<核保有国も非保有国も、それぞれの立場から原爆の犠牲を悼み、アメリカの核政策を恨み、核廃絶を訴えた> 広島と長崎に原爆が投下されて75年、アメリカの外交政策に批判的な複数の国が、世界に核戦争を持ち込んだアメリカを強く非難した。 ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、広島に原爆が投下された8月6日、平和記念式典の参列者に向けてメッセージを発表。「罪のない民間人の痛ましい死は、今も地球上の多くの人の心に残っている」と述べた。第2次大戦の終盤に投下された原爆により、広島では15万人が死亡。広島の3日後に原爆が投下された長崎では、約7万5000人が死亡したとされる。 「(原爆投下の)背景に第2次世界大戦があったとしても、いったい何が、計画の首謀者たちをあのような無慈悲な行動に導いたのか。それを完全に理解することは難しい」とラブロフは語った。 さらにラブロフは、原爆投下は「戦争を終わらせるために必要だった」というアメリカの従来の主張を否定。ソビエト軍の部隊が東アジアを進軍し、日本に侵攻する構えをみせたことで第2次大戦は終結に近づいていたことは周知の事実だったと主張した。ラブロフは「原爆投下は武力の誇示であり、民間人に対する核兵器の軍事実験だった」と批判し、さらに「アメリカはこのような大量破壊兵器を使用した最初の、そして唯一の国だ」と強調した。もっとも、現在、世界で最も多くの核兵器を保有していると考えられているのはロシアだが。 アメリカの核合意離脱で対立激化のイランも 核兵器の保有が確認されていない、ほかの複数の国も声を上げた。 イランのジャバド・ザリフ外相は、ラブロフと同様のメッセージをツイッターに投稿。「75年前の今日、アメリカは世界で初めての、しかも唯一の核兵器使用という恥ずべき行いをした。しかも相手は罪のない人々だった」と述べ、さらに「こんにち、アメリカとイスラエルの核が我々の地域を脅かしている。核の悪夢と相互確証破壊(MAD)による核抑止という理屈を否定する取り組みは、もっとずっと前に終わらせるべきだった」と批判した。 アメリカは、イランが秘密裏に核兵器の開発を進めていると非難し、2018年には、イランが核開発計画を大幅に縮小することを条件に制裁を緩和することを決めた「イラン核合意」から一方的に離脱した。ドナルド・トランプ米政権が始めた「最大限の圧力」政策にイランが抵抗するかたちで、両国の緊張は高まっている。 イラン同様に、制裁と政治的孤立を狙う「最大限の圧力」政策の標的となっているのがベネズエラだ。アメリカと同盟諸国は、独裁者ニコラス・マドゥロをもはや同国の正式な大統領と認めていない。そのベネズエラのホルヘ・アレアサ外相も、広島への原爆投下から75年の日に合わせて声明を出し、原爆投下は「犯罪行為でありジェノサイド(集団虐殺)だった」と批判した。 <参考記事>30歳、福島出身──第三者が広島で被爆体験を語る意義 <参考記事>オバマ広島訪問をアメリカはどう受け止めたか ===== アレアサは「ベネズエラから、日本の皆様に連帯の意を表明する」と述べ、「アメリカが敢えて民間人に対して核兵器を使用した唯一の国であることは、驚きではない」と続けた。 ベネズエラ同様に左派政権が率いる南米の国で、長年アメリカによる経済制裁の対象にされているキューバも声を上げた。キューバのブルーノ・ロドリゲス外相もまた、原爆投下を「犯罪行為」と称し、現在およそ「1万3400の核兵器が存在し、このうち1800発が発射態勢にあることは、私たちにその危険を再認識させる」と強調。「透明性のある、完全かつ不可逆的な核の廃絶のみが、人類の安全を保障する」とつけ加えた。 アイルランド、南アフリカ、スイスやバチカン市国などほかにも多くの国が、アメリカによる原爆投下を、あからさまに批判こそしなかったものの、広島と長崎が受けた被害と犠牲者の死を嘆き、核兵器の廃絶を訴えた。 ドイツのハイコ・マース外相と国連のアントニオ・グテーレス事務総長もそれぞれ声明を発表。アメリカが中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄し、新戦略兵器削減条約(新START)の期限延長に難色を示して核拡散防止に逆行する中、核廃絶への強い取り組みを呼びかけた。 <参考記事>30歳、福島出身──第三者が広島で被爆体験を語る意義 <参考記事>オバマ広島訪問をアメリカはどう受け止めたか 【話題の記事】 ・ロシアが北朝鮮の核を恐れない理由 ・ハチに舌を刺された男性、自分の舌で窒息死 ・老化しない唯一の哺乳類、ハダカデバネズミ「発見」の意味 ・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず ※画像をクリックすると楽天ブックスに飛びます2020年8月11日/18日号(8月4日発売)は「人生を変えた55冊」特集。「自粛」の夏休みは読書のチャンス。SFから古典、ビジネス書まで、11人が価値観を揺さぶられた5冊を紹介する。加藤シゲアキ/劉慈欣/ROLAND/エディー・ジョーンズ/壇蜜/ウスビ・サコ/中満泉ほか