<オーストラリア国立大学(ANU)の研究チームは、49カ国を対象に、2018年10月から2019年1月に、体調と出勤状態をアンケート調査した結果をまとめた> 世界49カ国を対象とした国際的なアンケート調査によると、回答者の9割以上が、インフルエンザが疑われる軽い症状がありながら出勤した経験を持つことが明らかとなった。 医療従事者の6割は、発熱や悪寒、頭痛でも出勤 オーストラリア国立大学(ANU)の研究チームは、欧米、アジア、アフリカの49カ国533名を対象に、2018年10月から2019年1月にかけて無記名によるウェブサイトでのアンケート調査を実施し、2020年5月13日、その結果をまとめた研究論文をオープンアクセスジャーナル「プロスワン」で発表した。 アンケート調査の回答者のうち、46.7%にあたる249名が医療従事者で、53.2%が非医療従事者であった。医療従事者の99.2%、非医療従事者の96.5%が「喉の痛みや咳、くしゃみ、鼻づまり、倦怠感、食欲不振など、インフルエンザの軽い症状があっても出勤した」と回答。医療従事者の58.5%は、発熱や悪寒、頭痛、筋肉痛など、インフルエンザの主な症状が出ても、出勤し続けたという。 研究論文の共同著者であるオーストラリア国立大学のピーター・コリニョン教授は、「この調査結果は、医療の最前線に立つ医療従事者を含め、非常に多くの人々が病気になっても出勤していることを示している」とし、「これは、コロナウイルス感染拡大前であってもけして好ましいことではない。当然ながら、コロナウイルスの感染が世界的に拡大する現在においては、体調が悪いときは出勤しないことがより重要だ」と説いている。 体調不良のときは出勤しないことこそ、万人のためになる 研究論文では、その背景として、職場の風土や個人の意識はもとより、人手不足、有給の病気休暇制度の不備など、様々な要因によって、体調不良でも出勤する「プレゼンティズム(疾病就業)」が促されていると指摘している。 とりわけ医療従事者は、インフルエンザの症状がありながら勤務を続けることで、同僚や患者に感染を広げてしまうおそれがあるのみならず、疲労に伴う判断力の低下などによって医療過誤を引き起こすリスクも高まる。コリニョン教授は「医師や看護師は『他者を助けるために出勤しなければならない』と感じているのかもしれないが、体調不良のときは出勤しないことこそ、万人のためになる」と呼びかけている。 医療従事者が体調不良でも勤務を続けていることは、米国の医療従事者を対象としたアンケート調査でも示されている。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が2014年から2015年までのインフルエンザ流行期に米国の医療従事者1914名に実施したアンケート調査では、インフルエンザに罹患した医療従事者のうち41.4%が「インフルエンザに罹りながらも勤務を続けた」と回答している。