<6月1日、デモが始まって6日目にやっと国民の前に姿を表したトランプは、「必要なら米軍投入」すると言った> アメリカでは、白人警察官の暴行による黒人男性死亡事件への抗議デモが全土に拡大し、40以上の州や都市で夜間外出禁止令が敷かれ、15の州とコロンビア特別区で州兵が動員された。動員数は、市民の暴動鎮圧目的の作戦ではこの30年あまりで最も多い7000人超で、6月1日の夜までにはこの倍に増える見通しだ。 連邦政府はこれに加えて、警察官や(FBIと国土安全保障省の)諜報当局者にも、各州や自治体を支援するよう指示している。 全米に広がる抗議活動、警官とデモ隊の衝突もエスカレート The Telegraph-YouTube 鎮圧作戦を担当する米北方軍(NORTHCOM)のある高官(匿名)は本誌の取材に対し、「新型コロナウイルスの感染拡大危機への対応がようやく落ち着いてきたところで、突然慌ただしくなった」と語った。 「3カ月の激務で州兵たちは疲弊している。彼らのストレスに対処しなければならないだけでなく、我々の任務に強引に割り込んでくる州知事や市長、連邦機関にも対応しなければならないのは酷だ」 地元の警察を支援する目的で、一度に10を超える州に州兵を動員するなど初めてのことだと彼は指摘する。連邦軍も、ホワイトハウスの要請があれば出動する準備はできているという。「大統領がどんな命令を下すか次第だ。それによって状況は大きく変わる」と彼は言う。 <参考記事>ミネアポリスの抗議デモが暴動に......略奪から店舗を守ろうと武装市民が警護 既に憲兵2400人に準備命令 NORTHCOMには、市民の暴動鎮圧を目的とした「作戦計画3502」と呼ばれる緊急時対応計画がある。何百ページにも及ぶ作戦計画には、民間人による騒乱が発生した際に、軍が当局を支援する上での職務内容が詳しく説明されている。それによれば、民間人による騒乱(反乱、暴力行為、違法な妨害や集団での暴力行為、法と秩序を守る上で有害な行為など)について、大統領が「州当局や地方当局の対応では治安回復ができない」と判断した場合には、米軍の武力を使うことも許可されている。 Who is this serving?Who is this protecting? pic.twitter.com/IK8DkwLLUT— jordan (@JordanUhl) May 31, 2020 丸腰のデモ隊に暴力を振るう警官も 前述のNORTHCOMの高官は、国防総省から米国内の4つの基地(コロラド州フォートカーソン、カンザス州フォートライリー、ニューヨーク州フォートドラムとノースカロライナ州フォートブラグ)に配属されている約2400人の憲兵に準備命令が出たと語る。5月29日の午後以降は、いつでも4時間以内に出動できる準備をしておけ、という命令だ。 <参考記事>警官と市民の間に根深い不信が横たわるアメリカ社会の絶望 ===== White House, June 1st2015: Lit up with rainbow lights to celebrate Pride month2020: External lights turned off in fear of nearby protesters pic.twitter.com/jrkA5gUaNA— Sean Bonner Ⓥ (@seanbonner) June 1, 2020 プライド月間の6月、2015年(オバマ大統領時代)に虹色にライトアップされたホワイトハウスだが トランプは、デモ開始当初から、米軍を使うことを考えていたようだ。5月28日、黒人男性が警官による暴行の後に死亡し、デモの発火点となったミネソタ州のティム・ウォルツ知事が州兵の動員を決定すると、トランプは「米軍は常に全面的に支援する」とウォルツに言ったとツイートしている。暴力賛美だとしてツイッター社が警告と付けて有名になったフレーズも、この投稿にあった。「われわれは事態を掌握するだろうが、略奪が始まったら発砲が始まる」 州兵の動員にあたってウォルツは、州兵は「警察ではない」と強調した。だがミネソタ州兵の司令官であるジョン・ジェンセン少将は、州兵たちはFBIから「確かな脅威を示す情報」を得ており、武装していると語った。ジェンセンは、武装した州兵たちに法の執行権限がある訳ではないとしつつも、現場の司令官たちには「自衛権がある」と語った。 米国内での作戦に関する兵力使用規定(SRUF:機密扱い)によれば、「司令官には、敵対的な行為や意思表示を受けた場合、周辺の部隊も含め、危険に陥った部隊の自衛権を行使する権利と義務がある」とある。 国内での軍事力の行使は(各州知事の管轄下にある州兵であっても)一触即発の危険性を秘めているため、SRUFは海外での戦闘活動に適用される交戦規定(ROE)よりもずっと制約が厳しい。NORTHCOMの高官によれば、今回の暴動についてのSRUFと準備命令には、「武力は最後の手段としてのみ使用すること」と明記されている。 「反乱法」の発動なるか ウォルツ知事は5月30日までに、ミネソタの州兵1万3200人を総動員することを承認した。同日夜にはミネアポリスやセントポールの市街地に、催涙ガスなどが使われた場合に備えてガスマスクを着用した州兵たちが配備された。 30日夜までには、アリゾナ、カリフォルニア、ジョージア、インディアナ、ケンタッキー、ネバダ、オレゴン、テネシー、ユタなどの各州でも激しいデモが勃発。各州でさらなる州兵の動員が決定された。州兵たちはそのほぼ全ての州で、政府関連の建物を守りつつ「秩序を回復し、器物損壊をできる限り食い止める」任務を課されている。 5月31日朝までに、ミネソタの州兵は5025人が配置に就き、「すぐに1万800人まで増やしていく」予定だと発表。ジョージア州は3000人を動員する予定を明らかにした。 米国防総省は、現段階では各州から連邦軍の派遣について「要請」はないと主張している。だがもしトランプが、めったに使われたことのない1807年の反乱法を発動するか、州兵の司令官たちが危険を感じて自衛権を行使すれば、州知事の意向が通らなくなる可能性もある。 (翻訳:森美歩) ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年6月9日号(6月2日発売)は「検証:日本モデル」特集。新型コロナで日本のやり方は正しかったのか? 感染症の専門家と考えるパンデミック対策。特別寄稿 西浦博・北大教授:「8割おじさん」の数理モデル ===== 全米に広がる抗議活動、警官とデモ隊の衝突もエスカレート The Telegraph-YouTube