政府の新型コロナ感染症に関する「基本的対処方針等諮問委員会」に今月12日、新たに加わった東京財団政策研究所・研究主幹の小林慶一郎氏(慶大客員教授)は15日、ロイターのインタビューに応じ、コロナ対策で収入減少に直面した個人に毎月10万円の現金給付を行うべきだと述べた。収入減少を申告した人を対象とし、給付総額は年間で最大24兆円程度になるとした。 また、新型コロナのワクチンや特効薬が開発され、世界規模で行き渡るには3─4年程度かかると予想。経済の停滞を避けるには、財政拡張政策を継続すると同時に、大規模な検査を実施できる能力を確立し、陽性者を隔離して陰性者の不安感を払しょくすることが不可欠であると指摘。検査と隔離の能力が大幅に向上すれば、経済のⅤ字回復も可能であるとの見解を示した。 こうした政策提言は、安倍晋三首相はじめ政権幹部に近く、伝える意向だと述べた。 月10万円給付、対象は1000ー2000万人 10万円給付の対象者は、コロナ危機による収入減少を申告した人とし、事前の審査はしないことが特徴。事後に「不正申告」が発覚した場合は、確定申告などで「上乗せ課税」して不正分を徴収するとしている。対象者は1000万人から2000万人になると想定。最大で24兆円程度の資金が必要になると説明した。 コロナ危機による経済への打撃が想定よりも強かった場合は、10万円給付を1年間だけでなく数年間に延長することも必要になると述べた。 財源は赤字国債の発行で賄い、その多くを日銀が購入すれば、国債暴落などの市場の混乱は起きないと予想。銀行などの民間金融機関もコロナ危機の継続下では、企業業績の不透明感の強まりなどでリスク回避傾向が続き、国債への選好度は高まり、その面からも日本国債の信用度は揺るがないとの見通しを示した。 他方、コロナ感染リスクへの警戒感は継続し、国境をまたぐ移動は活発化しない期間が長期化すると予想。世界的に空運関連の企業や航空機産業の市場は収縮が予想され、業界再編などの大きな動きが予想されると述べた。また、空運に限らず交通系企業の需要は当面、減少傾向が続くのではないかと語った。 世界的な経済の停滞が長期化する可能性が高まっており、企業は短期的な資金繰りだけでなく、資本の毀損に直面しかねないと指摘。資本の毀損が目立った企業に対しては、公的資金の注入が必要になるとの見解も示した。 ===== 停滞長期化、回避には検査・隔離能力引き上げを コロナ感染拡大に伴って、最も影響を受けたのは、個人の心理であると小林氏は指摘した。感染への不安感が行動を委縮させ、それが長期化することで、3─4年間の世界経済や日本経済の停滞が予想されると主張した。 これを回避するために「ポール・ローマー(スタンフォード大教授)氏が最新の論文で指摘しているように、検査能力と隔離能力を大幅に引き上げ、経済マーケットの中に陽性者がいないと多くの人が認識し、安心できるようにすることが重要だ」と指摘した。 今のままでは、個人も企業経営者も、感染リスク拡大への不安感が残り、安心して経済活動に参加できず、結果として経済の停滞が長期化すると指摘した。 行政のオンライン化も不可避 移動規制の結果、テレワークが日本国内でも初めて本格的に普及。今後はテレワークが「標準形態」として社会的に認知され、広がっていくと主張した。これに対応し、国や地方などの行政サイドも新しい対応が求めれると分析。行政のオンライン化の進展は不可避であり、今後、急いで対応すべき課題であるとした。 また、法的にもオンラインでのサインを認める「電子契約」の法的枠組みを実態に合わせて整備する必要があると語った。 テレワークの普及で、都市部でのオフィス需要は減少していく可能性があると予想。コロナ対策でオフィス内での人と人との間隔を空けるために、広い面積のオフィスが必要になることもあるが、全体としてのオフィス需要は減少しそうだとの見方を示した。 一方、所属する企業と社員の自宅が同じ都道府県内に所在する必要性は薄れ、地方で広い住宅を購入するニーズが高まり、地方での住宅需要が高まる可能性にも言及した。 インタビュアー:田巻一彦 (編集:石田仁志)[ロイター]Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます 【関連記事】 ・東京都、新型コロナウイルス新規感染30人に増加 感染者合計5000人突破 ・ニューヨークと東京では「医療崩壊」の実態が全く違う ・CIA:中国はWHOに圧力をかけて世界中のマスクや防護服を買い漁った? ・新型コロナ対策の規制緩和した韓国 感染症と暮らす「新しい生活様式」とは   ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年5月19日号(5月12日発売)は「リモートワークの理想と現実」特集。快適性・安全性・効率性を高める方法は? 新型コロナで実現した「理想の働き方」はこのまま一気に普及するのか? 在宅勤務「先進国」アメリカからの最新報告。