<外出自粛の長期化で普段は目立たない、気にすることのない国民性が明らかに> 日本では新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が延長されるなか、最近ネットでは「自粛警察」という言葉が登場した。これまで日本は、海外に比べると自粛も比較的緩やかムードだったが、それがここ数週間で一転してしまったように見える。 SNS上で今営業しているお店を非難したり、外出した人の名前をさらして炎上させたり、実際の店舗に脅迫めいた張り紙などで嫌がらせをしたり、県外ナンバーの車にいたずらをするなど、度を越した「自粛警察」の正義感には問題視する声も高まっている。 一度同じ方向を向くと決めたら、それ以外の人を皆で非難して統一しようとする国民性は、良し悪しはともかく、とても日本らしい傾向だと感じてしまった。 それでは他の国では一体どのような動きがあるのだろうか。 規制緩和→クラスター→営業停止、めまぐるしい韓国 今回の新型コロナのパンデミックで、様々なアイデアによる感染抑え込みで、世界から注目を集めた韓国。6日からは外出自粛緩和が発表されたが、8日には梨泰院にあるクラブで12人のクラスター発生が明らかになった。 情熱的な国民性をもつ韓国人は、抑制されるとその後に反動で爆発してしまう傾向がある。問題になったクラブは、実はまだ外出自粛が緩和される前から営業が行われ、1500人あまりの客が出入りしていたが、その大半はマスクをしていなかったという。 しかし、ここでも韓国は動きが早かった。ソウル市はすぐにこの感染源とされる男性の4月30日からの足取りを数分単位で克明に記録した行動一覧を公表、国民に注意を呼び掛けた。さらに、韓国政府は8日の午後8時から全国のクラブに1カ月の営業自粛を要請。9日午後にはパク・ウォンスンソウル市長が緊急会見でクラブを始めとした娯楽施設に「集合禁止命令」を発令、事実上の営業停止を命じた。 このフットワークの軽さは、韓国人のもう一つの国民性と言われる「パルリパルリ(=早く早く)精神」に繋がっている。韓国人はせっかちな人が多く、日韓の合同作業や交渉などをしていると特に感じることだが、トラブル回避のための慎重さよりも、プロジェクト達成のためとりあえずやってみる、という行動派が多い。パルリパルリ精神は、今回の新型コロナウイルスへの感染対処ではいい方向へ転がりを見せたのではないだろうか。 そんな韓国でも、自粛警察のような動きが無いわけではない。日本と違うのは、それが有名人に向けた取り締まりが多いことだろう。 ソウル市が発表した梨泰院のクラブの感染者たちの行動経路 ソウル広域市ウェブサイトより 【関連記事】 ・東京都、新型コロナウイルス新規感染36人確認 7日連続で100人以下 ・ロックダウンは必要なかった? 「外出禁止は感染抑制と相関がない」と研究結果 ・新型コロナ規制緩和の韓国、梨泰院のクラブでクラスター発生 ・コロナ独自路線のスウェーデン、死者3000人突破に当局の科学者「恐ろしい」 ・新型コロナウイルスをめぐる各国の最新状況まとめ(9日現在) ===== 芸能人を槍玉に挙げる韓国 韓国でクラスターと言って思い浮かべるのは、感染番号13番の女性である。新天地イエス教会という新興宗教の信者であり、彼女の布教活動によってさらに感染者を増やすこととなってしまった。 このことから、魔女狩りのように信者と疑われる人の名簿が作成され、ネットを中心にばら撒かれた。だが、そこに書かれていたのは芸能人などの著名人だ。信者でもないにも関わらず名簿に名前が載っていたIVYやイ・ドンウクなどの被害者は、事務所が無関係であることを発表する事態にまで至った。 さらに、最近では芸能人がSNSで少しでも家から外出した写真をアップすると、誹謗中傷のコメントが殺到する現象が起きている。タレントのオ・サンジンは、4月26日自身のインスタグラムに「一人でプール」というコメントと共に、誰もいないプールサイドからの写真を載せると、一般人からの悪質なコメントが多く寄せられ、すぐに削除することとなった。 続いて、27日にはタレントのパク・チユンが家族で旅行に行ったことをインスタグラムに写真と共にアップし炎上した。多くの非難コメントに対しパク・チユンは「観光地を歩き回るのではなく、プライベートのコンドミニアムに私たちだけで過ごした。夫が職場に出勤するよりも安全だった」と反論し、さらにストーリーズには「最近、ああしろこうしろと言ってくる人が多い。 自分の人生に不満があるなら自分でどうにかしなさいよ。 他人の人生を干渉する前に」とコメントを載せさらに反感を買うこととなってしまった。 この騒動は、パク・チユンの夫であるKBSアナウンサーのチェ・ドンソクにまで被害が及ぶこととなる。