<夫婦で分担したり、高校生なら自分で作るのも一策だが、実際には弁当作りは母親のワンオペになっている> 日本人の睡眠時間が短いのはよく知られている。外国の人からは「仕事時間が長いからだろう」と思われているようだが、実は寝不足なのは女性のほうだ。 2016年のデータで15歳以上の睡眠時間の中央値を出すと、男性は385分、女性は378分となる(厚労省『国民生活基礎調査』)。年齢層別にみるとアラフィフ年代に谷があり、45〜54歳の女性では356分と6時間を割り、7人に1人が5時間未満となっている。「働くママ、3時間睡眠の厳しすぎる現実」(FRaU、2020年2月13日)という記事が話題になったが、オーバーな話でもなさそうだ。 地域差もあり、寝不足地域に色をつけた全国地図にしてみるとジェンダーの差がはっきりする。 アラフィフの睡眠時間中央値が6時間未満の都道府県だが、男性は6なのに対し、女性は32もある。男性は通勤時間が長い都市部だけだが、女性は多くの地域が寝不足色で染まっている。埼玉県のアラフィフ女性の睡眠時間は351分(5時間51分)しかない。「3時間睡眠」も結構いそうだ。 この年代は様々な役割がのしかかるステージで、最近は晩産化の影響で、育児と介護の「ダブルケア」を担っている。言わずもがな、こうした負担は女性に偏っていて、それが睡眠時間の性差となって表れている。 ===== もっと具体的に言うと、早朝の弁当作りが大きい。これは、子育て経験のある女性なら誰もが頷くところだろう。中学校までは給食があるが、高校はそうではない。部活の朝練、果ては遠距離通学で子どもが家を早く出るとなったら、朝5時起きで弁当をせっせと作らなければならない。 その実態はデータで可視化できる。子どもがいる男女を、末子の発達段階で4つのグループに分け、5~6時台の時間帯別(15分刻み)の家事実施率をグラフにすると<図2>のようになる。 女性を見ると、子どもが大きくなるにつれ、早く起きて家事をする人の比率が高くなる。末子が高校生のグループで見ると、5時半で3割、6時で半分近くが起きて家事をしている。弁当作りや朝食の支度だろう。 男性はと言うと、4本の折れ線は寝そべったままだ。子どもが中学、高校に上がろうが変化はない。夫が寝ているかたわら、妻だけが早起きを強いられている光景がグラフの形に表れている。夫婦の「早朝格差」だ。 日ごとにローテーションをする家庭もあるだろう。高校生にもなれば、子どもに作らせるのも一つの策だ。しかしこういう家庭はほとんどなく、高校生男女とその父母の早朝の家事実施率を見ると、母親以外はほぼゼロだ。実態は母親のワンオペといっていい。 「家事分担を見直せ」という提言で済む話でもない。高校では給食はないが、学食や購買部はある。費用を安価にし、利用しやすくすることはできる。弁当の日が週1~2日になれば負担はだいぶ軽くなる。 弁当に手抜きができないのもつらい。今はSNSで弁当の出来映えを競うようなことが流行っていて、簡素な弁当は持っていきにくいようにすらなっている。子どもは減っているのに、弁当プレッシャーは増している。 諸外国の弁当は非常に簡素だ。「世界の弁当」というワードで検索をすると、目が点になるような画像がたくさん出てくる。だが外国の人にすれば、日本の弁当のほうが奇異に映るだろう。「これを毎日作るのか」と。 料理に求められるレベルが高いのは、性別役割分業で社会が築かれてきた経緯があるためだ(拙稿「家庭料理に求めるレベルが高すぎて、夫の家事分担が進まない日本」本サイト、2019年4月17日)。だが時代は変わっている。外注したり、手を抜いてもいい。 <資料:厚労省『国民生活基礎調査』(2016年)、 総務省『社会生活基本調査』(2016年)> =====