<BCGワクチンと新型コロナウイルス感染症の感染拡大との関係について検証する動きが世界各地に広がっている......> 「BCGワクチンの全例接種を実施している国は、そうでない国に比べて、新型コロナウイルス感染症の罹患率や死亡率が低い」との仮説のもと、BCGワクチンと新型コロナウイルス感染症の感染拡大との関係について検証する動きが世界各地に広がっている。 「BCGワクチンが新型コロナに作用するメカニズムを解明する必要がある」 対象エリアを限定したこれまでの研究では、相反する結果が示されている。1955年から1982年までBCGワクチンの全例接種を実施していたものの、それ以降は結核の有病率が高い地域からの移民のみに接種対象を限定しているイスラエルでは「定期接種を受けた世代とそうでない世代で、新型コロナウイルス感染症の発症率に差は認められなかった」との研究結果がある一方、1981年まで全例接種を実施していたスペインとそうでないイタリアを比較した米カリフォルニア大学バークレイ校の研究結果では「スペインにおける新型コロナウイルスの罹患率や死亡率はイタリアよりもやや低かった」とされている。 米バージニア工科大学のルイス・エスコバル准教授は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の協力のもと、世界各国の新型コロナウイルス感染症の死亡症例を収集し、年齢分布や人口規模、人口密度、所得、教育や医療へのアクセスなどの要素を考慮したうえで、BCGワクチンの接種と新型コロナウイルス感染症の死亡率との関係を分析した。 2020年7月9日に「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」で発表された予備調査では、「BCGワクチンは新型コロナウイルス感染症による死亡率の軽減に寄与している可能性がある」とし、「BCGワクチンが新型コロナウイルス感染症に作用するメカニズムを解明する必要があるとともに、新型コロナウイルス感染症の重症化防止へのBCGワクチンの有効性についても検証すべきだ」と説いている。 印ジャワハルラール・ネルー大学らの国際研究チームも、同様の研究結果を明らかにしている。2020年5月29日までに新型コロナウイルス感染症の陽性者が1000名以上確認されている国を対象に、「BCGワクチンの全例接種を実施したことがない国」、「かつて実施していたが中止した国」、「現在もBCGワクチンの全例接種を実施している国」の3種類に分け、新型コロナウイルス感染症の罹患率や死亡率との関連を分析した。 BCGワクチン接種の方針が異なっていた旧西ドイツと旧東ドイツ 7月8日にオープンアクセスジャーナル「セル・デス&ディジーズ」で発表された研究結果によると、現在もBCGワクチンの全例接種を実施している国は、BCGワクチンの全例接種を実施したことがない国よりも新型コロナウイルス感染症の罹患率が低く、死亡者数もこれら3分類の中で最も少なかった。 1990年のドイツ再統一以前はBCGワクチン接種の方針が異なっていた旧西ドイツと旧東ドイツで新型コロナウイルス感染症の重症化率を比較した独カール・グスタフ・カルス大学病院らの研究チームも、これらの研究成果を裏付けている。東ドイツでは1953年から1998年までBCGワクチンの全例接種が実施されていた一方、BCGワクチンが1955年から任意接種とされていた西ドイツでは、その接種率は新生児の7〜20%にとどまり、1977年にはワクチン接種が中止された。つまり、旧東ドイツの高齢者は、旧西ドイツの高齢者よりもBCGワクチンを接種している割合が高い。 6月18日に学術雑誌「レウケミア」で発表された研究結果では「ドイツ西部はドイツ東部よりも新型コロナウイルス感染症の罹患率や死亡率が高い」ことが示されている。 新型コロナウイルス感染症に対するBCGワクチンの効果を検証する臨床試験は、米国やドイツ、豪州、オランダなどで、現在すすめられている。