<国際統計では給付型「スカラシップ」と貸与型「学生ローン」は明確に分けられているが、日本では両方とも「奨学金」と呼ぶことで誤解を生んでいる> 2019年春の大学入学者は63万人。同世代の半分が大学に行く時代だが、これだけの若者を受け入れる大学は、いわゆる入試難易度によって階層化されている。進学希望者のほぼ全員が入学できる大学全入時代に伴う諸問題は、こうした階層構造の下の方の大学に集約(凝縮)されている。 筆者は入試難易度が「中の下~下」の私大で10年間教えたが、このレベルの私大だと「ひとまず大学を出ておいたらどうか」と背中を押され、それほど勉強しなくても入れるからと、何となく入ってきた学生が大半だ。家計に余裕のない学生が多く、「学費が高い」という声をよく聞いた。 長時間のアルバイトをし、なおかつ奨学金もフルに借りて必死で学費を賄っている学生も少なくない。親には全く頼れないと、1種奨学金(月4万円)と2種奨学金のマックス(12万円)をダブルで借りている学生もいた。4年間の借入総額は768万円。今の稼ぎがどれほどかは知らないが、月に3~4万円を辛い思いをして返しているのだろう。こうした返済ができず、奨学金破産に陥る人もいる。 周知のことだが日本の奨学金は名ばかりで、実質は返済義務のあるローンだ。しかし学生の間では必ずしも周知されておらず、「奨学金って返すんですか? 全部親が手続きしたんで知りませんでした」と、真顔で驚く学生に出会ったことがある。申請書類には借金である旨が明記されているが、手続きを親任せにしてそれを目にしない学生もいるようだ。 国際統計は正直 それならば奨学金などと名乗るのは止め、正直に「学生ローン」と名乗ったらどうか。これなら安易な気持ちで利用する家庭も減る。奨学金という美名で釣って借金を負わせるなど、国のすることではない。 ちなみに国際統計は正直だ。やや古いが、2013年のOECDの教育白書に、高等教育への公的支援支出額の内訳が出ている。どの国を見ても、大学等の教育機関に直に配る助成金が多くを占める。日本の場合、全体の70.8%がそれにあたる。残りの3割が家計への支援金ということになるが、その中身をみると面白い。<表1>は主要国のデータだ。 どの国でも、教育機関へのダイレクトな助成金が多くを占める。その他というのは、教育支援を行う民間団体への助成金で、イギリスではこのカテゴリーのシェアが大きい。 水色のマークをつけた2つが、学生がいる家庭への支援ということになる。奨学金(Scholarships)と学生ローン(Student loans)だ。 <関連記事:少子化で子どもは減っているのに、クラスは相変わらず「密」な日本の学校> ===== 日本を見ると、奨学金が全体の0.7%、学生ローンが28.5%と、後者が圧倒的に多い。日本国内では「奨学金」という名称だが、国際統計でははっきりとローンと表記されている。アメリカでは、学生対象の公的支援の大半がスカラシップだ。学費が高い国だが、こういうサポートで助けられている。フランスやフィンランドは、学生への公的支援の100%がスカラシップだ。 水色を付けた、学生対象の公的支援の2カテゴリーの内訳をグラフにすると、スカラシップかローンかが明瞭になる。後者の比重が高い順に30カ国を並べると<図2>のようになる。 数の上では、スカラシップの国が多い。30カ国のうち11カ国が、青色のスカラシップ一色だ。南米のチリや韓国がちょうど半々くらいで、日本、イギリス、アイスランドの3カ国はほぼ全てがローンとなっている。 <表1>を見ると、日本は高等教育への公的支援支出のうち、学生を対象とした部分のシェアが比較的大きいのだが、そのほぼ全てがスカラシップではなくローンであることに注意しなければならない。国際標準の呼び名では、日本でいう奨学金はまぎれもなくローンだ。 上述のように「奨学金って返すんですか」と驚く学生もいるのだが、子どもが知らぬうちに勝手に手続きをしてしまう親もいそうで怖い。高校の進路指導では、申請書類の現物を見せて生徒本人に事実をしっかり伝えて欲しい。 上記は10年前のデータで、一昨年から給付型奨学金が導入されたため、最近では日本でもスカラシップの比重が増しているはずだ。しかし対象は低所得世帯に限られ、現時点では貸与型が圧倒的多数だ。両者を一緒くたにして「奨学金」と呼ぶのは止め、給付型を「スカラシップ」、貸与型を「ローン」と呼び分けるべきだ。 日本学生支援機構にすれば、自分たちのことを金貸しみたいに思われたくないので、及び腰になるのかもしれない。もしそうなら、本当のスカラシップの枠を増やすことだ。若者が道を踏み外すのを防ぐためにも、正直に言って欲しいと思う。 <資料:OECD「Education at a Glance 2013」> <関連記事:少子化で子どもは減っているのに、クラスは相変わらず「密」な日本の学校> 【話題の記事】 ・【独占】押谷仁教授が語る、PCR検査の有用性とリスクとの向き合い方 ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・ロシア国立研究所、コロナワクチンの臨床試験が終了 10月から接種開始へ ・韓国、コロナショック下でなぜかレギンスが大ヒット 一方で「TPOをわきまえろ」と論争に   =====