<韓国政府は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため実施してきた「社会的距離の確保」を5月5日に終了した。その成功の要因と、今後の課題は......> 韓国政府は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため実施してきた「社会的距離の確保」を5月5日に終了し、日常生活・経済活動と防疫のバランスを取る「生活防疫」に移行すると発表した。行事や集まりの開催が可能になるなど、社会・経済活動の制限を緩和し、小中高生の登校も決定した。 累計感染者は1万810人、死亡者256人 「社会的距離の確保」の解除に先立つ大型連休、著名な観光地やショッピングモールはマスクを着用した人々で行列ができ、5月5日にはプロ野球が開幕した。視聴率調査会社の調べで216万人が無観客試合を視聴した。5月6日には在宅勤務が解除された会社員が出勤を開始した。 受験を控えた高校3年生は5月13日から、高2生と中3生、小学1、2年生は同20日、高1生、中2生と小学3、4年生は27日からそれぞれ登校し、中1生と小学5、6年生は6月1日から登校する。4月30日から5月5日の大型連休後2週間は状況を見守るべきという専門家の意見を取り入れた措置だが、保護者の育児負担が限界に近づいているという判断から小学生は低学年から順次に登校させることになった。 韓国の新型コロナウイルス感染者は2020年2月18日に新天地大邱教会で確認されたあと一気に拡大した。2月29日には1日だけで909人の感染者が確認され、3月中旬、1日平均100人余りが陽性判定を受けたが、4月20日以降は平均10人未満まで感染者が減少した。5月7日時点の累計感染者は1万810人で、死亡者256人。一方、隔離を解かれた完治者は9千419人となり、隔離治療中の患者は1,135人。累計63万人余りが陰性判定を受け、同時点で8千429人が検査結果を待っている。 SARSやMERSの経験が有効に作用した 韓国で新型コロナウイルスがいちはやく収束した要因として、各国は「ドライブスルー診療所」に注目する。従来方式は感染が疑われる人を1人検査するたびに診療室を消毒する。患者の待機時間が6時間を超えるなど、待機中に感染する懸念も提起された。自家用車に乗ったまま検査を受けるドライブスルー方式は受付から面談、体温測定、検体採取まで10分以内で完結し、待機者同士が接することはない。医療スタッフの保護服やマスク消耗も軽減できるなど検査効率が格段に向上した。 また、感染源の特定に時間がかかると感染者が歩き回ってウイルスが拡散する恐れがあるが、新天地大邱教会から集中的に広がったことも要因としてあげられるだろう。集団感染は感染源の特定が早く、政府は教会関係者に隔離と検査を強制した。 ===== さらに大邱は首都圏との日常的な人的交流がそれほど多くはない。人口の4割が集中する首都圏で感染が広がると、首都はロックダウンに追い込まれかねない。新天地教会の感染が収束したあと、感染は海外からの入国者に移行したが、政府が大邱地域をロックダウンの一歩手前である「特別管理地域」に指定して以後、首都への流入が制限され、対策を講じる時間ができた。 大韓病院協会が主管したオンラインカンファレンスで、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)の経験が有効に作用したという声や政府による個人情報管理を指摘する意見も述べられた。 秋冬の再流行に備え、専門調査員の人員不足が問題に いっぽう、このカンファレンスで、秋から冬にかけて大流行する危険性に備えるべきという声が上がった。 理事長は患者のデータ管理が十分にできていないと発言した。中国は2か月あまりで臨床データや患者データを確保したが、韓国はデータ管理や論文など、現場と研究の連携ができておらず、自治体によって対応に大きな差があったと指摘した。またソウル市は感染者1人1人の詳細な行動履歴を公開したが、行き過ぎた人権侵害であり、人権に敏感な国は別なアプローチが必要という意見である。 防疫当局は秋冬の新型コロナウイルス再流行に備え、保健所や診療所など約1000か所の「呼吸器専門クリニック」を設置すると明らかにしたが、一方で専門調査員の人員不足が問題になっている。 疾病管理本部は2月に疫学調査官を募集したが、4人の採用予定に対し、実際に採用できたのは2人だけだった。3月の2次募集は8人の採用を予定したが、1人しか採用できなかった。医師免許を有する調査官は定員13人に対して6人しかいない。医師免許を有しない調査員も定員割れが続いている。 新型コロナウイルスの1日あたり感染者が200人に達した2月半ば、保健福祉部は調査員を増員すると大統領に報告し、120人余を募集したが採用できたのは71人だった。調査員は契約職で2年ごとに更新する。使命感や高い年俸だけで増員することは難しく、契約延長や昇進を含む人事システムの見直しが必要だと専門家は指摘している。 ===== South Korea enters "new normal" as it records no new local COVID-19 infections