<AIに仕事を奪われる前に、あなたにとって代わるのは外国人かもしれない> バブル時代、公園にたむろしていた中東からの外国人を見かけて以来、コンビニの店員など日本でもすっかり身近な存在になった外国人労働者たち。だが不思議なことに、昨年の改正入管法施行まで、日本に「外国人労働者」はいなかった。 「そんなバカな」と思うかもしれない。だが法律的にはいなかったのだ。いたのは、ホワイトカラーと呼ばれるネクタイを締めて働く人たち、あるいは外国料理のコックのような技能専門職、そして外交、医療、宗教などの知識専門職だけである。 ところが、日本国内の多くの企業が求めてきたのは、いわゆる「現場労働者」。そこで、在留資格をめぐってさまざまな悲喜劇が繰り返されてきた。 浅草で行政書士事務所を経営し、おもに外国人の在留資格取得や起業支援をしている細井聡(大江戸国際行政書士事務所)は、これまで多くの外国人と関わってきた。「人をなめるのもいいかげんにしろというような外国人と出会う機会も多い」と言う細井だが、一方で「10年後、20年後、いや5年後かもしれない、『同僚は外国人』という時代がすぐそこまで来ている」とも言う。 ここでは、細井が最近上梓した『同僚は外国人。10年後、ニッポンの職場はどう変わる!?』(CCCメディアハウス)より一部を抜粋し、日本人が持つイメージとは大きく異なる、勤勉で優秀な外国人労働者たちの姿を紹介する。 ◇ ◇ ◇ たくましくしたたか、ある中国の若者の人生設計 私が時々通っていた飲み屋に、働き者で頭も愛想もよい中国人留学生のアルバイトがいた。行政書士になってから、家の近くで彼とすれ違った。スーパーの買い物袋を下げていたので、「家はこの辺だったっけ」と尋ねると、「はい、マンションを買ったので」と言う。まだ就職して1年ちょっとである。すでに同郷の女性と結婚していて、今度、子どもが生まれるという。 「よくお金があったね」と聞くと、ローンを組んだらしい。永住者でない外国人が、日本の銀行からお金を借りるのは難しい。中国人に限って言えば、中国系の金融機関が、不動産を買うなら担保があるので貸すのだろう。それにしても、マンションを買うために頭金がいる。 しばらくぶりにその店を尋ねたときに、オーナーに「彼マンション買ったんだって?」と尋ねると、「そうなんだよ。うちで働いたあとに、朝まで営業している焼き鳥屋で働いてたらしくてね、学生時代に彼女と二人で頭金を貯めたらしい。たぶん五~六百は」とあきれていた。一方で、「すごいよねぇ、俺が20代のころなんて遊びたいばっかりで、そんな先を見通してなかったよ」と感心もしていた。 <参考記事:永住者、失踪者、労働者──日本で生きる「移民」たちの実像> ===== 学生アルバイトが働けるのは、1週28時間が限界だ。雇用する側は気をつけていても、ダブルワークをされるとわからない。ダブルワークの先が一切届出をせず、源泉の納税もしていなければ、入管にはわからない。他の企業で働いていて、その結果28時間を超えた場合でも、雇っている側も不法就労助長罪になる。この罪は過失であっても問われるので、企業側としては、ダブルワークの禁止規定を使うなりして対応策をとるしかない。 彼の場合は明らかなオーバーワークなので褒められたことではないのだが、それ以上にこの中国人の若者の人生設計には驚かされた。その後、彼はダブルワークを禁止されたのだが、今度は化粧品を安く仕入れて中国へ送る副業でしっかりと稼いでいた。最近は中国の輸入関税適用が厳しくなり、化粧品も難しくなってきたので別のビジネスを考えるという。知恵も体も使って稼いでいるわけで、たくましくしたたかである。 副業をしている日本人も確かにいる。本業はそこそこで、副業で稼ぐという話も聞く。私も独立しようとしていたころは本業に集中できず、それに近かった。しかし、彼らの場合はそれとは違う。本業でも、副業でも、仕事で手を抜いているわけではない。