<フードファイターのようにトレーニングを通じて特殊な能力を身につけた人が10分間に食べられるホットドッグの量は、理論上、84本であることがわかった......> 米国のホットドック専門ファストフードチェーン「ネイサンズ」が主催する「ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権」は、1916年の独立記念日に4人の移民がホットドッグの早食いを競い合ったことが起源とされ、1972年以降は毎年、独立記念日に、ネイサンズの創業の地であるニューヨーク・ブルックリンのコニーアイランドで開催されている。2020年大会では、ジョーイ・チェスナット氏が10分間にホットドッグ75本を食べ、世界記録を更新して5連覇を達成した。 理論上、84本。世界記録は、いよいよその上限に近づいている スポーツ医学を専門領域とする米ハイ・ポイント大学のジェームス・スモリガ博士が2020年7月15日に英国王立協会の学術雑誌「バイオロジー・レターズ」で発表した研究論文によると、フードファイターのようにトレーニングを通じて特殊な能力やスキルを身につけた人が10分間に食べられるホットドッグの量は、理論上、84本であることがわかった。チェスナット氏の世界記録は、いよいよその上限に近づいていることになる。 スモリガ博士は、制限時間が10分と定められた1980年大会および1982年大会から2019年大会までの計39年分のデータをもとに、非線形モデルと一般化極値(GEV)分布を用いて、ヒトが1分間で活動的に食べ物を消費できる量、すなわち「ACR」を算出し、その上限が832グラムであることを示した。また、現代のフードファイターのACRは、優勝者の記録が10本程度であった1980年代初めに比べて5倍上昇していることもわかった。 フードファイターの「S字カーブ」は極端だ 一般的に、スポーツ選手の改善曲線は、最初はゆっくりと着実に上昇し、ある時点で急速に伸びて、やがて横ばいになる「S字カーブ」を描く。ホットドッグのフードファイターにおいても、同様のパターンがみられるが、そのカーブはより極端だ。 ネイサンズの有名なネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権の勝者が食べた量。黒丸は10分の競技を表し、四角は12分の競技を表す (Smoliga, Biology Letters, 2020) 大会参加者が増え、専門のトレーニング技術が取り入れられるようになったことで、フードファイターたちの消化管には驚異的な可塑性が認められた。たとえば、チェスナット氏は、2005年時点で1分間にホットドッグ267グラムしか飲み込むことができなかったが、2018年にはその量が740グラムに増えている。 大量の食料をすばやく摂取する能力を身につけるにはトレーニングが必要だが、これによって身体の機能障害を引き起こすおそれがある。スモリガ博士は、この研究論文において「一般的なスポーツ選手に比べて、フードファイターのパフォーマンスの向上率ははるかに高いが、これを達成するために体内で起こる生理的適応が消化機能障害につながる可能性がある」と指摘している。 ===== Joey Chestnut sets world record downing 75 hot dogs in Nathan's Hot Dog Eating Contest | ESPN