<かつては日本から輸入したイルカたちも......> 日本でも人気の高い水族館の花形イベントと言えばイルカショーだ。しかし、韓国のある水族館で今このイルカショーにまつわる騒動が話題となっている。 問題になっている水族館は、釜山の南西に位置する巨済島(コジェド)にある「コジェ・シー・ワールド」だ。2014年7月にオープンし、「韓国最高のイルカテーマパーク」と自ら銘打っているように、イルカとシロイルカのショーやふれあいを目玉にした水族館である。 ところが、このイルカとのふれあいが波紋を呼んでいる。コジェ・シー・ワールドでは様々なプログラムを設け、イルカやシロイルカと泳いだり写真を撮ったりできる。その中の一つに一般人がイルカやシロイルカにまたがって乗れるプログラムがあるのだが、これが動物虐待ではないかと騒動になっている。このように一般人がイルカやシロイルカの上に乗ることは、体験料20万ウォン(約2万円)を払えば可能なのだという。 また、イルカショーの出し物でトレーナーが、シロイルカの背中の上に乗って軽くジャンプするように踊りながら踏みつけ水上移動している動画がSNSにアップされると更なる批判を浴びた。 毎年1頭以上のイルカが死亡 オンライン上で話題になると、早速6月18日には韓国大統領府のウェブサイトに国民からの訴えを投稿できる"国民請願"へ「絶滅の危機にあるシロイルカをサーフィンボードのように乗って遊ぶ金儲け行為。本当に大韓民国は先進国なのだろうか」というインパクトの強い文章で取り締まりを求める請願が投稿され、続いて26日には韓国の動物愛護市民団体を中心にコジェ・シー・ワールド閉館を求めるデモまで行われた。 この流れを受け、コジェ・シー・ワールドは公式ホームページトップ画面に公式説明文を公開したが、「(イルカにとって)世界基準の環境を提供している。動物虐待ではない」と閉館はもとより、プログラムの廃止も行わない立場を公表した。現在もイルカに乗れるプログラムは運営中だ。 この問題がニュースなどでも取り上げられ始めると、今度はコジェ・シー・ワールドでのイルカの死亡率の高さも発覚し大きく報道されるようになった。 コジェ・シー・ワールドでは、開館した翌年の2015年から今まで毎年1頭以上のイルカが死んでいる。開館に伴い当時コジェ・シー・ワールドは16頭を輸入したが既に9頭が死亡し、現在コジェシーワルドに残っているイルカはたった7頭だ。 動物愛護団体は、「コジェ・シー・ワールドはイルカの墓場だ」とし、「死亡率の高さは、イルカのふれあいプログラムによってストレスを受けているからだ」と訴えている。 ===== ソウルではショーに出演していたイルカを放流 コジェ・シー・ワールドがここまで問題視されるのは、韓国内でのイルカについての動きも関係している。2009年、水族館のほかに遊園地や動物園も併設している総合レジャー施設「ソウル大公園」でイルカショーに出演していたバンドウイルカの"ジェドリ"は、不法に捕獲され連れてこられたという指摘から、当時のソウル市長パク・ウォンスンの判断で2012年3月に放流決定が下された。 "ジェドリ"は、野生の生活に戻る訓練を経て、翌年2013年に済州島沖で放流された。また、同じソウル大公園で飼われていたほかのハンドウイルカ2頭も、2017年5月に済州島に移動され環境に慣れさせた後に放流されている。 その後2018年3月に韓国環境省は、「残忍な方式で捕獲された生物の輸入及び、CITES協約付属書Ⅰ、Ⅱ、Ⅲに属した生物の輸入を禁止する」という野生法改正案を発表した。これにより、現在も海外から韓国へのイルカの輸入は実質的に不可能になっている。 韓国内のイルカ、かつては日本からも 韓国の海洋環境団体Hot Pink Dolphinsによると、韓国はそれまで、「日本からのイルカ輸入国ランキング」で中国に続き3〜4位に位置していたという。これは、韓国内の輸入クジラ類全体の70%にも上る。お隣同士の国であり、移動距離も少なくて済むことから、多くのイルカたちが日本から輸入されてきたようだ。 世界の動きはどうなっているだろう。WAP(世界動物保護協会)の2019年の発表によると、世界58カ国355の施設を調べたところ、336カ所でイルカ飼育がおこなわれている。そのうち93%がイルカを使い一般人との催しを行っていて、内容は写真撮影(75%)、イルカと泳ぐ(66%)、イルカセラピー(触れ合い、23%)などだという。特にメキシコとカリブ海のリゾート地で多くおこなわれており、観光客の3人に1人はイルカ調教師体験に参加し、4人に1人がイルカに乗ったり水中で触れ合う体験をするというデータが発表された。 このようにいまだにイルカショーは多くの施設で行われているが、動物愛護をめぐり議論は強く、大手旅行予約サイトであるトリップアドバイザー、ブッキングドットコムなどは、すでにこのようなイルカを使ったツアー予約の取り扱いを中断しているという。 動物の輸出入は、今回のような水族館だけでなく全世界の動物園でもおこなわれている。元々野生の動物を檻に閉じ込めていること自体が虐待だという見方もあれば、一方で絶滅の危機にある動物の繁殖に成功している動物園もある。毎日おいしい餌をもらいけがや病気をしてもすぐ看病してもらえる生活と、自由に野生の世界を生きるのではどちらが幸せか、一概には言えないかもしれない。 しかし、今回のシーワールドの件では、偶然とは言い難い数の死亡率が公表されている。韓国の市民団体が指摘するように、これがショーや一般人とのふれあいイベントによって起こっているのなら、シーワールドは金儲けよりも命を守ることを優先させるべきである。 【話題の記事】 ・東京都、13日の新型コロナウイルス新規感染119人 累計で8000人突破 ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・やはり空気感染はあった? だとすれば対策の強化が必要 ・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.   ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年7月21日号(7月14日発売)は「台湾の力量」特集。コロナ対策で世界を驚かせ、中国の圧力に孤軍奮闘。外交・ITで存在感を増す台湾の実力と展望は? PLUS デジタル担当大臣オードリー・タンの真価。 ===== 動物とのコミュニケーション? それとも虐待? イルカショーを虐待だという海洋環境団体と国際基準に照らし合わせて問題ないという水族館側の主張は真っ向から対立している。 SUBUSU NEWS / YouTube