<2019年に米国で麻疹が流行した際、フェイスブックユーザーのワクチンに関する不信がオンライン上でどのように進展していくのかをマップで可視化した......> 2019年に米国で確認された麻疹(はしか)の感染者は1282名で、1992年以来、最多となった。ワクチン未接種の人々の間で感染が広がったとみられている。 ワクチン未接種の背景としては、ワクチン反対運動を推進する活動家や団体からの偏った情報や意見がソーシャルメディアネットワーク(SNS)を通じて拡散され、予防接種への躊躇や不安感を煽っているとの指摘もある。 ●参考記事 反ワクチンのプロパガンダをフェイスブックが助長!? 対策を求める動き ワクチンへの不信がネットでどのように進展していくのか 米ジョージワシントン大学(GWU)の研究チームは、2019年に米国で麻疹が流行した際、約1億人のフェイスブックユーザーを対象に、ワクチンにまつわる議論を追跡し、ワクチンに関する科学的な専門知識への不信がオンライン上でどのように進展していくのかをマップで可視化した。一連の研究成果は、2020年5月13日に学術雑誌「ネイチャー」で発表されている。 これによると、ワクチン反対派のコミュニティは、現時点で判断を保留している人々に、より効果的にリーチし、この層をうまく取り込んでいることがわかった。研究チームは、ワクチン反対派の意見が、この先10年にわたって、オンライン上での議論を支配する可能性があるとみており、近い将来、新型コロナウイルス感染症に対する予防接種にも影響を及ぼすおそれがあると懸念している。 研究チームは、一連の追跡で、ワクチン賛成派、ワクチン反対派、判断を保留しているコミュニティの3つの陣営を特定。ワクチン反対派の人はワクチン賛成派より少ないものの、そのコミュニティの数は、ワクチン賛成派の約3倍にのぼり、判断を保留しているコミュニティをより積極的に巻き込んでいる。ワクチン賛成派のコミュニティは、規模の大きいワクチン反対派のコミュニティにのみ対抗しており、その裏で、中規模のコミュニティが発展していることもわかった。 ワクチン賛成派のコミュニティは予防接種の公衆衛生上の利点にフォーカスした主張の発信に終始する一方、ワクチン反対派のコミュニティは、ワクチンやその他の確立された医療に対して、安全性への懸念、個人の選択の尊重、陰謀論など、より多様な視点から主張を展開している。 判断を保留している人々は、けして受動的な傍観者ではなく、ワクチンにまつわる情報に積極的に関与している。ワクチン反対派のコミュニティは、この層に様々なアプローチで語りかけることで、その判断に影響を与える確率を高めているわけだ。 フェイスブック上ではワクチン支持者(青)が反ワクチン派(赤)を上回るが、反対派は3倍近くのコミュニティを持っていて、これらの意見が未決定者(緑)に届きやすくなっていた。2019年の麻疹発生時には、反ワクチングループが300パーセント以上の成長を遂げていることがわかった。Neil F. Johnson (2020), Nature ネット上の『主戦場』を特定し、無力化させる フェイスブックなどのソーシャルメディアは、ときに、情報を増幅させたり、均一化させることがある。それゆえ、ソーシャルメディア上での健康にまつわるデマや誤報の拡散は、公衆衛生に重要な影響を及ぼす。 研究チームでは、オンライン上でのデマの拡散への対処法として、個々のコミュニティを多様化させることで過激化を遅らせ、発展を抑制させたり、コミュニティ間のつながりを操作して、否定的な意見の拡散を防止するといった方策を勧めている。 研究論文の筆頭著者であるジョージワシントン大学のニール・ジョンソン教授は「政府や公衆衛生当局、ソーシャルメディアの運営者は、デマを生み出し、消費するコミュニティに『モグラたたき』のように対処するのではなく、我々が作成したようなマップを用いてオンライン上の『主戦場』を特定したうえで、公衆衛生に有害なデマを広めるコミュニティに関与し、これを無力化させる必要がある」と説いている。