<制限解除が進むも経済は戦後最悪に──支援が得られないなか、国内の右派勢力が離脱志向を加速させている> ロックダウン(都市封鎖)開始から2カ月以上。新型コロナウイルスによる死者が3万2000人を超えるイタリアが、ようやく「完全再開」に向かい始めた。 マスク着用などの規定は今夏末まで継続されるが、6月3日から出入国禁止措置が解除され、国内の移動規制も緩和。既にレストランや理髪店は再オープンし、近くジムやプールも営業再開する。 5月16日、一連の緩和措置を発表したジュゼッペ・コンテ首相は引き続き警戒を呼び掛けつつ、これまでの取り組みをたたえた。「ワクチンができるまで待ってはいられない」。今回の決定について、コンテはそう主張している。 国民が再開を心待ちにする一方で、イタリアは第2次大戦以来、最悪の景気後退のさなかにある。南部が依存する観光業は先行きが暗い。今後数カ月以内に新型コロナウイルスが再流行する懸念があるなか、ソーシャルディスタンス(社会的距離)戦略や移動制限で、工業地域の北部の生産が落ち込む可能性も高い。 痛手を負った企業や世帯を救済すべく、政府は5月13日に550億ユーロ規模の追加の景気刺激策を承認した。 「反独・親中」が広がる 今回の刺激策は連立政権内での合意に長い時間がかかり、ぐずぐずしているうちにマフィアの違法融資が復活しかねないと懸念する声も上がっていた。待望の決定だが、エコノミストらに言わせれば、それでも十分な額ではない。 さらに、パートナー国であるEU各国の支援の動きは鈍い。イタリア国民の間では今、欧州内の他国に見捨てられたという感情が広がっている。 「ヨーロッパへの考えが少し変化した」。ローマ在住の不動産業者マルコ・トンド(34)はBBCの取材にそう発言している。「極度の緊急事態に直面しているのに、各国が背を向け合うなんて」 最近の世論調査では、イタリアのEU離脱を望む人の割合が20ポイント増加。EUを無意味な存在とみる人は59%に上り、回答者の半数近くがドイツは敵で、中国が同盟国だと考えていた。 イタリアは今もEU内第3位の経済国だ。とはいえGDPの落ち込みや今後数年間の経済観測をめぐる懸念、パンデミックへのEU同盟国の対応を受けて、EU懐疑主義が加速しかねない。 ===== コンテは、同じく新型コロナウイルスによる打撃が深刻なスペインと共に、ユーロ共同債である「コロナ債」の発行が必要だと訴えたが、ドイツやオランダの反対で道が閉ざされている。経済規模が域内最大のドイツと2位のフランスはマスクや手袋の輸出を制限し、対イタリア国境を封鎖する国も現れた。 イタリア各地の右派勢力は国民の反EU感情に付け込もうとしている。分離主義を推し進めているのが「欧州のトランプ」こと、マッテオ・サルビニ前副首相だ。 「これは『連合』ではない」。サルビニは3月27日、EUについて発言した。「ヘビとジャッカルの巣窟だ。まずはウイルスを打ち負かし、それから欧州について考え直そう」 そしてこう続けた。「都合次第で、私たちは別れを告げる。感謝の言葉も言わずに」 <本誌2020年6月2日号掲載> 【参考記事】イタリア首相「夏にはすてきな休暇が待っている」 【参考記事】「世界は中国に感謝すべき!」中国が振りかざす謎の中国式論理 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年6月2日号(5月25日発売)は「コロナ不況に勝つ 最新ミクロ経済学」特集。行動経済学、オークション、ゲーム理論、ダイナミック・プライシング......生活と資産を守る経済学。不況、品不足、雇用不安はこう乗り切れ。