新型コロナウイルスの感染拡大で大打撃を受ける観光産業。星野リゾート(長野県軽井沢町)の星野佳路代表は、治療薬やワクチンが登場するまでの1―1年半の間は、緩やかな緩和期となり、旅行は「3密回避」の滞在が重視されるとみる。「3密回避」のため、サービスを見直しながら、地元の人に来てもらう「マイクロツーリズム」にも力を入れていく方針だ。緩和期は需要を拡大するより、下支えする政策が必要との見方を示した。 ロイターとのインタビューで語った。 「緩和期」の対応、サービスの設計見直し 星野代表は、1―1年半後に治療薬やワクチンができることを「ゴール」と位置付ける。ただ、緊急事態宣言が1―1年半続くわけではなく「緩やかな緩和期は必ず来る」とし、観光産業もその波に対応していくことが必要になるとみている。「そこまでは、旅行者が旅行先を選ぶ、旅行形態を選ぶ基準が変化する。私たちはサービスを設計し直さなければならないし、客は、旅の形態を非常に慎重に、コロナのことを意識しながら、選ぶ時期になる」と指摘する。 この緩やかな緩和期に大事なことは「観光が感染拡大に貢献しないこと」とし、ビュッフェを取り止めたり、チェックインをロビーではなく部屋で手早く行うなど「3密回避」のためにサービス内容を徹底的に見直していく。 同社が全国で運営している温泉旅館「界」。星野代表は「食事は個室で食べてもらっているし、部屋での滞在が多いので、3密回避には向いている観光の形態だと思っている」と話す。 回復はローカル、大都市、インバウンドの順 インバウンド需要比率が高く、4月8日から一時休業している「星のや東京」。治療薬やワクチンが開発されるまではインバウンドの戻りが見込めない中、「当面は、東京都内、特に23区内の方々に、30分で行ける高級温泉旅館ということで提案していきたい」という。 星野代表は、緊急事態宣言が解除になった後は、ローカル、大都市圏、インバウンドの順に客が戻ってくるとみている。「15─30分圏内の人に来ていただく観光は、需要が見込め、雇用を維持できるし、移動がないため感染拡大につながらない。(感染拡大の)第2波、第3波がきた時に、マイクロツーリズムをちゃんとやっておけば、売り上げの下支えになる」という。さらには、地元の人に教えられることもあり、情報交換をすることで、サービスの幅が広がるメリットがある。 【関連記事】 ・「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に ・「緊急事態宣言」延長で未曽有の危機に 動き鈍い安倍政権の経済対策 ・「新型コロナ感染長期化」という確実な将来 3つのデータが教える私たちのとるべき対策 ・トランプ「新型コロナウイルス、武漢の研究所が発生源の可能性を確信」 ===== 日本の観光需要の8割は日本人 昨年までの日本の観光需要25―26兆円。うち、80%にあたる20兆円強が日本人による観光、インバウンドは4.5―5兆円だ。星野代表は「20兆円強の市場を持っているのは日本の強み」と話す。加えて、年間1500万人の日本人が海外旅行に出掛けており、海外旅行への急激な戻りが見通せない中、この旅行需要が国内旅行に向かうことで「そこそこ国内需要は見込める。緩やかな緩和期にそこをしっかりと確保することが、事業者にとってすごく大事だ」と指摘した。 また、治療薬やワクチンに誰でも手が届く状態になった後は「3密回避の滞在などの重要度は薄れていくと思っている。インバウンドも少しずつ戻ってくるだろうし、時間が掛かるかもしれないが、旅行市場は元の状態に戻る」とみている。 政府支援、一気に需要膨らませるのは不適切 星野代表は、緊急事態宣言解除後の観光業などに対する政府支援のあり方について「治療薬・ワクチンができるまでは、一気に観光需要を膨らませることは、適切ではない。2年程度の長期にわたって、最低限の需要を下支えするような政策が大事だと思っている」と話す。 例えば、何百億円という予算でも、3カ月のクーポンなどにせず、同じ予算を24カ月で割って、毎月のように出していくことで「感染拡大につながらない、そこそこ需要喚起を維持しながら、同時にゴールに向かって、観光産業そのものを絶やさないことにつながる」という。 政府は、観光や飲食業、イベントなどに関する支援として、新型コロナ終息後の「GO TOキャンペーン(仮称)」の予算として1兆6794億円を計上している。 *インタビューは4月23日に行いました。 (清水律子 藤田淳子 編集:石田仁志)[東京 ロイター]Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます 【関連記事】 ・「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に ・「緊急事態宣言」延長で未曽有の危機に 動き鈍い安倍政権の経済対策 ・「新型コロナ感染長期化」という確実な将来 3つのデータが教える私たちのとるべき対策 ・トランプ「新型コロナウイルス、武漢の研究所が発生源の可能性を確信」   ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。