<大統領が、新型コロナ感染予防のために、下手をすると命に関わるかもしれない薬を飲んでいた。自ら人体実験をするようなものでアメリカに衝撃が走っている> アメリカのドナルド・トランプ大統領は2020年5月18日、レストラン業界経営者らとの円卓会議の席上で、新型コロナウイルスの感染予防のため、抗マラリア薬で新型コロナの治療薬としても期待されるヒドロキシクロロキンを自ら服用していることを明らかにした。また、新型コロナウイルスの検査は2〜3日おきに受けているとも述べた。 ホワイトハウスの医師が、ヒドロキシクロロキンの服用を勧めたわけではない。抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンは、4月ごろまでトランプが、新型コロナウイルスに効くかもしれないと科学な的証拠もなく喧伝していた薬。その未承認薬を亜鉛と併せて毎日摂取していると述べたのだ。ヒドロキシクロロキンの臨床試験はアメリカでは4月に始まったばかりで、米食品医薬品局(FDA)は治療薬として承認していない。効果があるのないのか、危険な副作用を伴わないのかどうか、評価は分かれる。それを大統領が服用していると聞いて国中がショックを受けたのはそのためだ。 <参考記事>トランプ肝入りの抗マラリア薬、新型コロナウイルス患者の死亡率上げる恐れ ホワイトハウスに複数の陽性者 トランプがこの薬を飲み始めたのは、最近ホワイトハウスの複数のスタッフが新型コロナウイルスに感染したので、予防的な意味合いだったという。その割にトランプは公の場ではマスクもつけず、社会的距離も取らず、ホワイトハウスの感染対策が問題になっていた。 <参考記事>マスク拒否のホワイトハウスで、コロナ対策を率いるファウチ博士らが自主隔離 <参考記事>ホワイトハウスでクラスター疑惑──トランプ大統領がコロナに感染したらどうなる? トランプはヒドロキシクロロキンについて、「1週間半ほど服用しているが、わたしは元気だ」と語り、ヒドロキシクロロキンが新型コロナウイルスに効果がある「可能性はきわめて高い」と述べた。「効果がないとしても、副作用で病気になったり死んだりすることはない」 この衝撃発言の後、FOXビジネスのニュース番組司会者ニール・カブートは、呼吸器系などの基礎疾患がある人は、命取りになりかねないのでヒドロキシクロロキンを服用しないよう呼びかけた。カブートは、基礎疾患を抱える退役軍人たちが新型コロナウイルスに感染した場合の複数の研究を引用し、ヒドロキシクロロキンには効果がない可能性があると指摘した。 カブートは、5月18日の放送でこう呼びかけた。「もしあなたが重症化の可能性が高いハイリスクグループに属していて、尚かつ新型コロナウイルスに感染している場合、この薬は危険だ。いくら強調しても足りない。この薬は命にかかわる」 ヒドロキシクロロキンはマラリアや狼瘡に対する有効性が証明されている薬だが、「軽い気持ちで」、または「大統領が飲んでいるから」といった理由で服用すべきではない、というのだ。 ===== ヒドロキシクロロキンの新型コロナウイルス治療に対する有効性は、まだ科学的に証明されていない。3月には、フランスで実施された研究で、ヒドロキシクロロキンと抗生物質アジスロマイシンを組み合わせた治療で新型コロナウイルス感染症の症状が軽減したことがあったが、その後、米仏の当局から心臓などに深刻な副作用が警告されている。 一方、別の研究では、ヒドロキシクロロキンには新型コロナウイルスの治療効果はなく、患者に投与しても目立った改善は見られなかった。 FDAは3月28日、ヒドロキシクロロキンについて緊急使用許可(EUA)を発行した。ヒドロキシクロロキンは、新型コロナウイルス治療用として、病院や医療機関を通じて、米保健福祉省の戦略的全米大量備蓄プログラム(SNS)から入手することが可能だ。しかし、ヒドロキシクロロキンの正式承認は、あくまでも臨床試験の結果にかかっている。 (翻訳:ガリレオ) ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年5月19日号(5月12日発売)は「リモートワークの理想と現実」特集。快適性・安全性・効率性を高める方法は? 新型コロナで実現した「理想の働き方」はこのまま一気に普及するのか? 在宅勤務「先進国」アメリカからの最新報告。