<イギリスでは、7月4日にパブやレストランの営業が再開となったが、英国版消費税の減税、アルコールは対象外でパブ利用も減少、英国文化のパブに陰り?> パブ再開前に浮足立つ人々 新型コロナウイルス感染症の予防策として3月からロックダウンを実施していた英国だが、7月4日にイングランドで、パブやレストランの営業が再開となった。4日は土曜日だったこともあり、「スーパーサタデー」と表現され、イングランド全体がはしゃいでいるようだった。 ツイッターでは、パブ再開を受けて英国の財務省が喜びのあまり、公式ツイッターで「パブ再開を祝って乾杯!」と投稿。「多数の死者が出ているのに不謹慎」と批判が殺到したため、同省は投稿を削除した。 ボリス・ジョンソン首相は、パブ再開に際して「羽目を外しすぎないように」と国民に注意を促し、ロンドン警視庁は市中の警官配備を強化し、「落ち着いて、常識的に」パブを楽しんでほしいと呼びかけた。 約3カ月を経ての再開を前に国民の多くが浮足立ってしまうような、英国文化の象徴とも言えるパブ文化だが、実は危機にさらされているという。 景気支援策、アルコールは対象外 まず、新型コロナウイルスで受けた打撃に対する景気支援策として、英国政府は日本の消費税に当たる付加価値税(VAT)を、接客業と娯楽産業について、現在の20%から5%に削減すると決定した。しかしアルコールがこの対象外となってしまったのだ。 この減税措置は、7月15日から来年1月12日までの半年間、ホテルなどの宿泊施設や、レストランやパブなどのサービス業の他、劇場、遊園地、動物園、映画館、展示会などの入場料にかかるVATが5%になるものだ。英ガーディアン紙によると、これにより15万もの事業が恩恵を受けるという。 さらに、8月の月~水曜日を対象に、レストランやカフェでの食事が半額割引(割引額は最大10ポンド)になる食事代補助政策、「イート・アウト・ヘルプ・アウト」も行われる。登録された外食産業で食事をした人は代金を半額にしてもらえ、事業側は政府にその分を請求できるという仕組みだ。しかしここでもまた、アルコールは対象外だ。 アルコールがことごとく景気支援策から対象外とされたことに、パブ業界は衝撃を受けている。2019年に行われた同業界の調査報告書によると、英国のパブのうち64%は、食事よりもアルコールの売り上げの方が多く、事業を支えているのはアルコールなのだ。 イングランド南西部でパブを3軒経営しているエドワード・アンダーソンさんはガーディアンに対し、現在5万ポンド(約675万円)の家賃の負債を抱えていると打ち明けた。アルコールが今回の支援策に含まれていたら、家賃を完済できたのに、と肩を落とす。パブは地域社会の一部であり、救済措置から外すなんてあり得ない、とアンダーソンさんは主張する。ガーディアンは、大手パブチェーンからも批判が上がっているとしている。 ===== さらに追い打ちをかけるのが、突然ロックダウンが始まったことにより消費されなかったビールの廃棄だ。英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)によると、パブで提供される樽に入ったビールの消費期限は、ビターは3週間、ラガーは6週間。ロックダウンの発表から実施までの期間が短かったため、ほとんどのパブで、栓を開けないまま消費期間が切れてしまった。 栓を開けずに消費できなかったビールのコストについて、FTによると、中にはハイネケンのように無料で交換するというメーカーもあるが、ギネスやカールスバーグなどはパブ側の全額負担としているという。 英公共放送BBCによると、英国の水道会社には、こうしたビールを廃棄するために、下水に流したいという申請がパブやバーから殺到している。英国の中部および南西部を管轄する水道会社セバーン・トレントは350万リットル、ロンドンを中心にした地域を管轄するテムズ・ウォーターは300万リットルをこれまでそれぞれ許可している。 イングランド南西部グロスタシャーにあるパブ「ザ・チューダー・アームズ」では1500パイント以上のビールを廃棄することになり、「胸が張り裂けるようだ」とBBCに話したという。 英国文化パブの行方は? 米経済誌フォーブスは、前述のパブの受難に加え、英国の若者の間ではパブ離れが進んでいるため、パブ文化が終わりを迎える可能性があるとしている。 英国では、大人と一緒であり、食事と一緒であれば16歳から自宅などでビールやワインが飲めるようになる。しかしフォーブスによると、16~24歳の25%は飲酒せず、親の世代がパブに愛着を抱くようにはパブを捉えていないのだという。フォーブスはさらに、英国統計局(ONS)の数値を引用し、パブの数は2001年の5万2500軒から減少しているとも指摘する。 とはいえ、ONSの最新の数値(今年1月発表)によると、パブの軒数は2019年、3万9130軒となり、前年の3万8815軒から微増した。また、パブの雇用者数も45万7000人となり、前年の45万人から増加している。ONSによると、小規模のバーとパブの軒数は15年以上減少を続けていたが、2019年に0.4%増となった。バーとパブ全体としては、前年比0.8%増となり、10年ぶりに増加に転じたという。 しかし今回の景気支援策でアルコールが除外されたことにより、せっかくのパブ軒数の微増もまた減少に転じる可能性は大いにある。 ===== Thousands of gallons of beer poured down drain ahead of pubs reopening | LBC