<リモートワークの時代になっても、話す力・伝える力は変わらず重要。一本調子で退屈、「時間になりましたので」で終わるような残念なプレゼンにしないために知っておくべきこととは?> コロナ禍で図らずも働き方が強制改革されてしまった。あらゆることが「リモート」になり、オンラインでの会議やセミナーも、あっという間に日常の光景になった。 それと同時に、これまで身につけてきた話し方・伝え方についても見直しが迫られている。特に人前で話すことで活躍してきた人にとっては、いかにオンラインで人を引きつけられるか、印象に残る伝え方ができるかが、これからの時代を生き抜くために必要なスキルとなる。 大統領も頼りにする「スピーカーズ・コーチ」 「話す力」によって多くの人を魅了する存在と言えば、大統領などの政治家や、企業のエグゼクティブが挙げられる。多くの場合、彼らは話し方専門のコーチをつけている。それほどまでに、話し方は重要ということだ。時には、話す内容より重視されることもある。 そんな話し方専門のコーチ、それも世界トップクラスのコーチであるグラハム・ショーのノウハウが、彼の著書『スピーカーズ・コーチ 誰でも伝え方がうまくなる60の秘訣』(斉藤裕一・訳、CCCメディアハウス)には詰まっている。当然、リアルの場だけでなく、オンラインの画面上でも活用できるスキルだ。 著者のショーは「スピーカーズ・コーチ」として世界中のエグゼクティブやTEDスピーカーを指導してきた人物で、国際会議のプレゼンターやトレーナーとしても活躍。2015年には自身もTEDスピーカーとなり、その動画は3200万回以上も再生されている。 そんな著者が20年にわたって蓄積してきたテクニックを短時間で身につけることができるようにと、本書は「準備」「練習」「実行」の 3段階で構成されている。60の秘訣それぞれに「重要である理由」や「するべきこと」「あなたの課題」が設けられた、実践的な指南書だ。 特にオンラインでは聞く側を飽きさせない一層の工夫が必要 まずは、第 1段階の「準備」。人前で話す準備段階として、何を、どのように準備すればいいかについて豊富なアドバイスが伝授される。著者によれば「見事な話は、驚くほどレベルの高い準備の結果である」。つまり、しっかり準備すればするほど、本番の成功率が高まるということだ。 例えば、出だしから変化のない一本調子のプレゼンは、退屈して関心を失いやすい。特にオンラインでは気が散りやすいため、聞く側を飽きさせない一層の工夫が必要だ。そこで、「リズムに変化をつける」ことで関心を引きつけ続ける。 【関連記事】プレゼンでスティーブ・ジョブズから学ぶべきでない3つのこと ===== そのために著者は、複数の感覚に訴えることを勧めている。写真やグラフを見せたり、物語や音楽などを聞かせたり、何かを書いてもらったり。ただ「話を聞く」だけにならないように、聴衆側にも変化を持たせるのだ。 また、プレゼンの冒頭は記憶に残りやすく、関心を呼ぶだけでなく、勢いに乗って本題に入っていきやすい。つまり、プレゼンも「つかみ」が重要ということだ。そこで、最初の30秒で聴衆の関心を引きつけるために「小道具を使う」などの具体的手法も紹介されている。 他にも、「相手にとっての起点から始める」「現状と改善後の状況を示す」「行動への動機付けを与える」といった構成上のヒントに加えて、「スライドがプレゼンなのではない」「『記憶に残るスライド』の5原則」といったアドバイスもある。準備段階でやるべきことは多い。 「時間になりましたので」で終わるのはもったいない あのスティーブ・ジョブズも、アップルの主要な製品を発表する際には必ず、何時間も入念なリハーサルをしていたという。第2段階の「練習」でいかに細かく練り上げられるかが、本番で大きな差を生むのだ。 人前で話すときには、なるべくあがらないようにしたいと思うものだが、著者は「落ち着き払う必要はない」と述べる。落ち着いた状態は確かに望ましいが、いくらか緊張することもプラスに働くからだ。それに、リラックスし過ぎると慢心につながる恐れもある。 また、完璧なパフォーマンスをイメージして試合に臨むアスリートのように、頭の中でリハーサルして成功を視覚化することも、成功の可能性が高まるそうだ。 だがもちろん、実際のリハーサルこそが成否のカギを握る。話の達人たちは2種類のリハーサルをしているという。ひとつは「作り出すリハーサル」で、もうひとつは「磨き上げるリハーサル」。2つのリハーサルで十分に練習を行うことで、熟練のパフォーマンスが可能になる。 十分な準備と入念な練習をすれば、自信を持って本番に臨める。いよいよ「実行」の時だ。ここでは、「聞きやすい声」にする具体的な秘訣のほか、相手を名前で呼んで話してかけることのメリット、質疑応答の時間を建設的にする方法などが紹介されている。 そして最後は、静かに終わるのではなく、力強く締めくくることが大切だと著者は言う。「つかみ」と同様に、「締め」もまた重要なのだ。「時間になりましたので」と言って終わってしまうのは非常にもったいない。終わり方に知恵を絞ることで、聞く側の動機づけにもなる。 【関連記事】奇抜な名前の高級食パン店を大ヒットさせたプロデューサー、そのノウハウを明かす ===== 話し方というのは、得手不得手があるものではない 見事なトークやスピーチ、プレゼンテーションをする人たちは、軽々とそれをやってのけているように見える。しかし著者に言わせれば、それは入念な準備と練習の賜物。そもそも、話し方というのは得手不得手があるものではなく、学ぶことで上達できるものだからだ。 同じアイデアでも、伝え方ひとつで相手への伝わり方は全く異なる。人前で話すスキルを高めれば、他の人の考え方を変えることができ、また、人との交わりにおいてプラスの影響力を及ぼすこともできる。 あなたのトークやスピーチ、プレゼンが思いもよらない効果につながることもある。あなたの一つのトークが、周りの人たちに変革をもたらす結果につながるかもしれない。そして、あなた自身にも変化が生まれる可能性がある。(5ページ) 伝え方に自信を持てれば、自分自身だけでなく、周囲にもメリットを与えられるのだ。人との直接の接触が難しい今こそ、話し方・伝え方によって人を引きつけるスキルがますます求められているのかもしれない。 『スピーカーズ・コーチ 誰でも伝え方がうまくなる60の秘訣』 グラハム・ショー 著 斉藤裕一 訳 CCCメディアハウス (※画像をクリックするとアマゾンに飛びます) 【話題の記事】 ・年収2000万円超から除染作業員へ、この下級国民の話は「すべて真実」 ・外出自粛で免疫力が落ちる!? 元祖・部屋トレ「囚人トレーニング」の健康効果 ※画像をクリックすると楽天ブックスに飛びます2020年8月11日/18日号(8月4日発売)は「人生を変えた55冊」特集。「自粛」の夏休みは読書のチャンス。SFから古典、ビジネス書まで、11人が価値観を揺さぶられた5冊を紹介する。加藤シゲアキ/劉慈欣/ROLAND/エディー・ジョーンズ/壇蜜/ウスビ・サコ/中満泉ほか ===== 3200万回以上再生されたグラハム・ショーのTEDスピーチ TEDx Talks-YouTube