<従来のワクチンよりも迅速に開発・製造ができるRNAワクチンが臨床試験第一段階で好結果、うまくいけば2012年にも完成か> COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のワクチン開発を進めている米バイオ医薬企業のモデルナは5月18日、初期段階の治験で、被験者45人全員に同ウイルスの抗体ができたことを明らかにした。近いうちに安全かつ効果的なワクチンが入手可能になるかもしれないと期待が高まっている。 同社はCOVID-19のワクチン候補「mRNA-1273」の開発を進めている。今回の治験は3月と4月に実施され、18歳から55歳の男女45人が参加した。 第一段階の治験はワシントン州シアトルにあるカイザーパーマネンテ・ワシントンヘルス研究所で行われ、被験者たちは28日間隔で2回にわたってワクチンの投与を受けた。 CNBCの報道によれば、2回目のワクチン投与から約2週間後の治験43日目で、被験者全員が新型コロナウイルスの感染後に回復した人と同程度の抗体を獲得していることが分かった。また少なくとも8人については、ウイルスの増殖を予防する「中和抗体」が確認できたという。 モデルナの最高医療責任者タル・ザクス博士は声明を出し、「今回得られたデータは、mRNA-1273には新型コロナウイルスの感染を防ぐ潜在的可能性があることを実証するものだ」と述べた。投与量が多いほど多くの抗体が作られる傾向にあり、第2段階の治験では投与量を倍にするという。 現在、モデルナをはじめとする5つの製薬会社がCOVID-19のワクチン開発を進めている。 早ければ2021年にも実用化の可能性 5月はじめには、米製薬会社ギリアド・サイエンシズが開発したレムデシビルがCOVID-19の治療薬として緊急使用を許可されたことが大きく報じられた。だがレムデシビルは実験的な薬で、COVID-19の安全で効果的な治療薬とは考えられておらず、さらなる臨床研究を行う必要がある。 ほかにも、フランスの製薬会社サノフィが開発した抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンなどが、COVID-19の治療薬候補に挙げられている。米食品医薬品局(FDA)は同薬について、COVID-19の入院患者を対象に緊急使用を許可しているが、ヒドロキシクロロキンが治療薬として効果的かどうかは分かっておらず、使用はまだ実験段階にある。 モデルナは1月から米国立衛生研究所と緊密に協力して、マウスを使ったワクチンの開発および試験を行っており、3月に入ってからヒトでの治験に移行した。 一般にワクチンの安全性が確認されるまでには何年もの治験が必要で、米国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長をはじめとする一部の科学者は、ワクチンが秋までに完成することはないだろうとの見方を示している。 だが、もしモデルナの今後の治験でも良い結果が続けば、2021年までに安全で効果的なワクチンを実用化することは可能かもしれない。 同社は5月に入って既に、第2段階の治験に進むための承認を得ている。FDAは、モデルナのワクチンをファストトラック(優先承認審査)対象に指定した。 ===== 「(mRNA-1273が)ファストトラック対象に指定されたことは、新型コロナウイルス感染症のワクチンの必要性が差し迫っていることを示している」とザクスは語った。 ほかにもオックスフォード大学、ファイザー、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ギリアド・サイエンシズ、サノフィ、ノヴァヴァックスやグラクソ・スミスクラインなどの研究者たちが、COVID-19のワクチン開発に携わっている。 だがヒトを対象にした治験の実施を認められているのは、モデルナを含む7社のみ。これらの企業の多くが、化学合成が可能でより迅速に開発・製造が可能なRNAワクチンを製造したか、製造過程の段階にある。 体の免疫システムがウイルスを認識し、それに抵抗できるようにする通常のワクチンと異なり、RNAワクチンは体内の細胞に特定の病原体の一部を生成させ、それに対する抗体を獲得させようとするもの。比較的容易に安全性の高いワクチンが作ることができる。 ドナルド・トランプ米大統領は5月3日、アメリカで2021年までに新型コロナウイルスのワクチンが開発されると確信していると発言。「近い将来、ワクチンが手に入ると思う」と述べた。 米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によれば、新型コロナウイルスではこれまでに世界で470万人が感染。170万人が回復し、31万6000人近くが死亡している。 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年5月19日号(5月12日発売)は「リモートワークの理想と現実」特集。快適性・安全性・効率性を高める方法は? 新型コロナで実現した「理想の働き方」はこのまま一気に普及するのか? 在宅勤務「先進国」アメリカからの最新報告。