<「主たる任務はベネズエラの解放とマドゥロの身柄拘束だった」と逮捕された米軍特殊部隊出身の首謀者は語ったが......> ベネズエラで5月4日、マドゥロ大統領打倒を図った容疑で拘束された13人の中に、2人の元米軍特殊部隊兵士が含まれていた。この政権転覆作戦を仕組んだとされるのが、フロリダの民間警備会社シルバーコープ。同社は首都カラカスへの侵入作戦の模様をツイッターで実況していた。 「コロンビア国境からカラカス中心部に向けて大胆な急襲作戦を開始」と、創設者のジョーダン・ガウドローは3日の動画で語っていた。 だが動画が投稿された時点で、8人の工作員がベネズエラ軍に迎撃され、殺害されていた。4日には別働隊のボートも拿捕された。 どうやらベネズエラ当局は既に計画を察知していたようだ。AP通信も攻撃3日前の時点で、作戦の詳細を報道していた。 マドゥロにとって、このクーデター未遂事件はプロパガンダに利用できる絶好のネタだろう。逆に野党指導者のフアン・グアイド国会議長にとっては最悪の展開だ。グアイドはアメリカを含む60カ国から、ベネズエラの正当な指導者として承認されている。 米軍特殊部隊出身のガウドローは、作戦の首謀者だったことを認め、「主たる任務はベネズエラの解放とマドゥロの身柄拘束だったが、失敗に終わった」とブルームバーグ通信に語った。 シルバーコープのウェブサイトによれば、同社の設立は2018年。50カ国以上の政府と企業に危機管理サービスを提供している。トランプ米大統領の集会でも警備を請け負っているが、トランプはクーデター未遂事件への米政府の関与を否定した。 グアイド側がマドゥロ打倒を依頼? グアイド率いるベネズエラの野党勢力も、シルバーコープとの関係を否定している。だが、ベネズエラ人政治コンサンルタントのJ・J・レンドンは、グアイドからマドゥロ打倒のための選択肢を探るよう依頼されたと、ワシントン・ポスト紙に語った。 それによると、ベネズエラの野党勢力は2019年10月、シルバーコープとの間で2億1300万ドルの契約を結んだ。契約書にはグアイドの署名があるが、野党側は偽造の疑いがあると主張している。 「グアイドの代理人は複数の民間警備会社に接触したが、なかには5億ドルもの高額な報酬を要求するところもあった。予算的にガウドローが最適だったということだ」と、アメリカの非政府組織ラテンアメリカ・ワシントン事務所のジェフ・ラムジーは言う。 ===== 契約署名後、ガウドローに奇矯な行動が目立ちだした。さらに150万ドルの追加費用を要求したため、野党勢力側はガウドローの作戦遂行能力を疑い始めた。レンドンらは、契約は破談になったと考えていたが、ガウドローは構わず準備を続けた。自分は「自由の戦士」だから無報酬で働いたと、ガウドローは言った。 この作戦の失敗により、マドゥロは野党勢力とアメリカに対する攻撃材料を手に入れた。「明らかにマドゥロ政権は事前に情報をつかんでいた。何らかの手段で(作戦を強行するように)仕向けたのではないか」と、アメリカ評議会のエリック・ファーンズワース副会長はフォーリン・ポリシー誌に語った。 一方、グアイドら野党勢力の信頼性は傷ついた。ラテンアメリカ・ワシントン事務所のラムジーはこう指摘する。「(グアイドは)この契約と自身との関係をきちんと説明し、平和的な政権交代に向けた現実的なプランを示せるか、それが最大の問題だ」 From Foreign Policy Magazine <本誌2020年5月19日号掲載> 【参考記事】「麻薬テロ」で起訴されたベネズエラのマドゥロ大統領 【参考記事】独裁者マドゥロを擁護する「21世紀の社会主義」の無責任 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年5月19日号(5月12日発売)は「リモートワークの理想と現実」特集。快適性・安全性・効率性を高める方法は? 新型コロナで実現した「理想の働き方」はこのまま一気に普及するのか? 在宅勤務「先進国」アメリカからの最新報告。