<これらはたまたまヒットしたのではないし、アニメ・漫画・ゲームだけが日本の強みでもない。外出できず世界が苦しむ今こそ、日常の中にある日本のカルチャー・コンテンツが必要だ。本誌「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集より> 片付けコンサルタントの近藤麻理恵(こんまり)さんが書いた本『人生がときめく片づけの魔法』が世界40カ国で翻訳出版され、ネットフリックスのドキュメンタリー『KonMari~人生がときめく片づけの魔法~』も世界で大ヒットを果たした。 ドラマ『孤独のグルメ』と『深夜食堂』は、私の母国の韓国や中国、台湾など東アジアを中心に大人気となり、肉じゃが、豚汁、だし巻き卵、お茶漬けなど日本の家庭料理が新ジャンルとして注目を集めた。レシピ本も次々と出版されている。 これらはたまたまヒットしたのではない。実は片付けや日本の家庭料理が支持を集めた現象の中に、今後のクールジャパンにおける大きなヒントが隠れている。 10年ほど前から日本文化に興味を持ち、短歌を詠むなど深く学び続けてきた私から言わせてもらうと、日本にはカルチャー・コンテンツの宝がたくさん眠っている。私はいつもその無限の可能性に感銘を受けているが、残念なのは日本人がその可能性にまだ気付いていないことだ。 日本ではアニメ、漫画、ゲームが日本独自のコンテンツであると、その価値を認められている。確かにこれらは優れたサブカルチャーとして世界各国に熱狂的なファンを持ち、素晴らしい結果を出している。でも私が注目したいのは、日本の日常の中から生み出されるコンテンツだ。実は、海外の人々からすれば、日本人は普段何を食べて、何を見て、何を考えて、何を大事にしているのかが一番興味深いところなのだ。 こんまりのヒットにはさまざまな理由があるが、その中でも「片付けは人生を変える」「セラピー効果のある片付け術」などのメッセージが大きな役割を果たした。『深夜食堂』の場合は日本人が持つ「人情」が新鮮に映り、海外の人たちはこれこそが見たかった日本らしさだと言う。実際私も『深夜食堂』を見て、ベールに包まれていた日本の素顔が見れた気がしてうれしかった記憶がある。 つまり、いま世界が求めている日本のカルチャーはそこまで難しいものではないということだ。 【参考記事】こんまりの魔法に見る「生と死」 「お金になる」は悪くない ところで、クールジャパン関係の方たちと話す機会があるのだが、私にはひとつ気になることがある。それはカルチャーがお金になるという発想に対する受け止め方だ。「お金になるのもいいですけど、カルチャーがビジネス色に染まることを作り手が好まないかもしれなくて......」などと戸惑う。しかし、今や文化産業が持つ付加価値が無視できないほど大きいということだけは伝えたい。 ===== アイドルグループのBTS(防弾少年団)、ブラックピンクからアカデミー賞を受賞した映画『パラサイト 半地下の家族』まで世界を熱狂させている韓国文化の事例を見ると、文化産業が一つの国を支えるほどの力を持つことが分かる。 韓国はカルチャー・コンテンツをより成長させるために映画や音楽、書籍、ゲームなど各分野と連携した戦略を立てている。その背景には明確な理由もある。2000年に21兆ウォン(約2兆円)だった韓国コンテンツ産業の売上高は2018年に119兆ウォン超まで伸び、輸出額だけでも近年は毎年1.5倍ほど増加しているのだ。 これからの時代は、モノからヒトやデータへと価値がシフトしていき、国境を超えて広がるヒトやデータにおいてはカルチャー・コンテンツの力が重要になってくるはずだ。コロナ危機で世界の人々が苦しみ、また外出しなくなった今こそ、人を感動させる日本のコンテンツが求められる。だからこそ、クールジャパンの無限の可能性をどんどん世界に広げてほしいと願っている。 <2020年5月5日/12日号「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集より> 【参考記事】「短歌は好きのレベルを超えている」韓国人の歌人カン・ハンナは言った ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。