<英語圏5カ国が次々と香港国家安全維持法への対抗措置を発表、中国はどこまで「内政干渉」ディフェンスを貫けるか> 中国は、「香港国家安全維持法」への抵抗措置として香港市民を自国が「避難先」として受け入れる計画を発表したオーストラリアを激しく非難した。 オーストラリアのスコット・モリソン首相は7月9日、同国内に滞在している香港市民のビザ(査証)を延長すると発表し、彼らの永住権取得にも道を開いた。帰国した際の迫害を恐れて亡命を希望する人々のための新たな特別人道ビザの創設までは行っていないが、約1万人の香港市民がビザ延長の対象になるとみられている。 モリソンはまた、カナダと同様、香港との間で結んでいた犯罪人引き渡し条約の停止を発表。香港国家安全維持法は一国二制度の「状況を根本的に変えるもの」だと述べた。 同法については香港の民主活動家たちが、香港に保障されている一定の政治的自由を奪うものだと主張。これに同調する民主主義諸国が抵抗措置を取っている。 在オーストラリア中国大使館は9日、モリソンの発表について「内政干渉だ」と非難した。中国側は、香港国家安全維持法や香港でのその他の人権侵害を批判する諸外国に対して、繰り返しこの言葉を使って反発している。 同大使館の報道官は、中国政府は「オーストラリア政府が発表した根拠のない批判と措置を強く非難し、これに反対する」と声明で述べ、さらにこう続けた。「オーストラリアは『外国による干渉』には反対だと騒ぎ立ててきた。だが彼らは、香港について無責任な発言を行うことで、中国に対してあからさまな内政干渉を行ってきた。これはまったくの偽善であり二重基準だ」 「怪我をするぞ」と警告 こう述べた上で同報道官は、オーストラリアに対して「香港問題や中国の国内問題について、いかなる口実や方法で行っている干渉も即座にやめる」よう求め、「さもなくば、自分で持ち上げた岩で自分の足を怪我することになるだろう」と警告した。 香港国家安全維持法は(香港での)広い定義での政権転覆、扇動、テロ行為と外国勢力との共謀を犯罪行為と定めている。事実上、中国共産党に対する批判や抵抗を犯罪と見なすもので、同法に違反した者は中国の法廷で裁かれて終身刑を科されるおそれもある。 イギリスが香港返還(1997年)時に中国と交わした合意文書「中英共同宣言」では、香港は少なくとも2047年までは、それまでの市場経済と生活様式を維持すると定めていた。これによって香港には、本土よりも大きな政治的自由が保障されてきた。 だが香港国家安全維持法に反対の人々は、同法が「一国二制度」として知られるようになったこの合意を骨抜きにしたと批判している。中国政府はそうした主張を一蹴し、同法は香港の安定を維持し、諸外国からの干渉を防ぐために必要だと主張している。 同法に対する世界的な対抗措置の先頭に立っているのが、英語圏5カ国(アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアとニュージーランド)で構成する機密情報共有枠組みの「ファイブアイズ」だ。 <参考記事>「香港国家安全法」に反対の立場を取ったトルドーに中国が報復誓う <参考記事>中国、世界保健総会の新型コロナ調査決議案に激怒「オーストラリアの主張はジョーク」 ===== オーストラリアのマリズ・ペイン外相は8日、香港および香港国家安全維持法の問題について、ファイブアイズの同盟諸国と電話会議を行ったとツイート。同法は「一国二制度や国際的な合意への信頼を損なうものだ」として、「我々は力を合わせて人権と自由のための取り組みを行っていく」と述べた。 アメリカは中国共産党の複数の当局者に制裁を科し、香港の貿易上の優遇措置を撤廃。イギリスは最大300万人の香港市民に対して、移住や市民権獲得の道を開く方針を発表した。カナダは香港との犯罪人引き渡し条約の停止、および軍事物資の輸出凍結を決定し、ニュージーランドは中国との関係を「見直す」と表明している。 中国政府はファイブアイズの「内政干渉」に激怒。これらの国々に派遣されている中国の大使たちは、現地政府に激しい非難や脅しの言葉を浴びせている。駐カナダ中国大使の从培武は7日、カナダ市民は中国政府がどのような報復を行うか「見ているがいい」と発言。駐英中国大使の劉暁明は、「我々はあなた方の友人になりたい。パートナーになりたい。だがもし中国を敵に回したいなら、よくない結果を招くことになるだろう」と述べた。 「中国は自国の利益を守る」 在ニュージーランド中国大使館も、現地政府に対して「香港問題や中国の国内問題に干渉するのをやめて、健全で安定した二国間関係を促進するためにもっと多くの力を注ぐべきだ」と警告した。 米中両国は、ドナルド・トランプ米大統領が就任して以降、ライバル関係にあった。だが香港の反体制派の抑圧と新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の問題が加わったことで、険悪な様相を呈している。 中国の王毅外相は9日、米中関係についてのバーチャル・フォーラムにメッセージを寄せ、アメリカは「もっと合理的かつ実利的な対中政策」を取るべきだと述べ、中国政府は対立を望んではいないが、必要とあれば自国とその利益を守る行動を取る」と発言。「中国はもうひとつのアメリカにはなれないし、なるつもりもない」と述べた。 【話題の記事】 ・国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉 ・メラニアとカナダのイケメン首相、G7で禁断の昼メロ劇場 ・カナダで「童貞テロ」を初訴追──過激化した非モテ男の「インセル」思想とは ・セックスドールに中国男性は夢中 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年7月14日号(7月7日発売)は「香港の挽歌」特集。もう誰も共産党を止められないのか――。国家安全法制で香港は終わり? 中国の次の狙いと民主化を待つ運命は。PLUS 民主化デモ、ある過激派の告白。