<ボツワナで281頭のゾウの死骸が見つかった大量死事件は未だ原因不明だが、その突発性、地域の限定性などから推測されることもある> ボツワナで数百頭のゾウが大量死した原因は、いまだに謎のままだ。中毒死の可能性もある一方で、これまで知られていなかった病原体が原因との説も浮上している。さらにはこの病原体が人間に伝染する可能性も示唆されている。 ボツワナ政府が7月12日に出した声明によると、同国北西部にあるセロンガ村周辺で、これまでに281頭のゾウの死骸が見つかったと報告している。これら「原因不明の死」については、分析用の試料を諸外国に送り、結果を待っているところだ。ジンバブエの分析結果は既に戻されているが、他国からの結果報告も待って発表を行う予定だ。 地元住民は、ゾウたちが円を描くように歩き回ったのち、顔面から地面に倒れ込んだと証言している。これは神経機能障害の兆候とも考えられ、それが新しい疾患によって引き起こされた可能性もある。 イギリスに本拠を置く自然保護団体ナショナル・パーク・レスキューのニール・マッカーンは本誌の取材に対し、検査の結果が出るまでは、大量死の原因は推測の域を出ないと述べた。現時点では、これが新しい病気だという説を裏付けるエビデンスは存在しない。「すべてが不明だ」と、マッカーンはメールで述べた。「わかっているのは、ゾウたちが運動機能に異常をきたした様子だったということだ。原因が何であれ、それは中枢神経に作用するものらしい」 死骸のサンプルを各国に 「ボツワナ政府は、複数の死骸および周囲の環境からサンプルを採取している。これらのサンプルは、分析のために国内外の複数の研究所に送付された。もし原因が単純なものであれば、既にその正体は突き止められているはずだ。まったく新しいものや複雑なもの、あるいはすぐに分解してしまうものであった場合は、これらのゾウの大量死を引き起こした原因を突き止めるのに数カ月かかる可能性もある」 大量死が新たな病気によるものだった場合、別の個体群にも広まるリスクがある。マッカーンは、ゾウには非常に長い距離を移動する習性があるため、大量死が発生した地域だけに収まらなくなる可能性を頭に置いておくべきだと指摘した。 マッカーンはさらに、ゾウを死に至らしめた原因が何であれ、これが人間に感染するリスクにも言及した。「これが毒素や毒物なら、(付近の)水もしくは土壌が汚染されている恐れが高く、人間に対するリスクは明白だ」とマッカーンは述べた。「もし原因が疾病の場合は、人間にもうつる動物由来感染症の可能性も排除できない」 動物由来感染症の怖さは、新型コロナウイルス感染症で人類は身をもって体験している最中だ。 <参考記事>【写真】ボツワナでゾウが275頭以上が原因不明の大量死 政府が調査 <参考記事>「ゾウの天国」ボツワナがゾウの狩猟を解禁 ===== イギリスに本拠を持つ非営利の研究組織ウェルカム・トラストの特別研究員で感染症を専門とするダニエル・ストライカーは、今回のゾウ大量死の原因がたとえウイルスだとしても、それが何のウイルスかを特定しない限り、人間へのリスクの有無を判断するのは不可能だと指摘する。「今回の大量死の突発性と、発生地域の限定性を考えると、毒素ではなく病原体が原因だとすれば、その病原体はおそらくゾウが今まで出会ったことがない、他の動物に由来するものとみられる」と、ストライカーは本誌へのメールで記している。 イギリスのリバプール大学で動物感染症研究部門の責任者を務めるエリック・フェブルは、動物から人間への感染について「可能性は非常に低い」と考えているが、「確認のために調査をするのは理にかなっていると思っている」と述べる。「とはいえ今回のケースでは、人間に対するリスクは低いとみられる。今のところ、これが動物由来感染症だと考える理由はない」 (翻訳:ガリレオ) 【話題の記事】 ・「鶏肉を洗わないで」米農務省が警告 その理由は? ・動物から人にうつる未知のウイルスの出現を止められない訳 ・科学者数百人「新型コロナは空気感染も」 WHOに対策求める ・中国のスーパースプレッダー、エレベーターに一度乗っただけで71人が2次感染 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年7月21日号(7月14日発売)は「台湾の力量」特集。コロナ対策で世界を驚かせ、中国の圧力に孤軍奮闘。外交・ITで存在感を増す台湾の実力と展望は? PLUS デジタル担当大臣オードリー・タンの真価。 =====