米中西部ミネソタ州ミネアポリス近郊で黒人のジョージ・フロイドさんが白人警官から首を圧迫され死亡した事件で、免職となった元警官4人が訴追された。一部の法律専門家によると、事件の様子を映した動画が証拠となって、殺人ほう助・扇動の疑いで訴追された3人に自己弁護の余地が生まれる可能性がある。 裁判所判事は4日、トゥー・タオ、トーマス・レーン、J・アレクサンダー・ケーンの3容疑者について、保釈金を1人最大100万ドルに設定した。3人は、第2級殺人容疑で訴追されたデレク・ショービン容疑者と一緒にいた元警官。ショービン容疑者が5月25日、拘束したフロイドさんの首を9分近くにわたって膝で押さえつける様子は、目撃者が撮影していた。 この動画を機に、警察の暴行に対して世界中で抗議の声が上がった。ロイターが取材した法律専門家7人によると、この動画は法廷で弁護の材料になる可能性もある。 人がほう助や扇動で訴追されるのは通常、積極的に犯罪を促したり直接関与したりした場合で、逃亡車の運転などがこれに当たる。 法律事務所、ガーバリニ・アンド・シャーの弁護士、カート・ワインマン氏は「今回のケースでは、警官らは職責上、仲間の警官を補助・保護する必要があった。起訴するには、(ショービン容疑者が)行き過ぎた力をかけていたことを彼らが知っていた、あるいは知っていたはずだと証明する必要がある」と言う。 法廷資料によると、タオ容疑者はショービン容疑者がフロイドさんの首に膝を乗せるのを見た後、群衆が近寄り過ぎないよう制するために向きを変えた。 ワインマン氏は、タオ容疑者が日頃訓練されている通り、群衆の制御に集中していたように見えると指摘。また、ショービン容疑者の力の強さを監視し損なったとしてタオ容疑者を起訴するのは、ハードルが高いだろうと述べた。 「警官にそれ(チームの警官への監視)を期待するのは、あらゆる本能や日頃の訓練に背いた行動を取れと求めることになる」──。 タオ、レーン、ケーンの3容疑者それぞれの弁護士からはコメント要請への返信が得られていない。3容疑者はショービン容疑者とともにミネアポリス警察を解雇された。 ミネアポリス警察組合のボブ・クロール組合長は1日、組合メンバーへの書簡で、容疑者4人は「適切な手続きを経ずに解雇された」とし、復職を目指して組合の弁護士と協力していることを明らかにした。 ===== ジョージ・フロイドを横向きにすべきと提案 法廷資料によると、元警官らはフロイドさんを拘束した後、彼を一瞬パトカーに乗せようと試みたが、彼は閉所恐怖症だと言って乗車を拒んだ。もみ合いの後、ショービン容疑者は手錠を掛けたフロイドさんを地面に引き倒した。 ショービン容疑者がフロイドさんの首に膝を乗せる間、レーン、ケーン両容疑者はフロイドさんを押さえつける手伝いをしたが、それでも2人、特にレーン容疑者には弁護の余地があると法律専門家は言う。 法廷資料によると、フロイドさんが押さえつけられた直後、レーン容疑者はショービン容疑者に対し、フロイドさんの体の向きを変えて横向きにすべきではないかと尋ねたが、答えは「ノー」だった。 レーン容疑者はまた、フロイドさんが精神錯乱状態の発作を起こしているのではないか心配だ、と口にしていた。 元ニューヨーク市殺人検察のポール・カラン氏は「レーン容疑者の起訴は最も難しいだろう。彼がフロイドさんの向きを変えるようショービン容疑者に少なくとも2回促し、フロイドさんを積極的に助けようとした、と弁護人は述べるだろうから」と話す。 レーン容疑者の弁護士は4日の法廷で、依頼人の容疑者は訓練で受けてきた命令に従っており「自らが成すべきだと考えたことは、全て行っていた」と述べた。 法廷資料によると、ケーン容疑者はフロイドさんの拘束中、彼の背中を押さえていた。法律専門家によると、同容疑者は拘束の最中に口を閉ざしていたこともあり、3人の中で弁護が最も難しいとみられる。 専門家によると、ケーン容疑者はショービン容疑者が首にかけていた力の強さに気付かず、手遅れになるまでフロイドさんの状態を見極められなかったと主張する可能性がある。 ケーン、レーンの2容疑者は比較的、ランクが下の警官であることが有利に働くかもしれない。 「彼らは、指揮系統に背きたくなかったと言うだろう」と弁護士のジョゼフ・フライドバーグ氏は話した。 (Tom Hals記者)[ロイター]Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます 【関連記事】 ・米政権のデモ弾圧を見た西欧諸国は、今度こそアメリカに対する幻想を捨てた ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・黒人男性ジョージ・フロイドの霊柩車に、警官がひざまずいて弔意を示す ・街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...   ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年6月16日号(6月9日発売)は「米中新冷戦2020」特集。新型コロナと香港問題で我慢の限界を超え、デカップリングへ向かう米中の危うい未来。PLUS パックンがマジメに超解説「黒人暴行死抗議デモの裏事情」