<コロナ感染症対策の移動制限も徐々に緩和されてきたが、密閉された機内で多くの乗客と過ごす航空機の旅は危険? 空調や座席の工夫でリスクは減ると関係諸団体はアドバイスする> 新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界中の航空産業は翼をもぎとられた状態だ。世界各国で都市封鎖が実施され、実質的に旅行が不可能になっている。 アメリカの運輸保安局(TSA)の最新の統計によると、祝日である5月25日の旅客数は、昨年同日と比べて約86%減少した。 現在は世界各国で外出や渡航の禁止など厳しい感染対策の緩和が進み、航空会社は乗客の増加に備えている。だが、数百人が一緒に移動する可能性がある空の旅は、ウイルス感染のリスクと隣り合わせだ。新型コロナウイルスがいまだ猛威を振るうなか、航空機を安全に利用することはできるのだろうか。 オフィスよりマシ 国際航空運送協会(IATA)によれば、航空機の機内で感染症にかかるリスクは概して、ショッピングセンターやオフィスよりも低い。 米疾病対策センター(CDC)はそのウイルス対策のガイドラインのなかで、こう述べている。 「ほとんどの場合、ウイルスや細菌が飛行中の機内で拡散することはない。機内の空気は濾過され、循環しているからだ。ただし、混雑した便では社会的な距離を保つことが難しく、数時間も他の乗客に接近して過ごさなければならないことがある。これによって感染する可能性はある」 「飛行機で移動する場合には、手荷物検査で列を作ったり、空港ターミナルで待機したりすることがある。このときに、他の人と接触したり、何かの表面に触れることも頻繁にあるので注意が必要だ」と、CDCは付け加える。 世界保健機関(WHO)はこうアドバイスする。 「これまでの研究で、航空機内で感染症がうつる危険はほとんどないことがわかっている。機内の空気は注意深く管理されている。換気により機内の空気は1時間に20~30回入れ替わっている」 「最新型の航空機はたいていの場合、客室の空気の最大50%を再循環させるシステムを備えている。再循環の際に、病院の手術室や集中治療室で使われているような高性能のフィルタが、空気中の埃だけでなく、バクテリアや細菌、真菌、ウイルスも取り除く」 <参考記事>新型コロナ、客室内の「空気」は安全? 航空業界に新たな課題 <参考記事>こんなエコノミーは嫌だ! 合理的すぎる座席で、機内はまるで満員電車? ===== 国際航空運送協会(IATA)によれば、「新型コロナウイルスの機内感染に関して公表された研究はほとんどない」が、最近の調査で、機内での感染率はきわめて低いことが報告されているという。 「機内での感染率が低い理由は不明だが、乗客が対面で接触する機会がないこと、座席の背もたれが物理的障壁になっていること、客室の換気システムが進んでいることなどの条件が組み合わさった結果ではないかと思われる」と、IATAの医療アドバイザリーグループは25日に発表された報告書でそう述べた。 だが、2020年3月2日には、ベトナムで1人の乗客から14人の乗客と客室乗務員に感染したとみられる事例が報告されている。14人のうち12人は感染源らしき乗客の近くに座っていた。 「この情報はあくまでも調査の初期段階のもので、いずれ正式な調査が期待される」と、IATAは説明する。「我々が知る限り、これは機内における複数の乗客乗員への感染拡大が疑われる唯一のケースだ」 IATAはこれとは別に、1月から3月にかけて、主要航空会社18社に聞き取り調査を行った。機内での感染が疑われるケースは3件で、いずれも乗客から乗務員への感染だった。 IATAの調査によれば、全世界の旅客輸送の半分を扱う航空会社70社に対する調査でも、乗客から乗客への感染が疑われるケースは特定できなかったという。 地域の公衆衛生当局と密接に連絡を取り合っていた航空会社4社の全フライト(乗客総数約12万5,000人)を詳細に分析したところ、乗客の二次感染が疑われるケース1例と、機内感染が疑われる乗務員の感染2例があった、とIATAは報告している。 一番安全な座席はどこ? 航空機の座席構成によっては、飛行中の機内で社会的距離を保つことはむずかしくなる。窓側の座席であれば片側が壁になるので、社会的距離がとりやすい。それでももちろん、ものの表面についたウイルスには注意する必要がある。 WHOのアドバイスによれば、「座席が近い乗客の間でウイルス感染が起きる可能性はある。主な原因は、感染した個人の咳やくしゃみ、または接触だ。電車やバスの中、劇場内などと変わらない」。 今月、米下院運輸委員会のピーター・ディファジオ委員長は、アメリカ最大の航空産業団体に送った書簡のなかで、全航空会社に対し、3列席のまんなかの席を空席にするよう求め、航空会社の経営よりも乗客の健康と安全を優先すべきだと念を押した。 デルタ航空やアラスカ航空など一部の航空会社は、機内の3列席の中央席の予約を一時的に停止した。アメリカン航空も中央席の50%を空けた状態で運行しているという。ジェットブルーは、乗客に割り当てる席を全座席の約3分の1にしているという。 デンバーに本拠を置くフロンティア航空は、39ドルの追加料金で隣の座席を空席にすることができるオプションを提供すると発表した。 要するに、パンデミック進行中に航空機を利用する場合は、人が密集する場所と同じ一般的な感染防止対策を心がければいい。 「旅行中に病気にかかるリスクをさらに軽減する簡単な方法がある。そのひとつは、石鹸またはアルコールベースの消毒液で、定期的に手を洗うこと。そして、指で顔、特に目と鼻と口に触れないようにすること」と、IAGAは助言する。 (翻訳:栗原紀子) ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年6月2日号(5月25日発売)は「コロナ不況に勝つ 最新ミクロ経済学」特集。行動経済学、オークション、ゲーム理論、ダイナミック・プライシング......生活と資産を守る経済学。不況、品不足、雇用不安はこう乗り切れ。