<将来の職業について考えさせるキャリア教育は専門のカウンセラーが担当するのが世界では一般的だが、日本はその標準からまったく外れた特殊な事例> 2000年代になって、フリーターやニートなど若者の就労状況が問題化して以降、学校ではキャリア教育が重視されるようになっている。2011年には中央教育審議会が「今後のキャリア教育・職業教育の在り方について」という答申を出し、キャリア教育の概念、各学校段階での指導内容等が明確にされた。 キャリア教育とは、職業的自立に必要な能力や態度を育むことだ。将来への見通しを持たせること、社会にはどういう役割(職業)があるかを知り、その中のどれを担うかをイメージさせ、それに仕向けていくことが中心となる。 日本ではこの仕事を学校の教員が担っているが、諸外国ではキャリアガイダンスを行う専門のカウンセラーがいるようだ。OECD(経済協力開発機構)の学習到達度調査「PISA 2018」の結果報告書第2巻に、キャリアカウンセラーが雇われている、ないしは定期的に訪れる学校に通っている15歳生徒の率が出ている。欧米主要国の数値をみると、アメリカは82.3%、イギリスは80.3%、ドイツは81.9%、フランスは56.1%、スウェーデンは98.4%だ。では日本はどうか。<表1>は、調査対象の79カ国・地域を高い順に並べたものだ。 日本は4.4%で、79カ国・地域の中で最も低い。キャリアカウンセラーがいる学校に通っている生徒は22人に1人しかいない。日本の調査対象は15歳の高校1年生なので、高校の実情と見ていいだろう。 日本では「キャリアカウンセラー」という言葉は聞き慣れないが、諸外国ではこうしたスタッフが学校に常駐し、専門的な知見からガイダンスをするのが普通のようだ。逆に外国からはこう問われるだろう。「経済先進国の日本では、生徒のキャリアガイダンスを誰がしているのか?」と。 <関連記事:政府が教育にカネを出さない日本に未来はあるか> ===== 上述のように、答えは教員だ。同じ資料に、教員がキャリアガイダンスの責任を持つ学校に通っている生徒の率も出ている。この指標を、キャリアカウンセラーがいる学校の生徒の率と絡めると、驚くべき傾向が明らかになる。 日本では、ほぼ全ての学校で教員がキャリアガイダンスをしており、専門のカウンセラーがいる学校はわずかだ。右下は教員、左上は専門人材がガイダンスを行う国と読めるが、日本は前者の極地であることが分かる。 日本の経営慣行に詳しい外国の論者は、「日本人はやはりマルチタスクだ」という感想を抱くだろう。仕事の境界(範囲)が不明確で、専門性に基づく分業がない。教員は何でも丸抱えで勤務時間が世界一になるのは道理だと。 日本の教員は真面目で優秀だが、キャリアガイダンスの担い手として適任かどうかは別問題だ。本来業務の片手間にできる仕事ではなく、それなりの専門性も求められる。机上の知識・理論だけでなく、民間会社に勤めた経験もモノを言うが、日本の教員の民間企業出身者比率はほぼゼロだ。学校しか知らない人に、産業界のことを実際の経験から醸し出される「ぬくもり」をもって生徒に伝えることができるか。そんな疑問もわく。 経験に勝るものはなしということで、学習指導要領では、キャリア教育に際して現場での実習を行うことが推奨されている。だが生徒を外に送り出すだけではなく、学校内に外部の専門人材を呼び寄せることも必要になる。 年に数回の講話という形式的なものではなく、生徒とひざを突き合わせて、世の中にはどういう仕事があるか、産業界の実情はどういうものかを語り、生徒の進路選択を支援できる専門スタッフを、学校に迎え入れることはできないものか。副業(パラレルキャリア)が推奨されている今、なり手はいるはずだ。教員の過重労働緩和にもなる。 テストの点数を見て、「どの学校に行くか」を指南する進学指導はもう終わりだ。将来何になりたいか、社会とどう関わりたいかを考えさせる、キャリアガイダンスが求められるのであって、それには専門人材の力を借りることが不可欠だ。 心理相談にのるスクールカウンセラーが常駐する学校が多くなっているが、将来への手引をするキャリアカウンセラーも学校に常駐して欲しいと思う。 <資料:OECD「PISA 2018 Results WHERE ALL STUDENTS CAN SUCCEED VOLUME II」> 【話題の記事】 ・BLMの指導者「アメリカが我々の要求に応じないなら現在のシステムを焼き払う」の衝撃 ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・「ベートーベン黒人説」の真偽より大事なこと ・街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...   =====