新型コロナウイルスの影響で、外食業界が大きな打撃を受けている。4月7日には7都道府県を対象に緊急事態宣言が発令され、飲食店には営業時間の短縮が要請された。加えて「ステイホーム」の呼びかけでリモートワークを導入する企業が急増し、都心部の人口は激減。オフィス街周辺にあった飲食店は、完全に干上がってしまった。5月25日に緊急事態宣言は解除されたものの、人の戻りは少なく、変わらず厳しい状態が続いている。 そんな「飲食店冬の時代」に、都心で働く人たちの胃袋を満たし続けてきた立ち食いそば業界は、どう立ち向かっていくのか。2大チェーンである「江戸切りそば ゆで太郎」を運営するゆで太郎システムの池田智昭社長と、「名代富士そば」を運営するダイタンホールディングスの丹有樹社長が、コロナ下での立ち食いそばの現在と未来を語り合った。 2月27日を境に景色が変わった まずは、コロナの売上に対する影響は、いつから、そしてどれぐらいあったのか。驚くことに、明確に始まりの日があったという。 池田智昭(以下、池田):2月27日ですね。はっきり覚えています。いきなり売上が10%減ったんですよ。それがそのまま続いて、3月は前年同月の10%減、90%でした。その後、緊急事態宣言で、まったくステージが変わりましたね。4月、5月と売上は前年の65%。6月は宣言が解除されたこともあってか同80%ぐらいで、7月は直近の数字で同90.5%まで戻ってきました。 丹有樹(以下、丹):さすがに早いですね。うちは都心店が多いので影響が大きくて、3月が前年同月比80%、4月、5月は同40%ぐらいでした。7月に入っても70%をうろちょろしているような状況です。4月と5月は24時間営業を短縮したことも大きかったですね。 池田:4月はさすがに憂鬱でしたね。数字を見たとき、システムが壊れたのかと思いましたよ、「なにこれ? 合っているの?」って。毎日、売り上げを見ても勘が働かない。PL(損益計算書)もわからない。最近、ようやく読めてきましたけどね。 ===== 丹:3月、4月、5月は、数字を見ても、どうしようもないと思いましたね。全体的にこういうこと、って思って、もうそこは、僕は思考しなかったですね。考えてもしょうがないと思っていましたので。 池田:やりようがないぐらいまで、いっちゃった感じですからね。 オフィス街はいまだに厳しい 住宅地に寄って行くほど、売上回復が顕著と話す丹社長(撮影:梅谷秀司) 売り上げがガクッと落ちたという2月27日の前日、26日には国の感染症対策本部がイベントなどの実施を自粛するよう要請をしている。この日を境に、人々の行動は大きく変わった。緊急事態宣言の解除後、売り上げはやや戻りつつあるようだが、店舗のエリアによって、バラツキは大きいという。 池田:7月直近が前年同期比90.5%と言いましたが、都心部店舗は82%ぐらい。住宅地や駅前が88%ぐらいで、郊外は94%ぐらいと差があります。うちは郊外店舗を増やしてきていたので、それでなんとか助かっていますね。 丹:うちも住宅地に寄っていくほど、戻りが大きいというのは同じです。これまでいいと言われていたエリア、新宿、渋谷、新橋というところが、軒並み50%を超えられないというのが、現状ですね。 池田:都心は東京駅から品川駅までのエリア、青山あたりもぜんぜんダメですね。 丹:オフィス街はリモートワークが増えて、そのエリアにいるべき人がいないんですよ。 池田:ただ、都心でも中小企業が多いエリア、たとえば五反田とかは、リモートワークをやってるところが少ないからか、それほど売り上げは悪くはないです。それと郊外のロードサイド店。ドライバーさんは、コロナ後もそれまでと変わらず仕事をしていますから。郊外店は広いので混むわけでもないですし、みなさんひとりごはんですから、三密も避けられますし。 丹:うちの場合は、リモートワークになったことで、住んでいる方が多い中央線沿線は戻りもいいですね。会社も小さめのところが多いですし。 時間帯でいうと、夜が大きく下がりました。夜の10時過ぎ、飲んだ後の時間帯にピークがあったんですが、みんな飲まなくなって、なくなりました。夕方から夜にかけての時間帯の売上が戻っていません。後は、お昼の時間帯がピークになりきらないのが、戻りきらない大きな要因ですね。店を覗いて、人がいるようならほかの店に行ってしまう人もいるので。 ===== 池田:うちは朝の5時から11時は前年同月比でも95%は確保していました。この時間帯に来るお客様は、完全に固定客。みなさん、働いていますし、この時間帯は混むわけでもないですから。さほどの影響はなかったですね。郊外はファミリー客が離れたのか土日が鈍かったんですが、だんだんと戻ってきていますね。 リモートワークも内容が変わってくる コロナの影響が出た日ははっきりとわかった、と話す池田社長(撮影:梅谷秀司) 都心の駅前立地を中心に店舗展開をしてきた富士そば。近年、郊外のロードサイドへの出店を進めてきたゆで太郎。コロナ禍でのリモートワーク普及などで人の動きが変わり、その明暗は、はっきり分かれてしまったようだ。 丹:ただ、今後、リモートワークがフルリモートになる会社っていうのは、少ないと思うんですよ。週に1、2回は出社したり、家では仕事がしづらいから、カフェやカラオケボックスで仕事をするという人が多くなるでしょう。リモートワークのあり方みたいなのは、これからできてくると思うんです。それこそ、漫画喫茶みたいな、個室のワークスペースが増えてくるとか。 池田:私もそう思います。たとえば、千葉や埼玉の大宮あたりに、20坪ぐらいのオフィスを借りて、5人ぐらいでシェアするとか、ビジネスホテルがリモートワークパックを始めたりとか、ありそうな気がしますね。 丹:リモートでミーティングするのも、カフェでは無理ですからね。家に近いところで仕事して、終わったら家に帰る、というやり方が増えていくと思います。それもあって、今後の出店はこれまでの東京の中心部から、範囲を広げて物件を探していく形になっていくのかなと考えていますね。ただ、それでもうちは人のトラフィック重視なので、ゆで太郎さんのように郊外のロードサイドに出ていくことは考えていませんね。そうなると、今までとは違う業態になってしまうので。 池田:リモートワークで人口が都心から周辺に移ったとしても、それほど地方まではいかないでしょう。東京に通勤していたエリア、千葉、埼玉、神奈川あたりまで。道路で言えば国道16号線の内側ですね。 丹:中心の人口が少なくなって、それがだんだん周辺に広がった、というイメージですね。今では住宅地寄りの駅前物件をリサーチすることが増えましたし、そういうところで数字の合う物件を、探していくイメージです。時代背景が大きく変わったタイミングなので、これまでの方針は変えなければならないでしょう。今までのように渋谷の周りを歩いて物件を探していても、しょうがない、というか。 ※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。