KBSのニュース番組「ニュース9」のアンカーを務めるいわば看板アナウンサーのチェ・ドンソクに対し、KBS公式ホームページ掲示板には、彼への抗議文と番組降板要請の書き込みが殺到するようになり、ついにパク・チユンは釈明文を掲載し謝罪した。 ジェジュンに対して処罰要求 他にも、歌手のガヒはインドネシア・バリに居住中なのにもかかわらず、韓国に帰国するとの報告に不快感を示した人々から非難が相次ぎ、さらに帰国後2週間の自宅謹慎期間中に息子と林で遊んでいる写真をSNSにアップし炎上した。また、歌手のコ・ジヨンは、家族で漢江の河原に遊びに行った時の写真をインスタグラムに載せたところ「外出は控えろ!」という批判が殺到してしまった。 韓国では芸能人のSNS管理が日本よりも甘いのか、炎上が多く発生している印象だ。4月のエイプリルフールにはJYJのメンバー、ジェジュンが、SNSに「僕はコロナに感染してしまいました」という笑えない嘘の投稿をし、批判が殺到した。その後「他人事ではない」というメッセージを伝えたかったという釈明と謝罪文を公表したが、世間の目は冷たく韓国政府が運営するオンライン目安箱ともいえる国民請願に「ジェジュンを処罰してほしい」という請願まで上がった。 【関連記事】 ・東京都、新型コロナウイルス新規感染36人確認 7日連続で100人以下 ・ロックダウンは必要なかった? 「外出禁止は感染抑制と相関がない」と研究結果 ・新型コロナ規制緩和の韓国、梨泰院のクラブでクラスター発生 ・コロナ独自路線のスウェーデン、死者3000人突破に当局の科学者「恐ろしい」 ・新型コロナウイルスをめぐる各国の最新状況まとめ(9日現在) ===== セレブの発言に嫌悪感覚えるアメリカ国民 自由の国アメリカでは、今まで着用してこなかったマスクをし、握手やハグをやめるなど、国民が団結している一方で、政府に向けてロックダウン解除を求めるデモなども各地で発生している。 個人の行動の自由を尊重する国民性からか、自粛警察のような行為は目立ってはないが、反対にセレブたちのSTAY HOMEの呼びかけに嫌悪感をもつと言う人が増え始めている。 「セレブたちが自宅の豪邸を背景にSTAY HOMEの呼びかけをしても、まったく響かないし共感できない」という投稿が目立つようになった。外出禁止令が出て2カ月が過ぎ、不満と経済的不安が溜まっている中で、何かに当たりたい気持ちの表れなのかもしれない。 アメリカと言えば、英雄信仰の強い国民性を持っている。今回のパンデミックでは、世界中で医療従事者はヒーローであるという賞賛の声が集まっているが、それと同時に、生活に必要不可欠な仕事に携わるエッセンシャル・ワーカー達への感謝の気持ちも生まれ、これまで当たり前と思っていた生活が多くの人たちに支えられていたことを改めて気付かされた。 エッセンシャル・ワーカーからの冷や水 これに対し、あるスーパーの店員の記事が話題を呼んでいる。「Calling Me a Hero Only Makes You Feel Better」(私のことをヒーローだと呼んで、いい気分に浸っているのはあなただけ)というタイトルのこの激白記事によると、店員は「私は自らの命を危険にさらすかもしれない仕事に就いた覚えはない」と語っている。 「今も毎日仕事へ来るのは、使命感などではなく、他にお金を稼ぐことができないからだ。できるなら違う仕事に変わりたいと思っている」「本当に私たちを尊重するのなら、来店しないでほしい」「店に来たとしても、素早く買い物を済ませ、余計なこと喋りかけようとせず、速やかに店から出て行ってほしい」と訴えている。 世界的に外出自粛が始まって1カ月あまり。これからも外出を控えるような期間が続くと、さらに精神的な影響が出やすくなっていくだろう。 ストレスが溜まっているとき、ルールを破っている誰かをターゲットとして見つけて攻撃することで、「良い行いをした!」という道義心を満したくなるかもしれない。しかし、それは本当に正義と呼べるのか、いったん留まって考え直してみる必要があるのではないだろうか。 【関連記事】 ・東京都、新型コロナウイルス新規感染36人確認 7日連続で100人以下 ・ロックダウンは必要なかった? 「外出禁止は感染抑制と相関がない」と研究結果 ・新型コロナ規制緩和の韓国、梨泰院のクラブでクラスター発生 ・コロナ独自路線のスウェーデン、死者3000人突破に当局の科学者「恐ろしい」 ・新型コロナウイルスをめぐる各国の最新状況まとめ(9日現在)   ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。 ===== クラスターが発生したソウル梨泰院のクラブ クラスター発生が明るみになった韓国ソウル市の梨泰院にあるクラブ KBS News / YouTube https://youtu.be/