<新型コロナとBLM運動で危機的な格差拡大が明らかになった今、かつては考えられなかったアメリカでベーシックインカムの実験が始まった> ツイッターのジャック・ドーシー共同創業者兼CEOが300万ドルを寄付しようとしている相手、それはベーシックインカム(最低所得保障)導入を訴えるアメリカの市長たちの団体だ。 ドーシーは7月9日、「所得保証を求める市長の会(以下、市長の会)」に出資すると明らかにした。カリフォルニア州ストックトンの若き市長、マイケル・タブズ(29)が6月に立ち上げた団体だ。 「これは富と所得の格差を埋め、人種や性別による構造的な不平等をなくし、家族のために経済的安定を作り出すのがベーシックインカムだ」と、ドーシーはツイッターで述べた。 市長の会にはこれまでにニューアーク(ニュージャージー州)やアトランタ(ジョージア州)、ロサンゼルス(カリフォルニア州)、セントポール(ミネソタ州)など全米15都市が参加し、ベーシックインカム導入がもたらす恩恵について世間に訴えている。もしこれら15都市でベーシックインカムが導入されれば、700万人以上のアメリカ人の生活に影響を与えることになる。 ベーシックインカムが導入されたあかつきには、月々一定額が個人に直接、支払われることになる。市長の会のウェブサイトによれば「ひも付きでもなければ、代価として労働を求められることもない」給付だ。ロサンゼルスやシアトルなど複数の都市が導入賛成の姿勢を示している。 試験導入も始まった 一部ではすでに試験導入も始まっている。ストックトンでは昨年2月以降、125人の住民に試験的に月々500ドルが給付されており、2021年いっぱい続けられる予定だ。 ミシシッピ州ジャクソンでは、委託を受けた団体が子を持つ黒人女性に対し月に1000ドルを支給してきた。シカゴやニューアーク、アトランタといった都市では役所内にタスクフォースが作られ、ミルウォーキーでは試験導入の計画が練られている。 「人々の懐が温かくなれば家計は安定し、地域経済も活性化する」と、市長の会のウェブサイトには謳われている。 「特に新型コロナウイルスの感染拡大とそれに続く景気後退を受け、ベーシックインカムは一般の消費支出を刺激するとともに州など地方自治体に喉から手が出るほど必要な歳入を生み出し、全米規模の景気回復を促すだろう」 また、ベーシックインカムの原資については、政府系ファンド、もしくは「最も富裕な層に対する税率を20世紀を通じた平均値」にすることを通して得られるとしている。 ドーシーの寄付は、ストックトンでの家庭内暴力や住宅で問題を抱えている人々への支援プログラムで使われると伝えられる。また、それ以外の都市での試験導入に向けた調査・計画にも使われるという。 <参考記事>自殺かリンチか、差別に怒るアメリカで木に吊るされた黒人の遺体発見が相次ぐ <参考記事>Twitterのジャック・ドーシーCEOのアカウントが乗っ取られ、トランプも狙われていた ===== フォーブズによれば、ドーシーの総資産は70億ドルを超える。ドーシーは4月、共同創業者兼CEOを務める決済会社スクエアの10億ドル相当の持株を慈善基金「スタートスモール」に寄付したと発表した。 ドーシーはこの時、スタートスモールはまず世界のコロナ対策に資金を提供し、のちに若い女性の健康・教育やベーシックインカムも支援対象とするとしていた。 ドーシーはこう書いている。「なぜベーシックインカムと若い女性の健康・教育なのか? それはいずれも世界が直面している重大な問題の長期的で最良の解決法だと信じるからだ。ベーシックインカムは偉大なアイディアであり、実験が必要だ。なぜ今かと言えば、ニーズが差し迫ったものになってきていて、生きているうちにその効果を見届けたいからだ。これをきっかけに、他の人々も同じようなことを始めるといいのだが」 今月に入って、公民権運動の指導者だった故マーチン・ルーサー・キング牧師の娘であるバーニス・キングとともにある委員会に出席したタブズ市長はこう述べた。「この(ベーシックインカムの)コンセプトは実にアメリカ的だ」と。 黒人が真の力をつける機会に タブズはこう続けた。「アメリカ人はこうして繁栄と富を築き、特定の人々の集団のためにチャンスを生み出してきた。この国の歴史を見れば分かる通り、有色人種、ことに黒人の人々は歴史的に見て、政府が提供するあらゆる方策から――つまり施しではなく、真に力をつけるための支援から締め出されてきた」 ウェブサイトによれば、市長の会はキング牧師の精神に根ざすプロジェクトであり、「回復力に富んだアメリカらしいアメリカ」の建設に資することが目的だという。 (翻訳:村井裕美) 【話題の記事】 ・大丈夫かトランプ 大統領の精神状態を疑う声が噴出 ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・中国は「第三次大戦を準備している」 ・トランプ、エリザベス女王にまたマナー違反! ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年7月21日号(7月14日発売)は「台湾の力量」特集。コロナ対策で世界を驚かせ、中国の圧力に孤軍奮闘。外交・ITで存在感を増す台湾の実力と展望は? PLUS デジタル担当大臣オードリー・タンの真価。