「日本人は勤勉だ」というフレーズがむなしく聞こえる。 日本人より優秀な偽装難民の労働者たち ある自動車部品の工場を経営している会社からの相談だった。数年前に難民申請者を何人か雇った。国籍は様々である。彼らはみな、おそろしく優秀だという。どこが優秀かというと、まず英語が読める。自動車部品のオーダーは、海外からのものもたくさんある。それらのオーダーは当然英語で入ってくる。現場の製造過程に落とし込むには、英語が読める上に工程の組み方や技術の知識もなければならない。 「日本の方が技術は高いから、彼らへの訓練は必要なんですが、覚えるのが圧倒的に早いんです」すでに、工場を一つ任せてもいいと思う人材もいるという。しかし、難民申請者からの変更は、受理されても許可されることはありえない。「今はいいんだけど、いずれ審査が終わればいられなくなるんですよね。その前にどうにかならないもんでしょうか」「彼らは本当に難民なんですか」この質問には、社長さんは口を濁した。 残念ながら、一度帰国してもらうしかない。難民審査と在留資格の審査は別のものである。以前には難民申請者から別の資格への変更が認められたこともあるが、これはすぐに認められなくなった。認めてしまえば、学校へ通わず働き続けて資格を失った学生が、難民審査経由で別の資格を得られることになるからだ。(筆者注:2020年4月1日より特定技能試験の受験資格が「在留資格がある外国人」に拡大されており、難民申請者から特定技能への変更が認められる可能性がある。) とはいえ、会社側からしてみると、「日本人よりずっと優秀じゃないか、なぜ駄目なんだ」ということになる。社長の持参した彼らの履歴書を見させてもらったが、全員大卒だった。技術系の出身もいた。彼らが難民としてしか職に就けないというのももったいない話だ。 もっとも、最近は現地で日本企業の合同説明会なども開かれ、企業側もそこで積極的に採用する傾向もある。今後は正規ルートで入ってくる外国人も増えるかもしれない。彼らのような人材が特定技能をとって現場に入り、成長して「技術・人文知識・国際業務」に資格変更した上で幹部になることもあるだろう。 <参考記事:永住者、失踪者、労働者──日本で生きる「移民」たちの実像> ===== 外国人をはじめて雇用したある不動産会社の社長は、いくら求人広告を打っても日本人の応募はなかなかないと言って嘆いていた。応募があったと思っても、面接の約束を入れておきながら来ないなんていうのはざらなのだそうだ。 ある外国人が面接時間に約束通りに来て、日本語も話せるし大学院卒なので雇ってみたという。「うちの規模の不動産屋では、日本の大学院卒は来ないですよ」と言って喜んでいた。その外国人はとくに優秀というわけでもなかったようだが、彼はあっさり職を手に入れたわけである。外国人にも日本人にも、いいかげんな人間はいる。優秀なのもいるし、そうでないのもいる。 しかし、優秀でなくても、一生懸命働く人はそれなりの成功を手に入れるだろう。少なくとも、ハングリー精神の面では彼ら外国人に軍配が上がる。外国人にとって、その仕事は自分が本来いるべきポジションではないと感じているかもしれないが、日本にいるためにはなんでもやらなければ、在留資格を失う可能性がある。常に死に物狂いなのだ。 『同僚は外国人。10年後、ニッポンの職場はどう変わる!?』 細井聡著 CCCメディアハウス (※画像をクリックするとアマゾンに飛びます) 【話題の記事】 ・感染防止「総力挙げないとNYの二の舞」=東大・児玉氏 ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・東京都の新型コロナウイルス新規感染188人、4日ぶりで200人下回る 7月合計3000人突破 ・インドネシア、地元TV局スタッフが殴打・刺殺され遺体放置 謎だらけの事件にメディア騒然