<穀物輸出の調整は国内供給の安定化のためとしているが、影響力を強めたい国々は制限対象外にするなどロシアの政治的野心が潜む> 世界有数の穀物輸出国であるロシアが4月下旬、小麦やライ麦、トウモロコシといった穀物や大豆、食用油の輸出を6月末まで停止すると発表した。新型コロナウイルスの大流行による食料供給網への影響が懸念されるなか、この決定は世界の食卓に大きな影響を及ぼしかねない。 とりわけ懸念されるのが、小麦や食用油の輸入量が多いEU諸国だ。コロナ禍による深刻な不況が予想されるなかでロシアからの輸入が滞れば、EUの食の安全保障にとって大打撃となる。 ロシア当局は国内の供給を安定化させるための措置と説明しているが、理由はそれだけではないと勘繰る声もある。実際、ロシアは南スーダンやサウジアラビアなど自国の影響力を強めたい国々を、輸出制限の対象から外している。 また昨年には、OPEC(石油輸出国機構)の「穀物版」を設立する構想も提案。世界的な食糧供給網を政治利用する試みではないかと批判されている。 <本誌2020年6月2日号掲載> 【参考記事】パンデミックの次は食糧危機の懸念──国境封鎖と食品サプライチェーン崩壊で 【参考記事】感染爆発中のロシアで地殻変動? コロナ対応でプーチン支持急落 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年6月2日号(5月25日発売)は「コロナ不況に勝つ 最新ミクロ経済学」特集。行動経済学、オークション、ゲーム理論、ダイナミック・プライシング......生活と資産を守る経済学。不況、品不足、雇用不安はこう乗り切れ。