<『コンテイジョン』『ワールド・ウォーZ』『復活の日』──今こそ見るべき7つのウイルス映画を紹介する> 新型コロナウイルスの感染拡大で、ゴールデンウイークも引きこもり生活確定。ここで鬱屈としないためには総合エンターテインメントの王者である映画を見るに限る。それもテーマはあえてウイルス・パンデミック(疫病の世界的流行)。パンデミックは映画の一大ジャンルで、これまで多くの作品が作られてきた。つらい現実を忘れるのは難しいかもしれないが、映画が生み出すスペクタクルにコロナ禍からの救いとカタルシス(魂の浄化)を見いだせる......かもしれない。 ◇ ◇ ◇ パンデミック映画の古典的な地位を占めているのは、ダスティン・ホフマン主演の『アウトブレイク』(1995年)。アフリカで発生したエボラ出血熱より強力なウイルスが、密輸入された猿を介してアメリカで感染爆発(アウトブレイク)してしまう。細菌兵器開発の秘密を抱えた陸軍の将軍によって感染地域が街ごと空爆されようとするなか、ホフマン演ずる陸軍軍医が抗血清の確保を目指す。 あえて古典的、つまり予定調和を目指さず高い評価を受けたのが、スティーブン・ソダーバーグ監督の『コンテイジョン』(2011年)だ。 中国で発生したウイルスがコウモリから子豚を経由して中華料理のシェフに感染。そのシェフと握手をしたグウィネス・パルトロウがアメリカにウイルスを持ち込み感染爆発が起きる。スーパーで物資強奪戦が起き、フリージャーナリスト(ジュード・ロウ)が特効薬のフェイクニュースを流し、感染対策の最前線で闘うCDC(疾病対策センター)の専門家が都市封鎖(ロックダウン)直前に身内に情報を漏らす......。今回とあまりにも似ている、と世界的な反響を呼んでいる映画だ。 細菌に救われることも ゾンビ映画はもともと、墓場に埋葬されている死者が復活して街をさまよい、人間を襲う姿が見る者を恐怖させた。しかし今日では、ゾンビが誕生した科学的原因がウイルスであることを冒頭で説明するのがお約束になっている。 そんなウイルス系ゾンビ映画の傑作といえば『バイオハザードⅡ アポカリプス』(2004年)だろう。巨大企業アンブレラ社が開発した兵器型ウイルスが流出し、ラクーンシティという仮想の都市が丸ごとロックダウンされる。ウイルスを作り出した天才科学者の娘を救出するべく、元特殊部隊員のミラ・ジョボビッチが街にあふれ返るアンデッド(ゾンビ)と戦う映画だ。シリーズはその後第6作まで作られグダグダの展開になるが、この2作目は傑作だ。 ===== ハッピーエンドのゾンビ映画なら、ブラッド・ピット主演の『ワールド・ウォーZ』(2013年)はどうだろう。 従来のゾンビが遅い動きなのに対して、この映画のゾンビ(Z)はものすごく足が速い。ブラピが演じる主人公は国連の元捜査官で、米大統領も死亡し文明が崩壊しようとする最終世界大戦のさなか、洋上の空母に避難した国連事務次長に頼まれZ誕生の真相を突き止めようとする。 撮影時のドタバタにもかかわらず、この映画を魅力的にしているのは卓越したブラピの演技力。同じくウイルスで人類がほぼ絶滅する世界を描いたテリー・ギリアム監督の怪作『12モンキーズ』(1996年)出演時とは段違いだ。 ウイルスではないが病原菌は宇宙人とも共演する。トム・クルーズが主演したスティーブン・スピルバーグ監督の『宇宙戦争』(2005年)は、宇宙人による地球征服寸前に、地上のバクテリアに耐性がなかった宇宙人がバタバタと倒れ人類が救われる、というストーリー。コロナ禍の現在、細菌に救われる話は微妙かもしれないが。 「人類2度消滅」の衝撃 ウイルスを悪用して権力を奪取した独裁者を逆に倒すという映画はどうか。ウォシャウスキー兄弟(当時)製作・脚本の『Vフォー・ヴェンデッタ』(2006年)は、収容所での人体実験で開発されたウイルスをばらまいた看守一味が、時間差でワクチンを提供して大儲けするだけでなく、社会不安をあおって政治権力を握り独裁政権を樹立する。実験台にされた男が復讐に立ち上がる筋書きは一定のカタルシスを与えてくれるが......人間不信に陥るかも。 ウイルスとの闘いというスペクタクルだけでなく人間愛の称揚、加えて救いとカタルシスが感じられるパンデミック映画はないのか。あった。小松左京原作、深作欣二監督の『復活の日』(1980年)だ。 東ドイツの陸軍細菌戦研究所から持ち出された細菌兵器の輸送中に飛行機が墜落。あっという間にウイルスが拡大する。「イタリア風邪」と命名された強力な感染力と毒性を持つこのウイルスに各国政府はなすすべがなく、1982年秋、人類は全滅する。しかし、極寒環境ではウイルスが不活性化することから(地球温暖化が進んでいなくてよかった)、南極大陸の基地要員863人と原子力潜水艦の乗組員だけは生き延びていた。 ===== 人類ほぼ絶滅という衝撃は『12モンキーズ』と同じだが、この映画がすごいのはここからだ。生き残った人類は南極に自治政府を樹立し、ワクチン開発に成功。他方で、草刈正雄演じる主人公の地震予知学者は、石油採掘の影響で近日中に巨大地震がワシントンを襲うことに気付く。核攻撃だと誤認した米軍の自動報復装置がソ連に対する核攻撃を開始。ソ連側も自動反撃を行い、全面核戦争の放射線で地表は焼き尽くされる。なんと人類は2度消滅するのである。 しかし、絶望は絶望ではなく虚妄だった。核戦争を生き延びた草刈は、ボロボロになりながらも生き残り組と合流する。歓喜に沸く人々に抱かれて彼はこうつぶやく。「Life is wonderful(人生はいいものだ)」と。 人生は素晴らしい。作家のウィリアム・フォークナーが言ったように人は単に耐えるだけでなく、打ち勝つことができる。たとえそれがコロナであっても。その支えの1つになるのが映画だとしたら、それほど素晴らしいことはない。だからこそ映画を見よう。 <本誌2020年5月5日/12日号掲載> 【参考記事】気味が悪いくらいそっくり......新型コロナを予言したウイルス映画が語ること 【参考記事】パンデミック文学から学べること──コロナ禍をどう生きるか ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。 =====