<厳しい封鎖措置を取らずに集団免疫獲得を目指す政府の方針は正しかったのか> 新型コロナウイルス対策で厳しいロックダウン(都市封鎖)を行わないという独自路線を貫くスウェーデン(人口1千9万人)では、5月7日の時点で同ウイルスの感染者が少なくとも2万4623人、死者の数は3040人に達している。 この状況についてスウェーデン公衆衛生局の疫学者アンデシュ・テグネルは6日の記者会見で、「死者数3000人だ。これは恐ろしい数字だ」と語った。 テグネルは同国の新型コロナウイルス対策の責任者で、これまではロックダウンを行わない政府の決断を支持してきた。だが今では、反ロックダウン戦略が最善の選択肢だという考え方に「納得はしていない」と認めている。 「まったく納得はしていない。何が最善策なのか、いつも頭を離れない」。テグネルは首都ストックホルムに拠点を置く日刊紙アフトンブラデッドにこう語った。 北欧諸国の中で、スウェーデンは新型コロナウイルスの死者数が群を抜いて多い。米ジョンズ・ホプキンズ大学の最新の集計によれば、他の北欧諸国の死者は、デンマークが514人、ノルウェーが217人、フィンランドが255人だ。スウェーデンは人口が倍あることを考えても、その死者数は群を抜く。 高齢者施設でもマスクせず インペリアル・カレッジCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策チームの最新の予測によれば、スウェーデンの1日あたりの死者数は、5月11日までに150人近くにまで増える勢いで、4日からの1週間の死者数は最大1060人にのぼる見通しだ。感染爆発の道を辿っているようにもみえる。 スウェーデンは、感染者のいるヨーロッパの国で唯一、厳しいロックダウンを行っていない。ウイルスにさらされる人を増やして「集団免疫」を獲得し、感染拡大の第2波を防ぐというのが彼らの戦略だ。 だがこの方針には、国外だけでなく国内からも批判の声が上がっている。スウェーデン南部のルンドに暮らすアリソン・プランバーグ(33)は本誌のメール取材に対して、「スウェーデンの対応が適切だとは思わない。(大勢の死者が出ている)高齢者施設でさえ、マスク着用が推奨されていない」と述べた。 彼女はさらにこう続けた。「持病がある子どもさえ、感染した場合のリスクが高いと正式に見なされていない」 <参考記事>「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に <参考記事>新型コロナで都市封鎖しないスウェーデンに、感染爆発の警告 ===== また彼女は、スウェーデンでは今でも、健康な子ども(6~15歳)は学校に通うことが義務づけられていると指摘。「つまり健康な教師たちも、学校で授業をし続けなければならないということだ。これまでに複数の教師が(新型コロナウイルスに感染して)命を落としている。た全体として、政府は予防のための措置を怠っているように思える」と語った。 スウェーデンは同ウイルスの感染拡大を受けて50人以上の集会を禁止し、市民には不要不急の移動や高齢者との接触を避けるよう勧告している。レストラン、バーやナイトクラブは着席スタイルのサービスのみ許可されており、営業を続けているが、ロイター通信によれば、政府は感染予防のガイドラインに従わない飲食店は営業停止にすると警告している。 高校と大学は閉鎖されてオンライン授業に切り替えられているが、16歳未満の子どもたちは今も学校に通っている。仕事に関しては、できるだけ自宅勤務にするように、とされている。 スウェーデンのミカエル・ダンベリ内相は記者会見で、「気候が良くなってくるにつれて、テラス席のあるレストランに大勢の客が集まっているようで気がかりだ」と懸念を表明。「ストックホルムでもほかの場所でも、テラス席のあるレストランが客で一杯になる状況は好ましくない。そうなれば、レストランを閉鎖することになる」とつけ加えた。 「弱い人々を守れていない」 カロリンスカ研究所のセシリア・セーデルベリ・ナウクレル教授(微生物病因)も、スウェーデンの異例の対策に懸念の声を上げてきた。彼女をはじめとする2300人近い学者たちは3月末、政府宛の公開書簡に署名。医療システムを守るために、もっと厳しい対策を導入するよう求めた。 セーデルベリ・ナウクレルは4月に入ってから、ロイター通信にこう語っている。「国が完全な混乱状態に陥ることがないように、状況をコントロールすることが必要だ。ロックダウンをしないという方法は、(日本以外)これまで誰も試していない。それなのになぜ、国民の同意なしに、スウェーデンが初めてその方法を試さなければならないのか」 またルンド大学(スウェーデン)のポール・フランクス教授(遺伝疫学)は、4月に本誌にこう語っていた。「政府の戦略は、弱い人々を守るという点であまりうまく機能していない。そのことは、多くの高齢者施設や病院内で新型コロナウイルスの感染者が確認されている事実から明らかだ」 フランクスと同大学のピーター・ニルソン教授(内科医学・感染学)は3月27日に共同で論文を発表。この中で「特に大都市圏で感染が拡大したり、医療システムへの負担が深刻化したりすれば、今後スウェーデンでもより厳しい規制が導入される可能性は高い」と指摘している。 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。