<ドラマや映画そして音楽といったコンテンツで世界に進出した韓国だが、それらの配信サービスにも力を入れようと動き出した......> ネットフリックスといえば、定額料金で映画やテレビ番組のコンテンツが見放題というサブスクリプション型OTT(Over The Top=ネット配信サービス)のトップを走るプラットホームだ。今年のコロナ禍による世界規模での巣ごもり生活でも、映画館に出かけられない多くの人がネットフリックスに助けられたのではないだろうか。 そのネットフリックスが4月に発表した2020年1~3月期の報告書によると、純利益は7億906万ドル にも上り、これは前同期の2.1倍で、過去最高額を更新したそうだ。 そんななか、韓国では通称「ネットフリックス法」と呼ばれる法律が誕生した。この法律ができた背景には一体何があったのだろうか? タダ乗り禁止のための補遺整備 ネットフリックスは、韓国でのサービス提供にあたって通信会社SKのブロードバンド通信網を無料で使用している。一方で韓国国内のコンテンツ事業社は、通信事業社に過度なトラフィックを誘発する場合は、インターネット網の品質を維持するために必要な費用として「網使用料」を各社負担している。 このため韓国内の代表的コンテンツ事業社であるネイバーやカカオなどは、通信事業社に毎年数百億ウォンにも及ぶ網使用料を払っているが、アメリカに本社があるネットフリックスはSKの通信網を利用しながら、この使用料を1ウォンも出しておらず、数年前から問題となってきた。 ネットフリックスの韓国内での利用者は過去3年間で12倍以上に増え、4月時点の月間利用者数は637万人という。これほどの人気を集めれば集めるほど、アクセスする人は増え、ネット上のトラフィックが増し、SKは今年に入って既に4回も設備増強に追われた。止むに止まれず、SKはネットフリックスに最小限の使用料金の支払いを求めたが、なんとネットフリックスはこれに対し支払うどころか、ソウル地方裁判所にSKを相手取り「債務不存在確認」の訴訟を起こしている。 この訴訟が起こされた翌5月に、韓国政府は「電気通信事業法」を改訂し、"コンテンツ事業社が網安全性維持に努める"という一文を、"過度なトラフィックが発生した時、コンテンツ事業社も網使用料を負担する"という表現に書き換えた。これで、今後高額な網使用料の請求がきても、SKはネットフリックスに支払いを求めることができるようになるというわけだ。これがいわゆる「ネットフリックス法」である。 ===== YouTubeプレミアム、中途解約に応じる 一方で、グローバルコンテンツ会社の中でも、Googleは韓国政府に従う意向を見せて注目を浴びている。 今年1月22日、韓国放送通信委員会は、YouTubeのプレミアム課金制度が電気通信事業法で定められた禁止行為を犯したとして、YouTubeの親会社であるGoogleに対して、8億6700万ウォンの課徴金納付と是正措置の公表、さらに業務処理手順の改善を求めていた。これは、YouTubeの有料サービス「プレミアム」の利用者に、途中解約について重要事項を告知しなかったことが理由だ。 今回も、訴訟に発展するのではないかとみられていたこの騒動だったが、先月25日Googleは、「電気通信事業法違反による是正措置移行計画書」を韓国放送通信委員会に提出した。これは事実上、Googleが韓国のルールに従うという姿勢を見せたというわけだ。 これにより、今後韓国ではYouTubeプレミアムの解約をすると、その時点で残りの期間の料金を日割りで払い戻すという世界初の対応に変更される。 この前例ができてしまうと、恐らく韓国政府は、ネットフリックスやAppleに対しても同様の対応を求めていくこととなり、コンテンツ事業社への網使用料金支払い問題(ネットフリックス法)とともに、海外からのグローバルプラットフォーマーにとって、韓国はひと筋縄ではいかないやっかいな国になる可能性があるだろう。 コンテンツだけでなくプラットフォームも世界へ 韓国がここまで素早い法改正に踏み切ったのには、次のような理由が含まれているようだ。 実は、韓国政府は、2022年までに世界で通用するグローバルなOTT会社を育成することを目標に掲げている。つまり韓国発のネットフリックスを作ろうというのだ。 それに先立って、OTT会社が国内で誕生しやすいように、「有料放送市場占有率の3分の1を超えてはならない」という規制をなくし、放送通信分野買収合併(M&A)手続きも簡素化した。これまで1年以上かかっていた引受・合併審査期間も大きな問題がなければ1年以内に完了するようになった。 さらに、これまで時間とお金を要していたセンサーシップ等級審議、いわゆるレーティング審査も、自律分類方式の自社審議となるため、OTT配信上映なら映画振興委員会による審議を通す必要がなくなり、より個性的な映画が多く誕生する見込みだ。今まで以上に規制にとらわれない多様なジャンルの韓国コンテンツが世界に発信されるようになるだろう。 ===== クリエーター育成へ1兆ウォンでファンド創設 6月22日チョン・セギュン国務総理は政府ソウル庁舎で、「第12次情報通信戦略委員会」を開いて、民間委員13名と政府委員10名の計23人と共に、この韓国版ネットフリックス会社を育てる事業などにより、国内コンテンツ市場規模を10兆ウォン(約9000億円)に拡大させることを議論し議決した。さらに「2024年までにユーチューバーのような世界な若手クリエーターを育てる1兆ウォン規模のファンドを創設する」ことも決定した。 韓国政府は2023年には、韓国のグローバルOTT市場が86兆ウォンまで成長、コンテンツ輸出額は16兆3000億ウォンまで増えるものと見ている。 通勤がリモートになり、友人との交流もZoomを通したオンラインに変わった。今までの常識がコロナ・パンデミックによって見直され、変化している。外出自粛で映画館に行けない期間中、映画ファンたちを救ったネットフリックスなどOTTサービスが支持されるのは納得だ。 韓国はこれまでもさまざまなコンテンツを、国家をあげてバックアップをしてきた。企業はもちろん、韓流ドラマや映画、そしてK-POPなども世界に展着させてきた韓国だからこそ、今回のOTTサービス計画もどこまで成功させることができるのか注目したいところだ。 【話題の記事】 ・東京都、3日の新型コロナ新規感染は124人 小池知事「休業要請は慎重に判断」 ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・新型コロナ、血液型によって重症化に差が出るとの研究報告 リスクの高い血液型は? ・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.   ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年7月7日号(6月30日発売)は「Black Lives Matter」特集。今回の黒人差別反対運動はいつもと違う――。黒人社会の慟哭、抗議拡大の理由、警察vs黒人の暗黒史。「人権軽視大国」アメリカがついに変わるのか。特別寄稿ウェスリー・ラウリー(ピュリツァー賞受賞ジャーナリスト) ===== 日本に『愛の不時着』ブーム 『愛の不時着』と主演のヒョンビン、ソン・イェジンの人気を伝える韓国芸能ニュース SBS Entertainment / YouTube