<CDや音楽配信のチャートやネットフリックスのランキング上位に並ぶ韓国のコンテンツ。だが、もっと世界で売れているものは──> 韓国のエンターテインメントと言えば、今やグローバルに活躍するK-POPアイドルはもちろん、『愛の不時着』『梨泰院クラス』など大ヒットしている韓流ドラマ。また今年は2月には映画『パラサイト 半地下の家族』の米国アカデミー4冠に輝き、もしもコロナウイルスのパンデミックが無ければ世界中で韓国映画の大ブームが起こったであろうと言われるほどのコンテンツ大国だ。 さて、そうするとどのジャンルが一番輸出額を稼いだのか気になるところだが、韓国の文化体育観光省と韓国コンテンツ振興院が、7月7日発表した資料「2019年下半期及び年間コンテンツ産業動向分析報告書」によると、韓国コンテンツ一番の稼ぎ頭は、K-POPや韓流ドラマではないという。 「コンテンツ産業動向分析報告書」とは、11の代表的なコンテンツ分野(ゲーム/キャラクター/知識情報/音楽/放送/コンテンツソルーション/アニメ/CM/漫画/映画/出版)の輸出入額などを分析し発表したものである。2500にも上る関係各社へ聞き取りや、122社の上場会社の実績などを調査して、年間単位で韓国のコンテンツ概要がまとめられている。 ワンソースマルチユースでコンテンツ輸出増加 2019年の韓国コンテンツ輸出額は、前年度より全体で8.1%増加し、約103億9000万ドルと好調だった。これには様々な理由があるが、その一つに、ワンソースマルチユースを韓国も本格的に取り組みだしていたが、それが成果を見せ始めたためと言われている。 ワンソースマルチユースとは、ゲームやWeb漫画、アニメなど1つのソースで多様なジャンルのコンテンツにすることを言い、これまでは日本がお得意としていたコンテンツ活用法だ。 またK-POPでは、BTS防弾少年団とBLACKPINKなど韓国アイドルグループのグローバル人気で前年比13.4%増とコンテンツ輸出額増加に貢献している。 ===== K-POPの10倍以上売り上げる1位は...... さて、そんな調査対象コンテンツ産業の中で去年1番売り上げたジャンルは、意外にも「ゲーム」だという。その輸出額は69億8183万ドルでありK-POPなどの音楽コンテンツの10倍以上、なんと輸出売上額全体の67.2%を占め、これほど数多く充実した韓国コンテンツの中でもダントツの1位であった。 これほどの売り上げをあげた大きな理由は、5Gネットワーク環境を活用した実感型コンテンツ及びクラウドゲームサービスなどの充実があげられる。韓国では昨年4月から5Gが既に導入されており、世界に向けて5Gを利用したゲームの開発もいち早く行われてきたことが功を奏したようだ。 続いて、輸出額2位は「キャラクター分野(8億2493万ドル)」だが、全体のわずか7.9%だ。これを見ても1位のゲーム業界がいかに突出して多くの輸出額を稼いだかよくわかる。 韓国発のキャラクターと言われても、あまりぴんと来ない方も多いかもしれないが、実は「ベビーシャーク」という、児童向けのサメのキャラクターと歌がYouTubeなどネットを通じアメリカや南米で大ブームとなっている。このキャラクターの商品化と歌などが売り上げをあげたようだ。 伸び率でK-POPを超えたWeb漫画 全体では10位ながらも注目したい分野と言えば、「漫画」コンテンツである。前年比13.6%も成長し、今後も期待されている。特に漫画コンテンツにはWeb漫画が含まれていて、2019年はWeb漫画のグローバル取引額が、初めて1兆ウォンを突破したという。また、韓国国内ではWeb漫画からのドラマや映画などの映像化が急増しており、今後外国からの映像化権利販売についても期待されるジャンルだ。 映画人の筆者としては気になる「映画コンテンツ」分野だが、2019年は11コンテンツ中最下位の4000万ドルの売り上げだった。今年はコロナの影響があったが、アカデミー4冠獲得し、韓国映画史上最高の世界192カ国に販売された映画『パラサイト 半地下の家族』と、世界185カ国に先行販売されたKゾンビ映画『半島』がある。来年の結果発表ではどのような結果となるかが楽しみだ。 海外輸出が好調だと、自動的に国内コンテンツ産業も潤ってくる。2019年度韓国国内コンテンツ産業売上高は前年比4.9%増加の125兆4000億ウォンだと言われている。特に、アニメーション(11.2%)、知識情報(9.1%)、音楽(8.9%)産業が高い増加率を見せた。 ===== 稼ぎ頭のゲームに陰り? しかしながら、今好調のゲームコンテンツの今後に警笛を鳴らす声もある。この「コンテンツ産業動向分析報告書」によると、ゲームコンテンツ輸出額は、2010年から2017年まで毎年平均して20%ほど成長してきた。ところが、2018年は8.1%(64億1100万ドル)にとどまっている。今回発表された2019年度では、一部回復したものの前年比15.1%の成長で、好調のように見えるが、これまでの平均と比較すると低い数字であり、その伸び率は期待ほどではなかったようだ。 その一方、ゲーム輸入額の増加スピードは速く、2017年(2億6300万ドル)から2018年(3億ドル)と、年平均増加率は16.6%を記録した。つまり、単純に金額だけでなく増減率で見れば輸入額の伸び率も相当であり、これから長い目で見れば韓国国内市場を外国製ゲームが席捲する心配がある。 韓国内では外国製ゲームがヒット 韓国でオンラインゲームと言えば「PCバン(PC방)」と呼ばれるネットカフェでずらりと並んだパソコンに向かうゲーマーたちが思い浮かぶ。PCバン専門リサーチ会社ゲームトリックによると、6月第4週週間の総合ゲーム順位1~10位には韓国のオンラインゲームが5作品ランクインしていたが、ランキング1位は通称LoLで有名な『リーグ・オブ・レジェド』だった。 なんとPCバンのゲーマー全体の47.5%の人がリーグ・オブ・レジェドをプレイしている結果だったという。このゲームはアメリカ発で現在は中国のテンセント社に買収された「ライアットゲームズ」社のものだ。10位までにランクインした韓国ゲーム5作のシェア率を足してもこの数字には追い付かない。 また、任天堂スィッチが即完売となり、韓国でも社会現象となったが、韓国ではプレイステーションやニンテンドーのようにゲーム機自体の開発がほとんどされていないことも、将来的に輸出額の向上の足かせとなるのではないかと言われている。 とはいえ、これからはジャンルを超えたワンソースマルチユース時代である。1つのジャンルがヒットすれば、おのずと他のジャンルのコンテンツにも影響が波及し輸出額が伸びる。韓国のゲームコンテンツにも注目しつつ、それによって発展する他のジャンルやカルチャーにこれからも期待したい。 ===== BTS防弾少年団のワンソース・マルチユース『BTS WORLD』 昨年リリースされたBTS防弾少年団の育成ゲーム『BTS WORLD』は、新曲をゲーム内で発表するなどして話題を呼んだ作品。 BTS WORLD Official / YouTube