<新型コロナの感染者・死者ともに東南アジア最多となっている国が、実はその数倍の死者を出しているという......> 新型コロナウイルスによる感染拡大が一向に収まらず、右肩上がりの感染者数、感染死者数の増加が終わりのないかのように続いているインドネシアで、衝撃的な数字が報道された。 7月9日雑誌「テンポ」の電子版が「もてあそばれるデータ」と題する記事で、毎日午後3時過ぎに保健省が公表している過去24時間の新規感染者・死者と累計の感染者・死者数について「実態を反映していない」と指摘したのだ。 そして世界保健機構(WHO)の基準に従った集計方法によれば、保健省が公表している累計感染死者数は過小数字で、実際の死者数は「保健省発表の約5倍になる」という衝撃的なニュースを伝えたのだった。 同誌によると、インドネシア政府部内には保健省が統括する統計収集チームとは別に「コロナ対策本部」が設置されており、双方がまとめる数字に大きな差異が生じているというのだ。 感染症の専門家などで構成される「コロナ対策本部」は死者の数字をWHOが採用している基準に基づいて独自集計しているため統計結果の数字が異なっている、という。 保健省「陽性の感染死者のみカウント」 保健省の統計データは、その人物が死亡した時点でコロナ検査で陽性と判定されていたかどうかを判断の基準にしている。 つまり保健省は検査結果で陽性判定が出ていた感染者が死亡したケースに限って「感染死者」としてカウントするという方法をこれまで採用している。 これに対し「対策本部」はコロナウイルス感染に酷似した症状で死亡した患者、さらにコロナ感染の疑いがあるため監視下においているものの陽性判定がでる前に死亡した患者も「感染死者」として計上する方法を採用している。 これは患者の症状が重症化、悪化する前に全ての患者がコロナ検査を受ける訳ではないという状況を勘案すれば、「対策本部」の統計の方がより実数に近い「感染死者数」となることは誰の目にも明らかといえる。 こうした「対策本部」の統計数字はWHOの基準に従っているということで国際的な数字の比較検討にも使える「グローバル・スタンダードに基づく統計データ」となる。 【関連記事】 ・東京都、新型コロナ新規感染は昨日を上回り243人 2日連続200人台は初の事態 ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・科学者数百人「新型コロナは空気感染も」 WHOに対策求める ・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義. ===== 保健省は対策本部の数字認めず 「テンポ」誌によると、保健省は「対策本部」が死者数で大きく異なる独自の統計数字のデータをもっていることをこれまで公には一切認めたことがない、としている。 同誌は、7月3日現在の保健省発表の感染者60695人、死者3036人であるが、これに対して「対策本部」は同日の数字として感染者62050人と保健省公表より約1300人多い数字となっていると指摘。 そして死者数に関しては13885人として保健省のデータの約4.5倍、数では1万人以上多い数字となっているのだ。 この感染死者数は中国、日本、韓国をも抜いて東アジア、東南アジアで群を抜いた最悪の数字となる。 その衝撃は大きく、ニュースを知ったインドネシア人からは保健省、政府に対する政治不信が広がろうとしている。 保健相、大統領は直ちに姿勢を改めよ 「テンポ」は同記事の中で最後に、保健省担当者やテラワン・アグス・プトラント保健相へ「数字の危険な作為を直ちにやめて、国際的なグローバル・スタンダートに基づく正確な統計データに修正する必要がある」と主張。ジョコ・ウィドド大統領に対しても「テラワン保健相に数字のもてあそびを中止するように今すぐ指導するのがその務めである」と指摘し、指導力発揮への期待を表明している。 保健省の発表する感染に関する統計データは過小評価されている、あるいは数字が操作されているとの疑いは以前から指摘されていたが、今回の「テンポ」の報道はそうした指摘が正しかったことを確認したといえる。 統計データは地方自治体が講じている各種の感染拡大防止策の基準になるもので、今回の報道でこうした政策判断の基礎になる数字の「まやかし」が暴露されたことを受けて、今後感染防止対策の見直しが迫られることは必須とみられている。 保健省が対策本部の「国際基準のデータ」の存在を知らないはずはないことから、「いつまで政府や地方政府に都合のいい実数を下回る統計データを発表し続けて国民に真実を知らせないのか」という不満の声に今後どう対応するのか注目される。 インドネシアは7月9日現在、感染者数は70736人と7万人を超え、感染死者数は3417人。だが、これはWHOの基準とは異なるインドネシア保健省の独自基準で計測された数字に過ぎない。 [執筆者] 大塚智彦(ジャーナリスト) PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など 【関連記事】 ・東京都、新型コロナ新規感染は昨日を上回り243人 2日連続200人台は初の事態 ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・科学者数百人「新型コロナは空気感染も」 WHOに対策求める ・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.   ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年7月14日号(7月7日発売)は「香港の挽歌」特集。もう誰も共産党を止められないのか――。国家安全法制で香港は終わり? 中国の次の狙いと民主化を待つ運命は。PLUS 民主化デモ、ある過激派の告白。