<新型コロナ患者の耳と頭蓋骨の一部でウイルスが見つかった。今後は、耳から感染するリスクにも注意が必要かもしれない> 新型コロナウイルスが、患者の耳の中と頭蓋の骨の一部から発見された。 発見したのは、新型コロナ感染症で死亡した患者らを解剖した研究チーム。中耳と耳の後ろにある乳様突起という中空の骨に、新型コロナウイルスを発見した。 中耳は鼓膜の奥にある空気に満たされた空間で、連結した3つの小さな骨でつながれ、内耳に音を伝える。この発見は、米国医師会雑誌(JAMA)の耳鼻咽喉科頭頸部外科専門誌に掲載された。 研究の対象となったのは、80代の女性1人と60代の男女1人ずつ計3人の新型コロナウイルスによる死亡者だった。解剖は80代の女性の場合は死後48時間、60代の男性は死後16時間、60代女性は死後44時間の時点で行われた。 研究チームは遺体の乳様突起を取り出し、中耳からもサンプルを採取、ウイルス検査を行った。2人の患者の乳様突起または中耳が、陽性反応を示した。 この研究を共同で行ったジョンズ・ホプキンス大学医学部頭頸部外科のマシュー・スチュワート准教授は本誌に、この解剖には、1900年代初頭の器具と技術を使用しなければならなかったと語った。手動のドリルなど現在使われている手法は、空中に液滴や粒子が飛ぶため、感染の危険があるからだ。 予想外のウイルスの存在 ウイルスは耳のこの部分に感染したのか、表面に付着しただけなのかという質問に対し、スチュワートは様々な理由から、決定的な答えはわからないと語った。 しかし、体のこの部分の内側の層は肺の気道や副鼻腔の組織と同じなので、研究チームは組織が感染していたと考えている。 研究チームはきわめて少数の患者を対象とした研究で、これまで感染が知られていない体の部位からウイルスが見つかったことに驚いている、とスチュワートは言う。これは重症の新型コロナウイルスの患者の耳にはウイルスがいる可能性があることを示している。 この研究結果は、限定的なものだ。対象となった人数が少数で、新型コロナウイルスが体に与える影響を追跡することが目的であったため、この研究には対照群がない。また、解剖までの時間がかかるほど、ウイルスが組織に見つかる可能性は低くなる。 それでも、体内のこの部分にウイルスの存在が確認されたことで、耳の周辺を診察する医療従事者が感染の危険に気づく役に立つことを、スチュワートは願っている。 <参考記事>新型コロナに「脳が壊死」する合併症の可能性 <参考記事>がんを発症の4年前に発見する血液検査 ===== 彼の研究チームは現在、耳と乳様突起が新型コロナウイルスに感染したのちに回復した場合、長期的な影響があるかどうかを調べたいと考えている。 「聴覚の性格や質、平衡感覚、共鳴の感覚の変化、または耳が圧迫される感覚などが症状として残る可能性があるとわれわれは仮定している。COVID-19から回復した患者にこうした点を確認したい」と、スチュワートは言う。 バージニア大学頭頸部外科のブラッドリー・ケッサー博士は、この研究と共に発表したコメンタリーで、コロナウイルスの仲間が、人間の耳で発見されたことはあるが、新型コロナウイルスが見つかったのはこれが初めてだと指摘した。 論文と共にJAMA専門誌に掲載されたコメンタリーにはこう書かれている。「新柄コロナ感染症で死亡した患者の遺体の中耳と乳様突起から新型コロナウイルスを分離することによって、この研究は、中耳および/または乳様突起にアクセスするウイルスの能力を証明することに成功した。新型コロナウイルス感染の新たな潜在的な経路を立証し、耳の病気の患者を治療する医療従事者に注意を喚起した」 【話題の記事】 ・左耳を失った米女性兵士、前腕で育てた耳の移植手術に成功 ・銀河系には36のエイリアン文明が存在する? ・科学者数百人「新型コロナは空気感染も」 WHOに対策求める ・中国のスーパースプレッダー、エレベーターに一度乗っただけで71人が2次感染 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年8月4日号(7月28日発売)は「ルポ新宿歌舞伎町 『夜の街』のリアル」特集。コロナでやり玉に挙がるホストクラブは本当に「けしからん」存在なのか――(ルポ執筆:石戸 諭) PLUS 押谷教授独占インタビュー「全国民PCRが感染の制御に役立たない理由」