところがあると語ったと、AFPは報じている。 (翻訳:ガリレオ) ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。