<運営者が不透明な2大政党のサイトをはじめ、ニュースサイトの化かし合いは限度なきレベルに> 11月の米大統領選を前に、ネット上の選挙戦が激しさを増している。しかも、その選挙戦は目に見えにくい。特定の党が支援しているサイトであることを隠しつつ、その党に有利なニュースを流すニュースサイトが横行している。 これはネットの情報の信頼性を評価するニューズガード(www.newsguardtech.com)の調査で分かった(筆者はそのスタッフ)。共和・民主両党とも、込み入った手口を駆使している。コロナ禍での「反ワクチン派」の動きとともに、最新の分析を紹介しよう。 「ザ・フリー・テレグラフ」と「アメリカン・レッジャー」という2つのニュースサイトがある。1つは共和党の州知事協会(RGA)が、もう1つは民主党のスーパーPAC(寄付を制限なく受け取れる政治資金管理団体)が運営している。だが名前だけでは、どちらの党か分からない。 ザ・フリー・テレグラフには、コロナ禍への対応から中国へのスタンスに至るまで、共和党の知事たちを称賛し、民主党を攻撃する記事が並ぶ。RGAがスポンサーだということは、ページの最後までスクロールして調べれば辛うじて目に入る。だがツイッターのプロフィール欄では、RGAとの関係に触れていない。 アメリカン・レッジャーはさらに不透明だ。「アメリカン・ブリッジ(AB)」という民主党のスーパーPACが運営しているが、各ページの下部に「ABPACの資金提供により運営されています」とあるだけで、ABPACが何かという説明はない。 陰謀論からビタミンCへ 内容はザ・フリー・テレグラフとは正反対。秋の選挙で民主党候補が倒したい共和党候補について、ひたすらネガティブな情報を提供している。 コロナ禍のせいで面と向かっての選挙運動ができないなか、候補者にとってネットはこれまで以上に重要な手段だ。怪しげな「ニュースサイト」を使った活動は、今後さらに活発になりそうだ。 <関連記事:フェイスブックに対する広告ボイコットが止まらない> ===== もう1つの怪しげな傾向は、新型コロナウイルスのワクチンをめぐるニュースだ。コロナ禍が拡大し始めるとすぐに、「反ワクチン派」の主張が報じられ始めた。彼らによれば当局は市民を支配するために、有害なワクチン(まだ開発もされていないのだが)の接種を強行しようとしており、それによって製薬会社幹部の懐は潤うばかりだという。 コロナ禍が広まり始めた頃、反ワクチン派のサイトはコロナ禍が製薬会社やグローバリストの陰謀であり、不安をあおってワクチン接種を促すためのものだと書き立てた。だが3月に入り、流行が「本物」と認めざるを得なくなると、ワクチンよりも効く「治療法」を喧伝するサイトが登場した。 人気健康サイトの「ナチュラルニュース・ドットコム」ではビタミンCの点滴を勧め、同時に各種のビタミンC商品の販売を始めた。 反ワクチン派が勢いづいているのは、コロナ禍による外出禁止令は自由を制限するという議論とも関係があるようだ。反ワクチン派はそれを、「接種の義務が自由を侵す」という自分たちの主張に重なると考え、公衆衛生当局をさらに激しく攻撃している。 私たちが抱える問題はコロナ禍だけではない。ウイルスをめぐるゆがんだニュースに「感染」して反ワクチン派になった人々を、こちら側に連れ戻すことも大きな課題だ。 <本誌2020年7月7日号掲載> 【話題の記事】 ・地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される ・エイリアンはもう地球に来ているかもしれない──NASA論文 ・米国防総省の極秘調査から出てきたUFO映像 ・老化しない唯一の哺乳類、ハダカデバネズミ「発見」の意味 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年7月7日号(6月30日発売)は「Black Lives Matter」特集。今回の黒人差別反対運動はいつもと違う――。黒人社会の慟哭、抗議拡大の理由、警察vs黒人の暗黒史。「人権軽視大国」アメリカがついに変わるのか。特別寄稿ウェスリー・ラウリー(ピュリツァー賞受賞ジャーナリスト)