<ドイツやアメリカで、食肉加工工場で新型コロナウイルスの集団感染が起きている。これらの工場で働くのは多くは移民労働者たちだ......> ドイツやアメリカで、食肉加工工場が新型コロナ感染のホットスポットになっている。ドイツでは5月の2週間に4つの工場でクラスターが発生、数百人規模の新規感染者を出した。アメリカでは、ホワイトハウス自体が10郡をホットスポットと認定したにもかかわらず、うち6郡の食肉加工工場に対し、操業を続けるよう大統領令が出された。 これらの工場で働くのはたいてい移民労働者たちだ。「安い肉」への飽くなき需要のせいで、社会は彼らの置かれた劣悪な環境に見て見ぬふりをしていると、各方面から批判の声があがっている。 ドイツはようやく法改正 ドイツの食肉加工工場で働くのは、おもにルーマニア、ポーランド、ブルガリアなど東南欧からの移民や出稼ぎ労働者だ。彼らの置かれた劣悪な労働・住宅環境に対し改善を求める声は以前からあったが、行政はなかなか動かなかった。これらの労働者のほとんどは下請けの仲介業者が雇用主で、労働者の管理はこの仲介業者の手に委ねられているからだ。労働者たちは老朽化した不潔な寮に詰め込まれることも珍しくなく、こうした環境がクラスター発生へとつながっていった。 このような状況を改善するため、ドイツ政府は20 日、食肉産業に対する新規制の枠組みに合意。ドイツ通信社によると、2021年1月より、屠殺と加工は食肉加工工場の直接の従業員のみに限られるという。これにより、来年から仲介業者からの派遣労働者は禁じられる(ただし、個人の精肉店はこの限りではない)。労働時間規則違反の罰金は現在の1万5千ユーロから3万ユーロに引き上げられ、また10時間以上の連続勤務とならないよう管理システムが強化される。さらに、住宅を提供する雇用主は当局に移民たちの居住地に関する情報を提供することが義務付けられる。 これらの改正により、食肉の価格があがることも当然予測される。DWはオピニオンで「ドイツ人は肉により多く支払うことに慣れるべきである」とし、「多くのドイツ人がソーセージやバーベキューを愛し、ヨーロッパでもっとも豊かな国で暮らしているにもかかわらず、食品にかける金は概して低く、最低価格で提供しようと競争するディスカウントスーパーに慣れきってしまっている」と述べている。 ドイツのディスカウントスーパーは強大だ。筆者がドイツで気に入っていることの1つが、肉屋で肉が買えることなのだが、最近はソーセージなどの加工品しか置かない店も増えているようだ。個人経営のパン屋もほとんど見なくなった。ドイツの大手スーパーが扱う野菜や果物はほとんどが南スペインと南イタリアから来ており、こちらでもドイツでの価格競争が収穫人の劣悪な労働環境の一因となっているとかねてから指摘されている。 ===== しかしながら先週、ディスカウントスーパー大手のAldiは、原材料の豚肉の価格低下を理由に、食肉業界にサラミやソーセージなどの加工品の値下げを要求した(シュピーゲル)。コロナ危機のなか供給を確保しようと業界が努力し、また政府が労働環境を改善しようとするタイミングでのこの要求に、「完全に思慮を欠いている」と、不快感や批判の声が向けられている。 肉食をやめることが地球温暖化のブレーキに アメリカでも、アイオワ州の工場で2800人の従業員の半数近くが感染するなど、食肉加工工場でのクラスター発生は深刻だ。閉鎖した工場では家畜が余剰となり、安楽死を余儀なくされている。また、そのほとんどが移民である労働者たちは失業を恐れ、体調が悪くても出勤を続けがちだ。「安い肉」を手に入れるために労働者たちの置かれた環境に目を背けるという構図はここでも同じだ。 ドイツ同様、肉料理はアメリカに欠かせないだろう。少しでも安い肉への需要も大きい。が、アメリカでは価格よりも、肉食という習慣そのものに対し見直しの声が上がっているようだ。 気候変動に対する非営利組織ドローダウンによると、植物ベースの食事をすることは「地球温暖化を元に戻すために誰もができる最も重要な貢献」だという。 とくに効果的なのは、牛肉食を減らすことだ。牛は食品産業のなかで最も炭素を多く消費する部分で、農業排出の62%は牛の飼育が原因だ。もし牛が「国」だったなら、それは世界で3番目に大きな温室効果ガス排出国に相当するという(ワシントン・ポスト)。 反芻動物である牛のゲップには多量のメタンガスが含まれ、牛肉はタンパク質1gあたり鶏肉や豚肉の約2倍、豆の約20倍の土地を必要とする。また、2018年の調査によると、約1240万エーカーの森林(イエローストーン国立公園5つ以上に相当)が毎年、農産業のために伐採されている。地球上の氷のない土地の30%が家畜の牧草地として使用されている。 ヨーロッパ同様、アメリカでも若者たちのあいだでベジタリアンやヴィーガンが増えているというが、多くの人にとって長く慣れ親しんだ肉食を急にやめるのはむずかしいだろう。だが、誰もが牛肉を食べる回数を少し減らすだけでも、多少の効果はあるかもしれない。 さらに、Covid-19を含めいくつかのパンデミックがウェットマーケット(おもにアジアの生鮮市場)やバードマーケットから発生していること、アメリカ疾病予防管理センター(C.D.C. )が新しく発生した4つの感染症のうち3つが人畜共通感染症であると指摘していることなどから、肉に対する恐怖感も広まっている。 皮肉なことに、ロックダウンにより大気汚染や水質が改善された。今度は食習慣の見直しをするときかもしれない。 ===== COVID-19 causes pork shortage, unlike anything meat industry, has ever seen