<香港民主派が望んでいた国際社会からの助けはこなかった。中国で国家安全法が成立した今、身の危険もある彼らは民主化団体を脱退して身を隠した> 香港の著名な活動家たちが民主化運動を先導してきた団体を解散する決断を下した。これは、中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会が「香港国家安全維持法案」を可決したことを受けたものだ。高度な自治が与えられてきた香港で、中国政府の方針に異を唱える行為を実質的に違法とするものだ。 6月30日に解散を決めた「デモシスト(香港衆志)」は、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)、羅冠聡(ネイサン・ロー)、周庭(アグネス・チョウ)らによって2016年に結成された香港の代表的な民主化団体。国家安全維持法案が中国で可決された今、活動を継続すれば直ちに投獄され罰を受ける可能性がある。ウォン、ロー、チョウの3名はいずれも、中国政府の侵略には負けず、香港に完全な民主主義を実現する戦いを続けるというが、昨年から香港で大規模なデモを続けてきた民主化勢力を中国が強権で押さえつけ、遂に勝利を収めたのだ。 民主化団体から脱退 中国で香港国家安全維持法が成立した6月30日の夜、ウォンとチョウはそれぞれ、ツイッターでデモシストからの脱退を表明した。ウォンは、自分が身を隠す間、香港に残された最後の自由を守る役を国際社会に託した。チョウは「生きてさえいれば希望はある」と書いた。いずれも死すら覚悟した悲痛なメッセージだ。 I hereby declare withdrawing from Demosisto...If my voice will not be heard soon, I hope that the international community will continue to speak up for Hong Kong and step up concrete efforts to defend our last bit of freedom. pic.twitter.com/BIGD5tgriF— Joshua Wong 黃之鋒 (@joshuawongcf) June 30, 2020 私、周庭は、本日をもって、政治団体デモシストから脱退致します。これは重く、しかし、もう避けることができない決定です。絶望の中にあっても、いつもお互いのことを想い、私たちはもっと強く生きなければなりません。生きてさえいれば、希望があります。周庭2020年6月30日 pic.twitter.com/zEk2NwgU24— Agnes Chow 周庭 (@chowtingagnes) June 30, 2020 ウォン、ロー、チョウの3名は、2014年の民主化運動「雨傘運動」で注目を集めた。ウォンとローは民主化活動を理由に懲役刑を科されて収監され、残るチョウも2019年の政府に抗議するデモ活動の最中に逮捕された。3人とも、市民による直接選挙が行われている香港区議会の議員選挙への立候補を試みたが禁止された。 ウォンは、国家安全維持法が成立したことから、民主化運動活動家たちの身が危ないと警告した。ウォンは自身についても、10年間に及ぶ「政治犯としての収監」や、中国政府に身柄を引き渡されるおそれがあると述べた。「明日は誰にもわからない」と、ウォンは自らの「暗い運命」について記している。 【関連記事】「香港独立」の旗掲げた男を香港警察が逮捕 国家安全法違反で初 【関連記事】若者は資格なし? 英国民になれる香港人の条件とは ===== 「いまこのとき、世界各地の無数の人々が、香港を気にかけ、国家安全維持法のもとでの私個人の状況に対して注目していると確信している」とウォンは書いている。「私はこれからも、私の家である香港を守っていく。彼らが私を黙らせ、この地から消し去るまでは」 ローも、今後も戦い抜く意志を示した。「私が持つ力の限り、香港の民主主義と自由のために戦い続ける。友人たちよ、どうか気を強く持ってほしい。香港の人々はあきらめない」 チョウは、デモシストからの離脱は「避けられない決断」だったと心境を綴っている。チョウは民主活動家たちに対し、希望を失わないようにと呼びかけ、こう述べた。「生きている限り、希望はある」 ローとチョウは、6月に入って行われた本誌の取材に対し、たとえ国家安全維持法が成立しても、自分たちは香港を出るつもりはないと言っていた。しかし、香港にとどまり続ければ、2人は長期にわたる収監や、治安当局からの妨害行為に直面するおそれがある。 香港の中国からの独立を目指す政党、香港民族党も、30日に解散を表明した。同党はフェイスブックへの投稿で、今後は台湾とイギリスに置かれた海外支部が活動を引き継ぐと説明した。また、香港独立を掲げる団体である学生動源(スチューデント・ローカリズム)も、同様の措置をとると発表。台湾、アメリカ、オーストラリアに支部を立ち上げ、今後も活動を続ける意向を示した。 今回成立した国家安全維持法が、過去にさかのぼって適用されるのか、それとも成立後の違法行為にのみ適用されるのかは、今のところ不明だ。仮にさかのぼって適用されるのであれば、民主化運動活動家たちを一網打尽に捕らえ、2019年の民主化運動デモの際に逮捕された9000人以上にのぼる人々を起訴するために使われるおそれがある。 香港から選出されている全人代常務委員会メンバーの譚耀宗は、同法の適用対象について明言しなかったと、香港フリープレスは報じた。 「この法律が公式発表されるまで、まだ数時間あるはずだ」と、譚は記者たちに語った。「この法律の全文を読めば、誰もが知りたいことが明確になるはずだ。なぜなら、すべての犯罪行為が定義されているからだ」 成立した国家安全維持法は、国家分裂、政権転覆、外国勢力との結託を犯罪行為とみなし、刑事罰の対象とするものだ。反対派はこの法律について、香港における言論の自由や抗議活動を実質的に押しつぶすものだとして警告している。香港は、1997年までイギリスの植民地だった来歴がある。 【関連記事】「香港独立」の旗掲げた男を香港警察が逮捕 国家安全法違反で初 【関連記事】若者は資格なし? 英国民になれる香港人の条件とは ===== 香港の中国返還に際して定められた英中共同声明のもとでは、香港の資本主義や民主主義、生活様式は2047年まで維持されると決められていた。香港の現状を維持し、香港住民に中国本土の国民よりも大きな政治的自由を与えるためだ。しかし中国政府が定めた国家安全維持法は、「一国二制度」の原則を骨抜きにするものだ。 BBCの報道によると今回の法案は、北京で行われた全人代の常務委員会において満場一致で可決、7月1日に施行された。30日のうちに香港の法律に追加されるとみられる。 (翻訳:ガリレオ) 【話題の記事】 ・国家安全維持法施行された香港、返還23周年迎える 当局は治安対策 ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・世界最大の中国「三峡ダム」に決壊の脅威? 集中豪雨で大規模水害、そして... ・韓国、環境対策で包装材削減に向けた「セット販売禁止法」で大混乱 発表2日で撤回へ   ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年7月7日号(6月30日発売)は「Black Lives Matter」特集。今回の黒人差別反対運動はいつもと違う――。黒人社会の慟哭、抗議拡大の理由、警察vs黒人の暗黒史。「人権軽視大国」アメリカがついに変わるのか。特別寄稿ウェスリー・ラウリー(ピュリツァー賞受賞ジャーナリスト) ===== I hereby declare withdrawing from Demosisto...If my voice will not be heard soon, I hope that the international community will continue to speak up for Hong Kong and step up concrete efforts to defend our last bit of freedom. pic.twitter.com/BIGD5tgriF— Joshua Wong 黃之鋒 (@joshuawongcf) June 30, 2020 私、周庭は、本日をもって、政治団体デモシストから脱退致します。これは重く、しかし、もう避けることができない決定です。絶望の中にあっても、いつもお互いのことを想い、私たちはもっと強く生きなければなりません。生きてさえいれば、希望があります。周庭2020年6月30日 pic.twitter.com/zEk2NwgU24— Agnes Chow 周庭