<平均年齢の若さやヒト・モノの動きの少なさから、脆弱な国々は新型コロナ危機を免れると楽観視されていたが、今や感染は拡大中> 新型コロナウイルス感染症の影響を免れている国はない。しかし、貧困、紛争、汚職、政府の機能不全に悩まされている「脆弱国家」は、とりわけ甚だしい影響を被っている場合がある。 脆弱国家は、感染症の流行に対処するために必要な要素を欠いている。その要素とは、大掛かりな対策を立案・実行する能力を持った政府、ルールを徹底させる警察力、感染者に資金と物資と医療ケアを提供するための体制などだ。 このような国では概して、医療体制の整備が遅れている。集中治療室の病床数は、ヨーロッパでは人口100万人当たり4000床なのに対し、アフリカの多くの国では5床にすぎない。 感染症対策を成功させるには、政府に対する国民の信頼も必要だ。しかし、内戦や汚職に悩まされている国の国民は、なかなか政府の指示に従おうとは思わないだろう。 経済的な打撃を跳ね返す上では、強力な民間経済も欠かせない。人々は生計を立てるために職が必要だし、収入を得られない人を助けるためには、政府が税収を得なくてはならないからだ。しかし、脆弱国家では(闇経済はともかく)強力な民間経済が育っていない場合が多い。 新型コロナウイルス危機の初期には、脆弱国家は深刻な事態を避けられるという楽観論もあった。平均年齢が若いことや、ほかの国々とのヒトやモノの流れが比較的少ないことが理由だ。 しかし、「国家脆弱性評議会」の共同議長を務める私たちの立場から言えば、楽観論どおりにはなっていない。最近、スーダン、南スーダン、ソマリア、イエメンでは、感染率と死亡率が中進国に匹敵する水準に達している。 世界規模の景気後退により、経済的打撃を受けやすい しかも、脆弱国家は豊かな国以上に、世界的な感染拡大による経済的打撃を受けやすい。中国などとの貿易が大幅に縮小し、国外在住者から祖国の家族への送金も激減した。世界規模の景気後退により、これらの国々の有力な収入源である石油などの1次産品の相場も落ち込んだ。財政赤字も膨らみ始めている。 飢餓のリスクを指摘する声も高まっている。脆弱国家は、食料の多くを輸入に依存しているからだ。 忘れてはならない。貧しい国の問題は、しばしば世界全体の問題になる。大量の移民もそうだったし、組織犯罪やテロの問題も全世界に波及した。 脆弱国家が目下の危機を乗り切り、厳しい状況全般に対処するために、私たちは以下の5つの提案をしたい。 <参考記事>「検査と隔離」もウイルス第2波は止められない 米専門家 ===== 第1は、迅速で簡便な方法で弱者保護を行うこと。そのために、対象者を絞り込むより、国民全員に給付を行うべき場合もあるだろう。遅滞なく給付を行うために、スマートフォンを活用してもいい。 第2は、国内の食料、特に主要作物の生産を増やすこと。 第3は、ワクチンが実用化されたとき、資金力の乏しい脆弱国家も入手できるように国際社会が配慮すること。感染症に関しては、全ての国が安全にならない限り、どの国も安全を得られない。 第4は、脆弱国家の企業に直接の支援を行うこと。特に、中小企業への支援が重要だ。 第5は、豊かな国々が脆弱国家を財政面で支援すること。巨額の債務を抱える国々は今、債権者に債務を返済するか、国民を救うかの二者択一になっている場合が多い。豊かな国々は、債務返済を猶予し、さらには全ての国が新型コロナウイルス対策の緊急資金を確保できるようにすべきだ。 新型コロナウイルスは、脆弱国家の傷を一層深めるだろう。それでも、世界が迅速に行動すれば、その悪影響を和らげられる。 ©Project Syndicate <本誌2020年6月30日号掲載> 【話題の記事】 ・スウェーデンの新型コロナ感染者数が1日最多に、死亡率も世界屈指 ・異例の猛暑でドイツの過激な「ヌーディズム」が全開 ・「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に ・街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら... ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年6月30日号(6月23日発売)は「中国マスク外交」特集。アメリカの隙を突いて世界で影響力を拡大。コロナ危機で焼け太りする中国の勝算と誤算は? 世界秩序の転換点になるのか?