<感染拡大を防ぐのに、なぜ接触追跡が必要なのか。スマートフォンやアプリがどう役立つのか。「徹底するには医療従事者を大量に動員すべき」と、クリスタル・ワトソン助教は提唱する。本誌「コロナ時代の個人情報」特集より」> 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための行動制限を解除すれば、感染の第2波を引き起こすリスクが付いて回る。その結果、ロックダウン(都市封鎖)を解除しても、またすぐに再度のロックダウンを行う羽目になりかねない。 専門家によれば、それを避けるためのカギを握るのは接触追跡だという。新型コロナウイルスの検査で陽性反応を示した人がいれば、その人物が接触していた全ての人に連絡を取り、自己隔離を勧めるのだ。 徹底するには医療従事者を大量に動員すべきだと、米ジョンズ・ホプキンズ大学医療安全センターのクリスタル・ワトソン助教は提唱する。サイエンス担当のフレッド・グタールがワトソンに話を聞いた。 ――大規模な作戦を迅速に実行するためには、何が必要なのか。 アメリカの公衆衛生政策史上、前例のない取り組みを実行しなくてはならない。公衆衛生に携わる人を大幅に増やす必要がある。 エボラ出血熱の感染が拡大したとき、(西アフリカの)リベリアは約1000人を雇って接触追跡を行った。この活動が目覚ましい成果を上げ、国防省が仮設病院を設営したときには感染者がかなり減っていた。新型コロナウイルスでも、既に同様のことを実施している国がある。 ――具体的には、何を行うのか。 接触追跡の担当者が感染者に電話し、誰と接触していたかを尋ねる。そして、その人物の友人や家族、公共スペースで接触した可能性のある人たちにも連絡を取る。 ――テクノロジーが接触追跡の役に立つ可能性は? (スマートフォンやアプリなどの)テクノロジーは、感染者がスーパーマーケットに行ったときに、近くにいたかもしれない人たちを割り出すのに役立つ可能性がある。 ――プライバシーの問題についてはどう考えているか。 プライバシーを全面的に守りたいという気持ちは理解できるが、感染拡大を制御するには、現実に接触追跡に役立つアプリを用いなければ意味がない。公衆衛生機関は、これまでも極めて機密性の高い情報を使って接触追跡を行ってきた。こうした業務には慣れている。 ――有効な接触追跡を行うためには、1日にどれくらいの検査を行う必要があるのか。 少なくとも週当たり200万人に検査を行う必要があるだろう。ただし、地域ごとの感染状況の変化により、この数字も変わっていく。 ===== ――どれくらい早く、そのようなプログラムを始める必要があるのか。 いら立たしく感じていることがある。議会や連邦政府は特に、経済活動を再開し、仕事を失った人や中小企業を支援するためにできるだけ多くの資金を拠出したいという強い意欲を抱いている。そうしたことが大切なのは間違いない。けれども、経済活動に向けられる予算に比べると、公衆衛生や感染症対策に割り振られている予算はあまりに少ない。このような活動もしっかり行わなければ、大きな問題が起きると思う。 ――「大きな問題」とは? 検査と接触追跡と自宅隔離を行う体制も整えずに、制限なしに経済活動を再開すれば、再び大規模な感染拡大が起きるだろう。もしかすると、それは既に起きた感染流行よりもはるかに大規模なものになるかもしれない。 <2020年6月23日号「コロナ時代の個人情報」特集より> ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年6月23日号(6月16日発売)は「コロナ時代の個人情報」特集。各国で採用が進む「スマホで接触追跡・感染監視」システムの是非。第2波を防ぐため、プライバシーは諦めるべきなのか。コロナ危機はまだ終わっていない。