<感染した5歳未満の子どもの鼻粘膜に含まれるウイルス量は年長の子や大人にグループに比べて10~100倍だった> 新型コロナウイルスに感染している5歳未満の子どもは、年長の子どもや成人に比べ、鼻粘膜に含まれるウイルスの量が多いという研究報告が発表された。 トランプ大統領が8月からの学校再開を求めているアメリカでは現在、子どもたちをいつ、どうやって教室での対面授業に戻すべきかをめぐる議論が行われている。米国医師会報の小児科専門誌に発表された今回の報告は、幼い子どもが新型コロナウイルスに感染した場合、症状はより軽く、無症状の場合もあるものの、ウイルスを拡散させる力は年長の子どもや大人より強いことを示している。 研究は、3月23日から4月27日の間に新型コロナウイルスの検査を受けた145人を対象に行われた。いずれも症状が出始めてから1週間以内の感染者で、5歳未満の子ども46人、5~17歳の子ども51人と18~65歳の成人48人の3つのグループに分けて調べた。 その結果、より年長の子どもと成人から採取したサンプルから検出されたウイルスの遺伝物質(RNA)はほぼ同じぐらいの量だったのに対して、5歳未満の子どものサンプルからは、その約10~100倍ものRNAが検出された。 研究チームは今回の研究について、サンプルに含まれる「感染力のあるウイルス」ではなく「ウイルスの遺伝物質」に着目して行ったため、限定的なものだとしている。それでも彼らによれば、過去の複数の研究では、研究者がウイルスを培養する際には、遺伝物質をより多く含むサンプルを使った方がうまくいくことが分かっているという。 ウイルス拡散の「大きな推進力」 そう考えると、子どもは新型コロナウイルスを拡散する「大きな推進力」である可能性があると彼らは指摘する。小児の呼吸疾患を引き起こすRSウイルスの場合も、幼い子どもの方がより多くのウイルスを保有し、それを拡散する傾向が強いことが分かっている。 英バース大学で微生物病因学を研究しているアンドリュー・プレストン准教授(今回の研究には参加していない)は本誌の取材に対して、今回の研究は「興味深い」が「答えを出した以上に多くの疑問をもたらす」と述べた。 プレストンは、遺伝物質(RNA)の量は感染力を測る基準にはならないと指摘。その理由として、RNAには生きたウイルスも、死んだ(つまり不活性化した)ウイルスも、感染した細胞の破片も含まれる可能性があるからだという。 子どもは感染しても年長者に比べて体調が悪化する可能性が低いため、今回の研究対象となった子どもたちは「偏ったサンプル」だった可能性もあるとプレストンは言う。「体調が悪化した子どもは、普通の子どもより多くのウイルスを保有していた可能性が高い。サンプルが、保有するウイルス量の多いごく一部の子どもに偏る可能性が高い」 <関連記事>新型コロナウイルス、患者の耳から見つかる <関連記事>新型コロナウイルスの免疫は短期間で「消滅」 ワクチン開発ハードル上がる ===== プレストンはさらにこう続けた。「子どもがウイルスを拡散する上で大きな役割を果たすかどうかという疑問を解明するには、この年齢グループをもっと幅広く調べる必要がある。今回の研究は、新型コロナウイルスに感染して体調が悪化した子どもが、ほかの人にウイルスをうつす可能性があることは示唆しているかもしれない。だがそれと、幼い子どもが一般にウイルス拡散において大きな役割を果たすかどうかという問題は、まったく別の話だ」 同じく今回の研究には参加していない、英レディング大学のイアン・ジョーンズ教授(ウイルス学)は、本誌に対して、今回の研究結果は驚きだったと語った。5月に米国医師会報に発表された別の研究では、子どもはウイルスが体内に入る際の入り口として使う「ACE2」という受容体が少ないため、感染しにくい可能性があると示唆していたからだ。 「今回の研究では、ウイルス量が多いことが感染力の強さにつながったのかどうか検証が行われていないし、子どもたちのくしゃみの勢いや感染期間の長さなど、その他の要因がウイルスの拡散に影響するかどうかも検証されていない」と彼は語った。 「さらなる分析が必要だ。だが今回のような研究から明らかなのは、症状が軽いからといって保有するウイルス量が少ない、あるいは全くないと見なすことはできないということだ」 【注目の記事】 ・韓国、コロナショック下でなぜかレギンスが大ヒット 一方で「TPOをわきまえろ」と論争に ・世にも奇怪なKFCクロックスのコラボサンダルがバカ売れ ・中国から米国に「謎の種」が送りつけられている......当局は「植えないで」と呼びかけ ・がんを発症の4年前に発見する血液検査 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年8月4日号(7月28日発売)は「ルポ新宿歌舞伎町 『夜の街』のリアル」特集。コロナでやり玉に挙がるホストクラブは本当に「けしからん」存在なのか――(ルポ執筆:石戸 諭) PLUS 押谷教授独占インタビュー「全国民PCRが感染の制御に役立たない理由」