<自らの政治的利益のためにデモ隊の権利を蹂躙したトランプをこれ以上放置できない。多くの人命が失われてからでは手遅れだ> 6月1日、ホワイトハウス前の通りにいたデモ隊と野次馬に向けて、連邦警察の騎馬隊などが催涙ガスやゴム弾を放った。この通りを渡ったところにある聖公会教会を、ドナルド・トランプ米大統領が訪問する予定だったからだ。トランプはその後、前夜の抗議行動で放火の被害を受けたこの教会を訪問し、教会の前で聖書を手に写真撮影を行った。 白人警官による黒人男性の拘束死事件を受けて、全米各地で激しい抗議デモが展開され緊張が高まっている時期だけに、ホワイトハウス周辺には大勢の報道陣がいた。当時、デモ隊は平和的に抗議活動を行っていたと彼らは断言している。しかも警察が手荒な制圧を始めたのは、5月31日の夜の破壊行動を受けて首都に導入された夜間外出禁止令(午後7時以降)が発効する20分以上前のことだった。 ニューヨーク・タイムズ紙とCNNはいずれも、(言論の自由を定めた合衆国憲法修正第1条で保障された権利を行使していた)米市民へのこの「攻撃」は、トランプの画策だと主張。抗議デモが激化した先週末に、一度も公の場に姿を現すことなくホワイトハウスの地下壕に避難していたと、批判を浴びたことがその一因だと指摘した。 教会側は「小道具に使われた」と激怒 米聖公会教会ワシントン教区の主教はワシントン・ポスト紙に対し、トランプの教会訪問について事前に一切連絡を受けていなかったと述べ、教会が政治の「小道具」として使われたことに「激しい憤りを覚える」と語った。当時教会にいた牧師は、宗教問題を専門に扱う報道機関レリジョン・ニュース・サービスの記者に対して、トランプが来る前に警察官たちが排除した人々の中には、教会の外にいた複数の聖職者も含まれていたと語った。 自らの利益のために国民を力で排除する──これほど「アメリカ国民と合衆国憲法を守る」という大統領の責務に反する行為はない。こんな人間に我々の政府を率いる資格はない。 全ての民主党議員(そして共和党議員ながらトランプに批判的なミット・ロムニー)は、トランプを直ちに「大統領不適格者」だと強く訴えるべきだ。それが彼らの成すべき責務だ。 <参考記事>トランプが国民に銃を向ければアメリカは終わる <参考記事>【世論調査】アメリカ人の過半数が米軍による暴動鎮圧を支持 ===== アメリカには大統領を罷免できる仕組みがある。現在のシステムでは、議会下院で弾劾が可決された後、上院議員の3分の2が支持すれば大統領を罷免できる。つまり15人かそこらの共和党上院議員が、今後5カ月~6年、選挙に負ける覚悟で罷免を支持すればいいのだ。選挙で負けても、彼らには企業の重役の椅子や各種講演のチャンスが待っている。一方で、この状況でトランプが大統領の座にとどまることを許したそのほかの共和党上院議員たちは、自分たちもまた「不適格者」であることを認めることになる。 トランプは1日、教会前での写真撮影に先立ち、暴徒化した一部(ごく一部だ)のデモ参加者を「テロリスト」と呼び、彼らを制圧するために連邦軍の動員も辞さない考えを示した。この日の夜、首都ワシントンの上空には軍のヘリコプターが投入された。ヘリコプターは、その風圧で木が倒れるほどの超低空飛行を行った。これは戦争の際、軍がその力を見せつけて敵を威嚇する目的で行うもので、市民相手に行われるのはきわめて異例だ。マーク・エスパー国防長官は、抗議デモが続く各都市を「戦場」と称し、連邦軍が「支配」すべきだと発言した(その後、現時点での動員には反対と表明した)。 トランプがやることを傍観している余裕はもうない。今すぐトランプを大統領の座から降ろすべきだ。大勢の人の命が失われてからでは、手遅れだ。 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年6月9日号(6月2日発売)は「検証:日本モデル」特集。新型コロナで日本のやり方は正しかったのか? 感染症の専門家と考えるパンデミック対策。特別寄稿 西浦博・北大教授:「8割おじさん」の数理モデル